とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

腎機能低下患者に対する薬物投与で気をつけるべき薬剤まとめ

はじめに

多くの薬剤はその副作用に腎機能低下の記載があり、さらには腎機能低下患者に対してはその投与量も調整しなければならない薬剤が数多く存在する。今回はそのような薬剤のうち代表的なものをまとめて、解説していく。

1 鎮痛薬

NSAIDs

COXを阻害することによってPG合成を抑制することで解熱鎮痛作用を有するが、PGの抑制は糸球体の輸入細動脈の収縮を起こし、糸球体血流量の低下へとつながる。よって腎前世急性腎不全を引き起こすほか、尿細管壊死の原因となったり、アレルギーによって急性間質性腎炎を起こす場合もある。したがって脱水、腎機能低下、RAA系阻害薬投与中には腎機能障害を起こすリスクが高くなるため慎重に投与する必要がある。

ちなみにCOX2阻害薬は消化器系への障害は少なくなることが示されているが腎障害は依然としてある。

2 抗菌薬

わずかな例外を除いてほぼ全て腎排泄性であるため腎機能低下患者では抗菌薬の減量が必要となる。

ただし初回投与量は減量しない。一般的に薬剤を半服投与した場合には半減期4〜5倍の時間で定常状態となる。よって初回投与量は通常量を投与し、定常量に早く血中濃度を上げることが大切である。またアミノグリコシド系、バンコマイシン、テイコプラニン、ボリコナゾールなどは治療域が狭いため薬物血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring)を行い血中濃度を維持する必要がある。

また抗ウイルス薬(アシクロビルなど)は糸球体で濾過され遠位尿細管や集合管で高濃度に濃縮されることによって結晶が析出し腎後性急性腎障害を呈することがあるため注意が必要である。また薬剤性てんかん意識障害の原因となるため抗ウイルス薬治療中の患者の意識障害には鑑別が必要。

腎機能低下において用量調整が必要ない抗菌薬

セフェム系 スルバクタム・セフォペラゾン、セフトリアキソン
マクロライド アジスロマイシン
クリンダマイシン系 クリンダマイシン、リンコマイシン
ニューキノロン モキシフロキサシン
グリシルサイクリン系 チゲサイクリン
クロラムフェニコール系 クロラムフェニコール
アミノグリコシド カナマイシン
結核 イソニアジド、エチオナミ、デラマニド、リファンピシン
抗真菌薬 イトラコナゾール、カスポファンギン、ボリコナゾール、ミカファンギン

3 血糖降下薬

・ビグアナイド(メトグルコなど)

腎排泄90〜100%なので腎機能低下eGFR45~60付近で禁忌。乳酸アシドーシスのリスクがあり、ヨード造影剤を用いた検査を行うには48時間前から休薬する。

・スルホニル尿素オイグルコン、ダオニール、アマリール、グリミクトンなど)

腎排泄率の高い活性代謝物の蓄積により慢性腎臓病患者における低血糖をひきおこす可能性がある。この薬はeGFR<30の慢性腎臓病患者には低血糖リスクが高く避けるべきである。

・DPP―4阻害薬(テネリア、トラゼンタ、スイニー、ネシーナ、マリゼブ、オングリザ、ジャヌビア、グラクティブ、エクア、ザファテック)

腎機能低下患者でも多くの場合用量調整で使用可能であるが、ザファテックはCCr<30で禁忌となる。テネリア、トラゼンタは用量調整が不要である。

インスリン

腎近位尿細管で代謝されるため腎機能低下患者ではインスリンの作用が持続する場合がある。長時間作用型は作用が遷延する場合があり注意を要する。ただし急性期や慢性期腎機能障害患者ではインスリン強化療法などが行われる場合もありインスリンの反応性を見て調整が必要である。

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CKDステージ別経口血糖降下薬の適応

4 抗凝固薬

・ワルファリン

重篤な腎機能低下がある場合は出血リスクが高く使用は慎重にする必要があるが現在発売されているDOACはCCr<15であれば全て禁忌となるため、このような場合には出血リスクを十分に説明し慎重に用量調整をし、PT―INRを測定する必要がある。末期腎不全ではCYP2C9阻害のNSAIDsの併用はワルファリンの血中濃度を上昇させ出血のリスクを高める。

・トロンビン阻害薬(ダビカトラン:プラザキサ)

