とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

感染症

クロストリジウム・ディフィシルについてこれだけ 疫学から診断・治療まで

はじめに 病棟を管理する診療科であれば遭遇したことはなくても、一度は鑑別にあげたことがあるであろうCD腸炎。CDI感染(クロストリジウム・ディフィシル)はいつ疑うか。 教科書的には抗菌薬使用後+入院患者に発生する下痢では疑わなければならないとされ…

HCV検査の解釈について 肝炎ウイルス検査のよく分からないを解決

はじめに C型肝炎の診断においてHCV抗体とHCV-RNAが用いられる。C型肝炎の感染経路としては医療現場においては針刺し事故や注射器の使い回しなど。感染後急性肝炎となっても30%は自然に治癒し、70%は慢性化する。慢性化すると肝硬変、肝臓がんへと進展する…

クロストリジウム・ディフィシルについて

CDI感染(クロストリジウム・ディフィシル)はいつ疑うか。 教科書的には抗菌薬使用後+入院患者に発生する下痢では疑わなければならないとされている。 抗菌薬投与から1〜2ヶ月 ◯CDIを起こしやすい抗菌薬 リスク比一覧(byホスピタリストのための内科診療フ…

風邪診療 咽頭痛症状がメインの場合

はじめに 咽頭痛をきたす疾患は非常に多い。アメリカでは年間2100万人が咽頭痛で受診しそのうち1200万人は急性咽頭炎の診断となっている。咽頭痛は重篤な疾患の症状ともなる場合があり、killer sore throat(死の危険性のある咽頭痛)は見逃してはい…

風邪診療 鼻水が主症状の場合

はじめに ・鼻水を主症状とする場合、鼻症状メインの風邪かもしくはアレルギー鼻炎、細菌性副鼻腔炎の鑑別が必要となってくる。しかしこれらの疾患は初診で診断をつけて治療を開始しなくても、自然軽快したりそれほど重症にならないなどの点からそれほど重要…

外来風邪診療 診察から処方・帰宅まで まずはここから

医学生時代、多くの医学知識を詰め込み、様々な疾患・治療法を授業の中で学んできたが、いわゆる風邪(上気道炎)だけの授業というものが驚くべきことに、ほぼないのが医学教育の現状である。 世間一般の方からすれば驚くことかもしれない。ただこれが現実で…

風邪診療 咳症状メインの感冒症状に対するアプローチ

咳症状で受診しうる最も多い疾患は気管支炎であり、90%以上が非細菌性で5〜10%がマイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌などと言われている。 解剖学的下気道:気管支以下 臨床学的下気道:肺以下 気管支炎で最も多いのはウイルス性の気管支炎で抗菌薬…

伝染性単核球症についてまとめてみた

はじめに 外来でよく出会うこの疾患、mononucleosis-like symptoms(伝染性単核球症の臨床像)は発熱、全身倦怠感、頸部リンパ節腫張(特に後頸部リンパ節などの全身性リンパ節)、肝脾腫などがあり、これらがあれば疑う。 ポイント ・毛布のような白苔が扁桃…

感冒症状(風邪・上気道感染)に対する処方まとめ

いわゆる風邪という疾患は発熱、頭痛、咽頭痛、咳嗽、鼻水など多岐にわたる症状が同時に同程度起こるとされている。しかしただの風邪に抗菌薬処方は有効ではなく、作用に比べて副作用のリスクの方が高いという認識が必要と考えられる。 一方で風邪に対しては…

風邪診療についてまとめてみた 〜局所臓器症状不明瞭・高熱のみ型〜

はじめに ・風邪という誤審が最も起こしやすいパターンが局所臓器症状不明瞭型の特徴である。 ・命に関わる敗血症がこのパターンに含まれるため注意が必要。 ・何らかの敗血症の初期かもしれないという認識で診療にあたる。 局所臓器症状不明瞭・高熱のみ型…

風邪診療について 局所臓器症状不明瞭・高熱のみ型 後編

熱源不明の患者でチェックすべき部位とポイント 結膜 結膜炎(咽頭結膜熱など)、黄疸(胆道感染)、点状出血(感染性心内膜炎)、充血(レプトスピラなど) 両上顎の圧痛の有無 副鼻腔炎では圧痛ではなく左右左程度のことも多い 口腔・咽頭・頬粘膜・軟口蓋…

風邪診療まとめ 微熱+倦怠感編

風邪のような感染症は数多くあります。 今回はその中でも微熱+倦怠感をきたす疾患にフォーカスを絞ってまとめます。 微熱+倦怠感とは感冒症状があるにも関わらず咳嗽、鼻水、咽頭痛などがなく症状のメインが倦怠感である状態。 倦怠感という訴えは医師とし…

