とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

呼吸器

マイコプラズマ肺炎についてまとめてみた

はじめに マイコプラズマ肺炎は咳もしくは発熱を主訴とすることが多い疾患で非定型肺炎に分類される。マイコプラズマ肺炎は通常通年性にみられ、普遍的な疾患である。欧米において行われた罹患率調査のデータからは、報告によって差はあるものの、一般に年間…

喘息発作を帰宅させる時の対応

はじめに 喘息発作は当直をしていると稀ならず出くわす疾患の一つであるが、その入院させるか帰宅させるかに悩む場面は多い。今回は喘息発作の救急対応後に患者を帰宅させるときの対応についてまとめる。 喘息発作の入院適応 ・高度および重篤の場合 ・中等…

癌性リンパ管症についてまとめてみた

癌性リンパ管症(lymphangitis carcinomatosa)とは何か? 研修医でも呼吸器内科などをローテートした人なら経験したことがあるのではないだろうか。 頻度は明確なデータはないが、がん細胞の転移様式のひとつと言われ発症すれば予後は数ヶ月という状態である…

ACOについてまとめてみた

(Asthma and COPD Overlap:ACO)とは? まずは気管支喘息とCOPDのそれぞれの病態についてまとめる。 ・気管支喘息は「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性をもった気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳で特徴づけられる疾患」 ・COPDは「タバコ煙を…

気管支拡張薬の使い分け

はじめに ・気管支拡張薬はβ2刺激薬、抗コリン薬、キサンチン誘導体の3系統 ・気管支喘息やCOPDに対して気管支を拡張する目的に使用される ・効果と副作用の観点から内服よりも吸入薬が推奨されており適切な吸入器デバイスを選択すべし β2刺激薬 ・β2刺…

呼吸器 同効薬の使い分け 総論

ポイント ・鎮咳薬と喀痰調整薬は対症療法であり、咳嗽と喀痰に対する治療の大前提は症状の背景にある疾患に対する治療である ・喀痰は機動分泌が亢進している病態の存在を示唆するため湿性咳嗽の対症療法は喀痰調整薬であり、原則として鎮咳薬を投与しない…

吸入ステロイド これだけは知っておきたい知識

はじめに ・吸入ステロイド薬は気管支喘息やACO患者では治療の基本となる薬剤である。ICSをどう使い分けるか、どの吸入器具を選択するかも大事である。そのため治療奏功を期待するにはアドヒアランスの問題をクリアすることが必要条件となる。つまり喘息治療…

鎮咳薬・喀痰調整薬の使い分け

鎮咳薬・喀痰調整薬とは? あくまで症状改善薬であり病気自体の治療薬ではない。 例えば、細菌性肺炎などにより膿性痰があれば抗菌薬で治療すべきだし、気管支喘息やCOPDであれば慢性呼吸器疾患として特異的な治療を行うべきである。鎮咳薬・喀痰調整はその…

咳嗽診療について最初から最後まで

咳嗽診療について初めから詳しくまとめてみた 咳嗽とは 気道内に貯留した分泌物や異物を気道外に排出するための生体防御反応である 咳嗽のメカニズム(上気道・下気道の上皮細胞に咳嗽受容体があり、気道異物や分泌物、炎症などの咳嗽刺激は受容体から迷走神…

肺炎に対する血液培養検査の意義(陽性率の低さからみる適応)

肺炎に対する血液培養検査の意義(陽性率の低さから見る適応) はじめに 肺炎は一般的な感染症であり、発熱、呼吸不全を伴い場合によっては重症化、死にいたる疾患でもある。しかし市中肺炎に対して血液培養検査は行われる場合が多い反面、その陽性率は実臨…

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点(BLNARを考える)

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点 はじめに SBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)は基本的にはCTRX(ロセフィン/セフトリアキソン)よりカバーする細菌は多い。嫌気性菌にも効くのがSBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)である。しかし…

肺炎に対してCTを撮影する意義はあるか?

肺炎に対してCTを撮る意義はあるか? はじめに 肺炎診断に胸部CTは必須ではない。しかし臨床の場面によっては胸部CTを撮影しておく場面もあり、特にどのような場面で必要と考えるか。また肺炎が疑われる患者において胸部CTの適応は?ということに関して今回…

肺外結核のミカタ

はじめに 結核は全世界で年間1000万が罹患する。死亡原因のトップ10に入る。なので珍しい疾患でなくあらゆる症状に対する鑑別として考えなくてはならないものである。 疫学 ・発症する人は高齢者が多い(特に結核の既往があれば注意) ・若年者であれ…

縦隔気腫へのアプローチ

◯縦隔気腫とは 縦隔気腫とは何らかの原因により気管に小さな穴が開くことにより、本来なら空気の存在しない縦隔に空気が入り込むことを言う。自然気胸と同じように痩せ型の若年男性に多い。 原因としては胸痛発生時に胸腔内圧が上昇することが多い。気管支喘…

気管支拡張症について まずはこれだけ

CTにおける”気管支拡張”所見の見方 外から肺に取り入れた酸素を血液を介して全身に運ぶために、肺動脈と気管支は並走している。本来であれば肺動脈径と気管支径の大きさは同じようなものであるが、気管支径の方が肺動脈よりも大きくなっている場合を”気管支…