ダビカトランの尿中排泄率は85%と高く腎機能に応じた調整が必要である。Ccr<30では禁忌となる。

Ccr30〜50、特定の併存薬剤(ベラパミルなど)、70歳異常、消化管出血の既往のいずれかの条件がある場合には110mg/回、1日2回を考慮する。またこれらの条件が2つ以上あれば禁忌と考えるべきである。

・Xa阻害薬(エリキュース、イグザレルト、リクシアナ)

各薬剤で減量基準は微妙に異なるが全てeGFR<15では禁忌となる。

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抗凝固薬の特徴まとめ

腎機能障害の原因となる薬剤

薬剤投与により新規の腎機能低下と腎機能悪化を認める腎障害を薬剤性腎障害(drug-induced kidney injury:DKI)と呼ぶ。発症機序は①中毒性腎障害(腎毒性薬剤による用量依存的に発症する腎障害)②アレルギー機序・免疫学的機序(あらゆる薬剤でなるが抗菌薬、H2受容体拮抗薬、PPI、NSAIDsで多く用量依存的)③電解質異常・腎血流低下④結晶形成による尿路閉塞性腎障害がある。薬剤性腎障害をきたす薬剤を以下にまとめた。

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腎障害をきたしがちな薬剤一覧表

風邪診療 咽頭痛症状がメインの場合

はじめに

咽頭痛をきたす疾患は非常に多い。アメリカでは年間2100万人が咽頭痛で受診しそのうち1200万人は急性咽頭炎の診断となっている。咽頭痛は重篤な疾患の症状ともなる場合があり、killer sore throat(死の危険性のある咽頭痛)は見逃してはいけない。

本当に咽頭痛なのか?

嚥下時の痛みがあるのか。わからなければその場で唾を飲んでもらう。

逆に喉が痛いのに嚥下耳痛がない場合は心筋梗塞や大動脈解離などが鑑別にあがるため要注意である。

咽頭炎をきたす疾患

感染症:ウイルス性咽頭炎、インフルエンザ、伝染性単核球症(EBV,CMV,HIV,二期梅毒)、溶連菌感染性細菌性咽頭炎、非溶連菌性咽頭炎(淋菌、クラミジアニューモニア、マイコプラズマなど)、深頸部感染症喉頭蓋炎、ヘルパンギーナ、梅毒、Lemierre症候群、Ludwigアンギナ

炎症性疾患:GERD、後鼻漏を伴うアレルギー性鼻炎、慢性的な口呼吸、異物、筋緊張性発声障害、声帯肉芽種、粘膜炎、肉芽種性疾患(リウマチ、痛風)、天疱瘡

悪性腫瘍:扁平上皮癌、悪性リンパ腫、肉腫、腺癌

嚥下時痛の病歴が取れなくても「咳をして痛い」という病歴が取れれば多くは気管支炎もしくは肺炎、喘息などといった咳が強く出やすい疾患を鑑別に上げるべきである。

やっぱり咽頭炎と判断すれば

咽頭炎の原因として上に羅列したような疾患が挙げられるが、最もあるのは感染症でそのほとんどがウイルス性であり、細菌性でも基本的には自然治癒する。

唯一治療適応のあるA群溶連菌性咽頭炎には成人では10%未満とされているがその線引きはクリアカットにはできないのが現実である。そこでCentorスコアなるものがある

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Centor score

・4点以上なら全てに抗菌薬治療

・1点以下ならストレップ(A群溶連菌迅速診断検査)を

せずに抗菌薬治療なし。

・2点〜3点ならストレップをして+なら抗菌薬治療

Centor scoreのジレンマ

・前頸部リンパ節は明瞭に触れることが少なく、

圧痛として認められる程度であることが多く、これを陽性ととるか

・38度を超える発熱をきたす前の早期受診も多い。

・白苔を認めるケースは半数に満たない。時間経過で出てくること

もある。

抗菌薬処方例

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そのほかのA群溶連菌らしさ

咽頭痛の割に鼻水がない

・左右の喉の片方が特に痛い

咽頭痛で受診される患者で見逃してはいけない疾患5つ

Five killer sore throats

・急性喉頭蓋炎

扁桃周囲膿瘍

・咽後膿瘍

・Ludwigアンギナ

・Lemierre症候群

それぞれの診断のコツをまとめる

扁桃周囲膿瘍

扁桃周囲膿瘍は片側の激しい頭痛で患者さんは「食事も取れない」といって受診することが多い。そして一番の決め手は開口障害があるかどうか。開口障害はlateral pharyngeal space(傍咽頭間隙)への炎症の波及を意味し、今後咽頭間隙へ波及した場合、その先に縦隔方向へのスペースがあるため一気に縦隔炎へ進行し重篤な疾患となります。口蓋垂の偏位も有名ではあるがそこまで来ている症例は少なく、前口蓋弓の前方への突出が重要である。それがあれば咽喉頭造影CT施行!