風邪診療まとめ 発熱+頭痛編

このカテゴリーで見逃してはいけないのが何といっても髄膜炎である。 発熱に加えて今までに感じたことのない頭痛を訴える場合には常に髄膜炎を考えなくてはならない。 しかしその違いは難しくどうゆう場合に髄膜炎を疑って腰椎穿刺を施行すべきかを考える。 …

Bell麻痺やRamsay Hunt症候群でのステロイドの使い方

はじめに Bell麻痺やRamsay Hunt症候群は治療が遅れたり、失敗したりすると顔面神経麻痺などを残す。そのため機能予後の観点から疑えば、経過観察という選択肢はない。しかし治療に際して比較的高用量のステロイドを使用することが多いため治療を躊躇してし…

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点(BLNARを考える)

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点 はじめに SBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)は基本的にはCTRX(ロセフィン/セフトリアキソン)よりカバーする細菌は多い。嫌気性菌にも効くのがSBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)である。しかし…

不明熱の検査 (網羅的 すべてやるわけではない)

はじめに 不明熱とは日常診療でも出くわす場面があるが古典的不明熱という定義がある。今回は不明熱に出くわした時にどのような検査が候補として考えるべきか上げていく。しかしこれらの検査は想定すべき疾患がある上で行うべきであり、患者背景も考慮して必…

血液培養陽性の時、その結果は信じられるか

はじめに 現在では発熱に対して血液培養を2セット採取することは至極一般的になっている。これは感染症診療に日々尽力している医療者の成果の賜物とも言えるが、その分血液培養でのコンタミは患者だけでなく我々にも悪影響となる。今回はどんな場合はコンタ…

性感染症についてまとめ まずはこれだけ

はじめに 性感染症は性器外症状で受診する場合がある。発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎 性交渉歴の聴取が必要な時 性交渉歴を聞く時の対応 尿道炎 梅毒検査

HIV感染症へのアプローチ

はじめに HIV感染症とはそれほど頻度多く接する機会は少ないが、ある程度の知識は持っておくべきである。HIV感染症とはヒト免疫不全ウイルスの持続感染の結果、細胞性免疫が機能不全に陥る疾患であり今回はこれについてまとめる。 疫学 世界では3800万人…

肺外結核のミカタ

はじめに 結核は全世界で年間1000万が罹患する。死亡原因のトップ10に入る。なので珍しい疾患でなくあらゆる症状に対する鑑別として考えなくてはならないものである。 疫学 ・発症する人は高齢者が多い(特に結核の既往があれば注意) ・若年者であれ…

いつ結核を疑うか 

はじめに 結核診断の第一歩は結核を疑うことである(決して稀な疾患ではない) ◯アメリカのガイドラインによると次の状況で結核を疑う ・2−3週間以上続く咳+(発熱、寝汗、血痰、体重減少のうちの1つ以上) ・結核リスクの高い患者で原因不明の呼吸器症状…

結核を疑った時にする検査 

はじめに 結核は過去の感染症ではなく現在日本であらゆる症状の鑑別診断の上がる疾患と考えた方が良い。特に呼吸器症状とレントゲンや胸部CT異常で典型的な画像を認めれば隔離の上で検査するという対応を迫られる。今回は結核を疑った時に行う検査をまとめる…

抗インフルエンザ薬の特徴と使い方

はじめに 抗インフルエンザ薬は複数種類あり、その投与経路、回数、薬価など微妙な違いがある。今回はその違いを解説し、何を処方すべきか選べることを目標にまとめる。 概要 インフルエンザウイルスは発熱後48〜72時間にウイルス量が最大となるため48…

風邪診療について 発熱+関節痛型

はじめに この症候で最も大事なことは「関節痛だけ」なのか「関節炎」まできたしているかということである。 強い関節痛〜関節炎まできたしうるウイルス 頻度の高いもの ・パルボウイルス ・風疹とそのワクチン ・BC肝炎ウイルス ・アルファウイルス ・デン…

風邪診療  発熱+発疹

はじめに このカテゴリーとして最も多いのは蜂窩織炎である。全身性であれば診断がつかない何らかのウイルス感染に伴うもの(中毒疹)、もしくは薬疹の疑いとなることが多い。 病歴聴取 ・年齢:高齢者ではウイルス感染ではなく、非感染性疾患(薬剤性)もし…

感染症へのステロイド治療

はじめに 感染症にステロイド?一昔前では免疫を抑えるステロイドを感染症に用いることは普通ではなかったが今となっては様々に使用されている。しかしエビデンスはそれほど確立しておらず唯一あるのは細菌性髄膜炎に対してと敗血症性ショックに対してのみで…