とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

2021-05-12から1日間の記事一覧

メッケル憩室についておさらい

はじめに メッケル憩室とは回盲部より数十センチ口側にできる先天性の真性憩室である。(無症状患者が多いが全人口の2〜4%と言われている) 約20%の頻度で胃粘膜の迷入を認めることがある。その場合は憩室の内腔は異所性の胃粘膜で覆われるということ…

急性膵炎でcolon cut-off sign、sentinel loop signが見られる機序

はじめに 急性膵炎は救急で来院される代表的な急性腹症の一つであると言える。今回は急性膵炎でcolon cut off sign /sentinel loop signが見られる機序について説明する。 急性膵炎でcolon cut-off sign、sentinel loop signが見られる機序 急性膵炎では膵臓…

急性膵炎で高Ca血症となる理由

はじめに 急性膵炎では血中カルシウムが減少することが知られており、急性膵炎の重症度分類にもカルシウム値は反映されている。今回は急性膵炎でカルシウムが低下する理由についてまとめる。 急性膵炎で低カルシウム血症になる理由 急性膵炎とは膵臓内で活性…

便秘で虚血性腸炎になる理由

はじめに 虚血性腸炎は高齢者の血便を主訴に来院される場合が多い。誘因としては年齢や生活習慣などから動脈硬化が進行し腸管への血流障害から生じる。また便秘を有する人に多くその理由を検討する。 便秘が虚血性大腸炎の誘因となる理由 虚血性大腸炎とは動…

ピロリ菌除菌は逆流性食道炎の増悪因子になる!?

ピロリ菌除菌が逆流性食道炎の増悪因子となる理由 胃食道逆流症(GERD)とは酸性の胃内容物が食道方向に逆流することにより食道を傷つけてしまう疾患。 ただし食道の下には下部食道括約筋があるので胃の内容物は通常逆流しないようになっている。 逆流性食道…

食道がんに対するルゴール染色の意味

食道ガンに対するルゴール染色で白くなる理由 ルゴール溶液とはヨウ素、ヨウ化カリウム、グリセリンなどからなる溶液である。 この液体は食道ガンの検査で用いられる。 ヨウ素でんぷん反応というのはでんぷんとルゴール(ヨウ素)が反応することによって呈色…

逆流性食道炎に抗コリン薬を使ってはいけない理由

逆流性食道炎に抗コリン薬禁忌の理由 胃食道逆流症とは酸性である胃の内容物が食道に逆流することで食道を傷つけてしまう疾患である。 治療法としては胃酸の分泌を抑える薬剤であるプロトンポンプインヒビターやヒスタミンH2受容体拮抗薬などが用いられる。 …

肝硬変では低Na血症に注意する なぜか?

肝硬変ではアルブミンの産生能が低下することにより膠質浸透圧が低下し、水が間質に移動する。それにより血管内が脱水状態となり、代償的に水を血管内に増やそうとする機構が働く。 一つはアルドステロンによる遠位尿細管からのナトリウムの再吸収であり、も…

肝性脳症について ①診断編

はじめに 肝性脳症とは高度の肝臓障害により意識障害、羽ばたき振戦などを始めとした様々な精神症状をきたす症候群である。劇症肝炎や肝硬変が主な原因。 肝性脳症の分類 【肝性脳症の病態】 肝機能が正常であれば、腸管から吸収された毒素を解毒することが…

劇症肝炎でのPT

はじめに 劇症肝炎とは肝臓が急激に機能低下を生じて、発症から8週間以内に肝性昏睡度二度以上の肝性脳症をきたし、更にプロトロンビン時間40%以下を示すものと定義される。 原因はB型肝炎ウィルスによるものが多い。 症状としては発熱、黄疸、浮腫など…

高位前方切除術と低位前方切除術の違い

直腸の解剖 直腸は部位によってRs,Ra,Rbに分けられている。 Rs:岬角〜第2仙椎下縁までの範囲。直腸S状部のこと。腸間膜がある領域であるので厳密にはS状結腸に含まれるはずであるが、日本では直腸の一部として扱われている。 Ra:第二仙椎下縁〜腹膜反転部…

女性の急性腹症 最初の一歩

はじめに 女性の急性腹症・下腹部痛に不安や苦手意識を抱いている内科医師は多い一方で診療しなければならない場面は珍しくない。ただ一般内科医としては内科的疾患を除外するだけでなく産婦人科疾患でどのようなものを鑑別に考えるかはコンサルトする上でも…

肝硬変患者のvibrio vulnificus

【vibrio vulnificusとは】 vibrio vulnificus(ビブリオ・バルニフィカス)とはビブリオの一種で壊死性筋膜炎を起こすことから日本では人食いバクテリアとも呼ばれる菌の一種である。 生息域は腸炎ビブリオと似ており、温かい汽水域の海水中に多く分布して…