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・急性喉頭蓋炎

→急性喉頭蓋炎では「見た目がとてもsickで横になると苦しいため横になれず、気道がもっとも広くなるsniffing positionをとったり唾も飲めずによだれを垂らす」とされるがここまで症状が出そろわずとも受診する患者もいる。咽頭痛や嚥下時痛みの訴えがしっかりある割に見た目の咽頭所見が軽い場合は急性喉頭蓋炎を疑うことが大切。

伝染性単核球症

伝染性単核球症は外来でよく出会う疾患である。臨床像としては発熱、全身倦怠感、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹(特に後頸部など全身性リンパ節腫脹)、肝脾腫などがある。

特徴としては

・毛布のような白苔が返答に付着している

・通常のウイルス性咽頭炎と思ったが、後頸部リンパ節もちょっと触れる

・身体所見で脾腫を認める咽頭炎

・3日以上たっても軽快しない場合。

・抗菌薬フルコース投与でも改善しないと紹介になった患者。

ペニシリン投与で全身にびまん性紅斑をきたした場合(18〜30%)

伝染性単核球症の血清学的診断のコツ

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喉の痛みの対応位フローチャート

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マイコプラズマ肺炎についてまとめてみた

はじめに

 マイコプラズマ肺炎は咳もしくは発熱を主訴とすることが多い疾患で非定型肺炎に分類される。マイコプラズマ肺炎は通常通年性にみられ、普遍的な疾患である。欧米において行われた罹患率調査のデータからは、報告によって差はあるものの、一般に年間で感受性人口の5~10%が罹患すると報告されている。本邦での感染症発生動向調査からは、晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心である。病原体分離例でみると7~8歳にピークがある。

病原体

 病原体は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )であるが、これは自己増殖可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類される。他の細菌と異なり細胞壁を持たないので、多形態性を示し、ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がない。臨床検査で培養を行うことは現実的ではない。感染様式は感染患者からの飛沫感染接触感染による。地域での感染拡大の速度は遅い。感染の拡大は通常閉鎖集団などではみられるが、学校などでの短時間での暴露による感染拡大の可能性は高くなく、友人間での濃厚接触によるものが重要とされている。病原体は侵入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、上気道、あるいは気管、気管支、細気管支、肺胞などの下気道の粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮の破壊が顕著で、粘膜の剥離、潰瘍を形成する。気道粘液への病原体の排出は初発症状発現前2~8日でみられるとされ、臨床症状発現時にピークとなり、高いレベルが約1 週間続いたあと、4~6週間以上排出が続く。

 感染により特異抗体が産生されるが、生涯続くものではなく徐々に減衰していくが、その期間は様々であり、再感染もよく見られる。

臨床症状

 潜伏期は通常2~3週間で、初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は乾性の咳であるが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3~4週間)。特に年長児や青年では、後期には湿性の咳となることが多い。鼻炎症状は本疾患では典型的ではないが、幼児ではより頻繁に見られる。嗄声、耳痛、咽頭痛、消化器症状、そして胸痛は約25%で見られ、また、皮疹は報告により差があるが6~17%である。喘息様気管支炎を呈することは比較的多く、急性期には40%で喘鳴が認められ、また、3年後に肺機能を評価したところ、対照に比して有意に低下していたという報告もある。昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴であるとされてきたが、重症肺炎となることもあり、胸水貯留は珍しいものではない。

 他に合併症としては、中耳炎、無菌性髄膜炎脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群スティーブンス・ジョンソン症候群など多彩なものが含まれる。