鎮咳薬は本当に意味があるのか

はじめに 咳嗽を主訴に来院する患者は数多く、その受診動機は大きく2つに別れる。一つはは咳嗽が出ていることが何らか怖い病気ではないかと心配し原因検索をメインに希望する。もう一つは咳嗽が出ていることを何とか止めてほしい(社会的背景もあり)今回は…

気管支喘息を診断するには

はじめに 喘息には特徴的な症状がたくさん存在するがそのうち、どの項目を満たせば喘息と診断できるなどの診断基準はなく、症状から総合的に判断しなければならない。今回はどのような症状の時に喘息という診断に至るか、はたまた喘息の特徴的所見についてま…

咳喘息を疑った時の対応

咳喘息と喘息(=気管支喘息)の違い ◯咳喘息とは 中枢から末梢気道まで全体的に好酸球性の気管支炎を起こす病態である。病態としては気管支喘息(つまり喘息)と同じであるが、症状としては咳がメインという点で異なる。気道が過敏になっており風邪ウィルス…

FEV1%と%FEV1の違い

はじめに 高齢者の慢性的な呼吸器症状で最も多いCOPD。外来でもよく遭遇するがCOPDの診断には呼吸機能検査を行うことが多いがよく似た言葉でFEV1%と%FEV1があり混同することがあるが今回はそれについてまとめる。 FEV1%と%FEV1の違い FEV1は先に%がつくか…

COPDについてまとめ まずはこれだけ

はじめに COPDは高齢者の息切れ、喀痰を主訴とする慢性呼吸器症状の代表的疾患となり、病期分類、重症度、また治療もある程度確立しており今回はそれらについてまとめる。 診断手順 ①COPDの患者さんの主訴の多くが労作時呼吸困難感であるため、修正MRC(mMRC…

胸部CTでの重力変化とは

胸部CTを仰臥位で撮影すると健常者であっても肺底部背側にすりガラス影がみられることがある。仰臥位においては一番低い肺底部背側の静脈圧・リンパ管圧が高まり、肺末梢間質の容積が増えてしまうことにより、肺実質が圧排されてしまうからである(つまり無…

ARDSの診断基準

はじめに ARDSは肺炎などの感染症や重症外傷などによって高サイトカイン血症が生じることで血管透過性亢進によって引き起こされる肺水腫、高度の低酸素血症である。急激に進行する呼吸困難、胸部レントゲンで両側肺野全体のびまん性浸潤を呈することが多いと…

COPDをいつ疑うか

COPDをいつ疑うか COPDとは診断ガイドラインでは次のように定義されている。 「有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である。この気流制限には様々な程度の可逆性を認め、発症と経過が官女であり、労作時…

いつ結核を疑うか 

はじめに 結核診断の第一歩は結核を疑うことである(決して稀な疾患ではない) ◯アメリカのガイドラインによると次の状況で結核を疑う ・2−3週間以上続く咳+(発熱、寝汗、血痰、体重減少のうちの1つ以上) ・結核リスクの高い患者で原因不明の呼吸器症状…

結核を疑った時にする検査 

はじめに 結核は過去の感染症ではなく現在日本であらゆる症状の鑑別診断の上がる疾患と考えた方が良い。特に呼吸器症状とレントゲンや胸部CT異常で典型的な画像を認めれば隔離の上で検査するという対応を迫られる。今回は結核を疑った時に行う検査をまとめる…

気管支喘息発作への初期対応まとめ これで救急対応はばっちり②

はじめに 喘息発作への初期対応 喘息の重症度には発作時と安定期の2種類ある。救急外来などで対応することになる発作時について説明する。 ↑引用:http://ryumachi.umin.jp/clinical_case/BA.html ◯ステップ1:軽度発作、苦しいが横になれる、日常動作ほぼ…

気管支喘息患者の入院適応

◯喘息患者の入院適応 ・↓表の重症度分類で、高度および重篤の場合は入院の絶対適応。 ・中等度発作の場合であれば、吸入薬や全身ステロイド治療などで2−4時間の治療で反応不十分あるいは1−2時間の治療で反応なしの場合は入院適応。 ・救急受診までに症状…

喘息発作に対するステロイド治療

Q、ステロイドは内服より点滴のほうが良いのか? →喘息発作に対する全身ステロイドは点滴でも内服でも効果は変わらない。重症発作以上では内服が難しいこともあるので点滴のほうが無難だが、中等度であれば内服でも構わない。 ・喘息発作に対する全身性ステ…

気管支喘息発作に対するテオフィリンの立ち位置

◯テオフィリンとは テオフィリンはcAMPを増加させてプロテインキナーゼを活性化させることにより気管支平滑筋を拡張させる効果があり、気管支喘息やCOPDなどに有効とされている。気管支喘息に最初から投与することはないが、β刺激薬(メプチンなど)やステロ…

喘息診断に用いられる呼気NO試験とは

◯呼気NO試験とは? 呼気一酸化窒素濃度(FeNO)試験は近年普及している検査。 喘息患者の呼気にはNOが健常人に比べて多く含まれることがわかってきた。 気道に慢性的な炎症が起こると気道粘膜でNO産生酵素が増えるため吐いた息に多く含まれるようになる。呼気…