胃瘻の適応と禁忌 まずは基本を知ろう

1.適応と禁忌 PEGの適応と禁忌を表1、2に示す。 一般的には、正常の消化管機能を有し、4週間以上の生命予後が見込まれる成人および小児がその適応となる。 本邦には疾患別の適応と禁忌は存在していない。 PEGの適応に関しては医学的な側面と倫理的側面か…

便秘への対応 たかが便秘、されど便秘

はじめに 便秘とは日常よく遭遇する症候であるが、その原因は非常に多岐にわたり下剤を処方するだけでは十分でない。 入院後の環境変化や明らかな便秘の原因を指摘できる場合以外は分類し、原因を検索することが大切 【便秘の分類】 器質的便秘:悪性腫瘍(…

急性虫垂炎の自然経過 知らないと医師として恥ずかしい!?

虫垂炎では症状の発症する順番はある程度決まっている 半日〜2日ぐらいの経過で次のように症状が出現する。 1,心窩部痛 2,嘔気、嘔吐、食欲不振 3,右下腹部の圧痛 4,発熱 5,白血球増加 ・認められない症状があることはあっても順番が逆になること…

アニサキス症に対する対応 あわてずスマートに

はじめに アニサキスは寄生虫の一種であり、イカ、サバの生食を経口摂取することが発症すると言われているが、地域によって原因となる魚種に違いが有り、西日本や関東周辺ではサバ、イワシ、アジなど、北海道ではタラ、ホッケ、サケなどがアニサキスの原因と…

感染性腸炎に対する抗菌薬治療 知らないでは済まされない一般診療

はじめに 感染性下痢症に抗菌薬は必要なのか。 感染性腸炎の原因は大きく分けてウィルス性と細菌性とがある。 抗菌薬は細菌を殺す薬なので当然であるがウィルス性腸炎には効かない。 逆に細菌性の腸炎であれば全例抗菌薬を使っていいのかというとそういうわ…

胆石に対する対応 まずはこれだけ 帰宅させるかどうか 薬剤治療の適応

はじめに 胆石は症状がなくても人間ドッグなどで偶発的に発見されることも多い。 症状がなければ基本的に無治療で経過観察としても良い。が、年間3%前後の確率で症状を発症する可能性があり、また胆嚢がん患者では高率で胆石を認めるので無症候性であって…

PIDと虫垂炎の鑑別項目

PIDとは若い女性に好発する上部生殖管の感染症。子宮内膜や卵管、付属器は本来無菌状態であるが、下部生殖器の膣、外陰部、子宮頸部に感染した微生物が上行性に上部生殖器に波及するとPIDとなる。(PIDとはpelvic inflammatory diseaseの略= 骨盤内炎症性疾…

便潜血という検査の意義 知らないでは済まされない

◯健康診断で便潜血陽性を指摘された場合の対応 便潜血は大腸がんのスクリーニングとして用いられるが、その感度は必ずしも高くない。便潜血には1回法と2回法があり、1回法の検査では進行大腸がんの感度が60%ほど、2回法では90%ほどと言われている(…

急性胆嚢炎についてまとめ

PTGBD(胆嚢ドレナージ)の適応は? 中等症以上の急性胆嚢炎では原則手術により胆嚢摘出を行うが、手術が行えない場合はPTGBDなどの胆嚢ドレナージの適応となる。 手術が行えない場合とは以下の場合。 ・高齢者、合併症などで手術ハイリスク患者 ・施設の事…

脂肪肝に対するマネジメント まずはこれだけ

◯脂肪肝とは 肝臓の小葉の1/3以上の幹細胞に中性脂肪からなる脂肪滴の貯留した状態を言う。 ◯脂肪肝の原因 ・アルコール(大酒家の80%以上が脂肪肝というデータあり) ・肥満、過剰な高カロリー輸液、糖質の過剰摂取、低栄養 ・代謝異常(糖尿病、脂質異常…

ステロイド外用薬の基本知識

ステロイド外用薬の基本知識についてまとめてみる まずはステロイド外用薬の強度→5段階に分けられる Ⅰストロンゲスト:デルモベート、ダイアコート Ⅱベリーストロング:アンテベート、フルメタ Ⅲストロング:リンデロン、フルコート Ⅳミディアム:ロコイド…

研修医・若手医師のための勉強サイト

はじめに 研修医に限らず医師の仕事には日々疑問が湧いてくるだろう。現代は非常に勘弁に必要な情報へアクセスすることが可能となった。しかし必要とする情報を入手した際にその信頼性を担保することがとても重要となってきている。 研修医・若手医師が調べ…