 理学的所見では聴診上乾性ラ音が多い。まれに、胸部レ線上異常陰影があっても聴診上異常を認めない症例があり、胸部レ線検査が欠かせない。胸部レ線所見ではびまん性のスリガラス様間質性陰影が特徴とされてきたが、実際には多いものではなく、むしろウイルス性、真菌性、クラミジア性のものに多いと報告されている。マイコプラズマ肺炎確定例では、大葉性肺炎像、肺胞性陰影、間質性陰影、これらの混在など、多様なパターンをとることが知られている。血液検査所見では白血球数は正常もしくは増加し、赤沈は亢進、CRP は中等度以上の陽性を示し、AST 、ALT の上昇を一過性にみとめることも多い。寒冷凝集反応は本疾患のほとんどで陽性に出るが、特異的なものではない。しかしながら、これが高ければマイコプラズマによる可能性が高いとされる。

病原診断 

 確定診断には、患者の咽頭拭い液、喀痰よりマイコプラズマを分離することであるが、適切な培地と経験があれば難しいことではない。しかしながら早くても1 週間程度かかるため、通常の診断としては有用ではない。近年迅速診断としてPCR 法が開発されており、臨床的に有用性が高いが、実施可能な施設は限られている。

 臨床の現場では血清診断でなされることが多い。補体結合反応(CF)、間接赤血球凝集反応(IHA)にて、ペア血清で4倍以上の上昇を確認する。単一血清で診断するには、それぞれ64倍以上、320倍以上の抗体価が必要である。近年、粒子凝集法(PA)、蛍光抗体法(IF)あるいは酵素抗体法(ELISA)によるIgM、IgG抗体の検出も可能となっている。

治療・予防

 抗菌薬による化学療法が基本であるが、ペニシリン系やセフェム系などのβ‐ ラクタム剤は効果がなく、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤が用いられる。一般的には、マクロライド系のエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどを第一選択とするが、学童期以降ではテトラサイクリン系のミノサイクリンも使用される。

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抗凝固薬の使い分けについて学ぶ

ポイント

・抗凝固薬の適応疾患

・心房細動に対する使い分け

・中等度以上のMSや人工弁置換術後の抗凝固薬はワルファリンを

はじめに

 抗凝固薬の適応疾患は大きく分けると心房細動の血栓塞栓症の一次または二次予防、血栓塞栓症(DVT、PE)の一次予防、治療または2次予防、人工弁置換術後の血栓塞栓症の一次予防などがある。

そもそも抗凝固薬と言えば、大きく分けて2種類

・DOAC(Direct oral anticoagiulants)

・ワルファリン:凝固因子のうちⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹの凝固因子の阻害。

DOACは現在使用されているものとしてはダビカトラン(プラザキサ)、リバーキサロン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)の4つ。ダビカトランだけはトロンビン(第Ⅱ因子)の阻害であるがそのほかは第Ⅹa因子阻害である。

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抗凝固薬のエビデンス

・ワルファリンは脳梗塞を3分の1に減らし死亡率を4分の1に減らす。

・DOACは心房細動の塞栓予防としても塞栓症の治療としてもワルファリンと比較して同等あるいは優位、出血の副作用としては全般的には同等あるいはそれ以下と言われている。

日本のガイドラインでは僧帽弁狭窄症や人工弁においてはワルファリンを、非弁膜症性心房細動においては血栓リスクに応じてワルファリンまたはDOACによる抗凝固を推奨している。

欧州のガイドラインでは中等度以上のMSがある場合か機械置換術後についてはワルファリンが適応となりそうでなければCHA2DS2―VAScスコアに応じた抗凝固療法を推奨している。特にDOACの適応があればワルファリンではなく積極的にDOACの使用を推奨している。

ここがポイント

日本のガイドラインでは心房細動は弁膜症性(リウマチ性僧帽弁疾患(主に狭窄症)と人工弁(機械弁、生体弁)置換術後)とそれ以外の非弁膜症性心房細動に区別している。一方で欧州のガイドラインでは各国ガイドラインにおける非弁膜症性の定義が多少異なり、弁膜症としつつも僧帽弁狭窄症以外の弁膜症と抗凝固薬の選択についてのエビデンスが乏しいことに言及し非弁膜症性とは表現せずに、具体的な基礎疾患について表記するようにしている。米国のガイドラインでは非弁膜症性を中等度以上の僧帽弁狭窄症または機械弁でない心房細動と表記している。

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ESC(欧州心臓病学会)心房細動管理ガイドライン2012では、CHA2DS2-VAScスコア2点以上で経口抗凝固療法が推奨されています。CHA2DS2-VAScスコアは低リスクをより詳細にリスク評価するためのツール。

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主な臨床試験まとめ

・プラザキサ(ダビカトラン):RELY

・イグザレルト(リバーロキサバン):ROCKET―AF

・エリキュース(アピキサバン):ARISTOTLE

・リクシアナ(エドキサバン):ENGADE AF―TIMI 48

DOACのメリットとデメリット

メリット

・容量調整が不要

・薬品や食品との相互作用が少ない

デメリット

・ダビカトラン以外には現在使用可能な拮抗薬がない

・腎機能障害患者には使いずらい。高度腎機能障害がある場合や透析患者には使用できない。具体的にはダビカトランはCCr30未満、そのほかは15未満では禁忌となる。

症例から学ぶ

55歳男性。高血圧、糖尿病で通院中。動機を主訴に受信され新規に心房細動が見つかった。

→心房細動の血栓塞栓症の1次予防として抗凝固薬の適応となるだろう。CHADS2スコアでは高血圧、糖尿病で2点で適応。出血リスクはHAS―BLEDスコアで高血圧のみの1点。ちなみにHAS―BLEDスコアの3点以上の場合は半年間の重大な出血リスクは4〜6%と言われている。

処方:イグザレルト15mg1錠分1

80歳男性。高血圧、CCr40のCKD。ADLは部分介助。体重50kg、定期外来で心房細動が見つかった。頸静脈怒張や浮腫などはなく体液貯留所見はなく、心雑音は聴取されない。肝機能、甲状腺機能は正常であった。

→HAS―BLEDスコア3点。CHADS2スコアでは3点でもちろん適応であるが、出血と血栓のリスクを天秤にかけて処方する。(多くは処方するがあくまで症例で判断)

この場合では出血リスクのプロファイルにやや優れているエドキサバン(リクシアナ)の低容量30mg1錠分1を洗濯した

さらに進んで

初発の心房細動、未治療の心房細動を見たときは甲状腺機能をルールアウトするべき。甲状腺機能亢進症で心房細動を発症している可能性があるから。

CHADS2スコア1点であっても年間2.8%の脳梗塞リスクがあることは無視できない。65歳以上、血管疾患の既往、女性をリスクに加えたCHA2DS2―VAScスコアの方が優れている。

ではなぜ日本のガイドラインではCHADS2スコアが推奨されている?

→女性というリスクに関しては65歳未満で他に器質的心疾患を伴わない場合単独では危険因子にならないことが判明している。なので例えば他に既往のない55歳女性の心房細動については一般的には抗凝固薬の適応とならない。

喘息発作を帰宅させる時の対応

はじめに

喘息発作は当直をしていると稀ならず出くわす疾患の一つであるが、その入院させるか帰宅させるかに悩む場面は多い。今回は喘息発作の救急対応後に患者を帰宅させるときの対応についてまとめる。

喘息発作の入院適応

・高度および重篤の場合

・中等度発作の場合、吸入薬や全身ステロイド治療などで2−4時間の治療で反応不十分あるいは1−2時間の治療で反応なしの場合

・救急受診までに症状が数日〜1周間程度続いている場合

・過去に気管支喘息で入院歴がある場合(重症化するリスクがある)

帰宅させる時の対応

・β刺激薬の吸入は複数回できるが(30分間あけて3回までなど)最終のβ刺激薬の吸入を終えてから1時間以上経過して、症状が落ち着いておりwheezeが消失している場合

・メプチンエアーや経口ステロイドプレドニン®)も処方して帰宅させる(プレドニンは0.5mg/kg/day分を3日〜5日分処方する。体重50kgであれば25mgほど)。メプチンは発作に対して使用するものだがステロイドは予防的投与。

・喘息において特に大事なことは発作の予防である。喘息は可逆的な気管支の炎症と言われていたが、発作を繰り返し起こすと慢性的に気管支の狭窄状態になってしまう。よって長期コントロールで喘息発作を起こさせないことが何よりも重要である。そのことをしっかりと教育してかかりつけ医へ紹介状を記載しつなぐことが大事。

風邪診療 鼻水が主症状の場合

はじめに

・鼻水を主症状とする場合、鼻症状メインの風邪かもしくはアレルギー鼻炎、細菌性副鼻腔炎の鑑別が必要となってくる。しかしこれらの疾患は初診で診断をつけて治療を開始しなくても、自然軽快したりそれほど重症にならないなどの点からそれほど重要視されるものではない。しかしどのような場合に抗菌薬を処方するかなど判断は難しい。実際感冒症状の後の副鼻腔炎はライノウイルスやパラインフルエンザなどのウイルス性がほとんどで細菌性は0.5%~2.0%と言われている。さらに細菌性であってもその多くは抗菌薬は不要とされているためその線引きを明確にしておこう。

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・膿性鼻水は細菌性か?

粘膜上皮細胞が傷害を受ける→炎症細胞が浸潤し膿性鼻汁・膿性痰(傷害を与えるものは細菌性の可能性もあるが、ウイルスや化学物質の可能性もある)

さらに風邪が良くなる過程で水様鼻水がだんだんと黄色で粘稠度が増してくるがこれは風邪自体が改善してきている過程であり、膿性鼻汁=細菌感染ではない。

アレルギー性鼻炎とウイルス性鼻炎の特徴

アレルギー性鼻炎の特徴 ウイルス性鼻炎の特徴
朝方や夜に症状が強い 1日通じて
季節性の変化がある 季節とは関係ない
視診で鼻粘膜が蒼白に見える 発熱・咳・咽頭痛などの随伴症状
鼻汁好酸球増加  

細菌性副鼻腔炎とウイルス性副鼻腔炎の鑑別

細菌性副鼻腔炎の特徴

・症状が二峰性

・片方側の頬部痛

・うつむいた時に前頭部もしくは頬部の重い感じ

・上歯痛(+LR2.5 -LR0.9)

・病歴上鼻汁色調の変化(+LR1.5 -LR0.5)

・身体所見で膿性鼻汁の確認(+LR2.1 ―LR0.7)

・血管収縮薬・抗アレルギー薬に反応が悪い(+LR2.1 -LR0.7)

・transillumination test陽性(+LR1.6 -LR0.5)

この中で特に注目すべきは二峰性の病歴であることである。明確なデータはないが、さらに咳・鼻水・咽頭痛の3症状に加えて発熱が二峰性に出れば細菌性の可能性が高くなる。

病歴では「最初は咳・鼻水・37度の発熱を認めて3日ぐらいでどれも改善したけど、その後数日して鼻水が悪化し発熱も38度でた」など

では、細菌性副鼻腔炎の可能性が高い!→抗菌薬処方か?

前例処方というわけではなく多くは自然軽快する。だから基準は

初診の時点で以下2つmの条件を満たす

・強い片側の頬部の痛み・主張、発熱がある

・鼻炎症状が7日以上持続、かつ頬部の痛み・圧痛と膿性鼻汁、二峰性の病歴がある

うっ血除去薬や鎮痛薬を7日以上処方して経過を診ている場合

・上顎、顔面の痛みがある

・発熱が持続する。

ちなみに治療適応の判断にX線検査やCTは?

X線は感度が低く、CTは感度はいいけど偽陽性が多い。→わざわざ撮影しなくてもってゆう感じ。

専門科にコンサルトする場面

→眼窩周囲浮腫、眼球位置異常、視野異常(複視、視力低下)、眼筋麻痺、激しい痛みなどであるが、症状が強くて見きれなくなったらということ!

ちなみにCompromised host(DM、FN患者など)はムコール、アスペルギルスなど侵襲性の真菌感染へと進展する場合があるので注意が必要である。

治療適応がある細菌性副鼻腔炎の処方例

・アモキシシリン250mg6CP分3 5〜7日

・オーグメンチン3CP+アモキシシリン3CP いずれも分3 5〜7日

+カルボシステイン500mg1回1錠 1日3回

これらに加えて症状に対する感冒

ペニシリン系、セフェム系にアレルギーがある場合

・クリンダマイシン150mg 1日4回 5〜7日

クラリスロマイシン200mg 1日2回 5〜7日

・アジスロマイシン500mg 1日1回3日間 もしくは1回2gのみ

外用抗菌薬について

抗菌外用薬について

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合剤:クロラムフェニコール+フラジオマイシン硫酸塩+プレドニゾロン=クロマイーP

SSI予防としては一般的に使わない

じゃあいつ使う?→表在性感染症(伝染性膿痂疹、、、ぐらい?)

褥瘡に対してはそれぞれに使い分けられている

ゲーベン、クロマイP、など

コメント、意見等あればよろしくお願いします。