とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

脂肪肝に対するマネジメント まずはこれだけ

脂肪肝とは

肝臓の小葉の1/3以上の幹細胞に中性脂肪からなる脂肪滴の貯留した状態を言う。

脂肪肝の原因

・アルコール(大酒家の80%以上が脂肪肝というデータあり)

・肥満、過剰な高カロリー輸液、糖質の過剰摂取、低栄養

代謝異常(糖尿病、脂質異常症高尿酸血症

・薬剤性(ステロイド、テトラサイクリン)

・内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、下垂体機能不全、多嚢胞性卵巣症候群など)

・手術後:胃全摘後、腸管切除後など

脂肪肝の鑑別診断

・本当に脂肪肝で良いのか?

・HBs抗原、HCV抗体、各種自己抗体など検査して他の肝疾患を除外が必要

・アルコール性ではないか?飲酒歴があれば禁酒によって改善する。

飲酒継続では肝炎や肝線維症、肝硬変へと進展する。採血上はAST↑↑、ALT↑

・他の原因がなく飲酒もなければ脂肪肝を考える。

→非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

脂肪肝の検査

・多くは腹部エコーやCTで診断される。

・採血ではAST・ALTが正常もしくは軽度上昇。

γGTPも上昇する。

・アルコール性ではAST優位、非アルコール性ではALT優位。

・血清TGも正常〜軽度上昇

コリンエステラーゼも上昇する

・確定診断は肝生検(日常臨床で行うことはまずない)

◯肝硬変の分類:NAFLとNASH

・いわゆる脂肪肝は非アルコル性脂肪性肝疾患(NAFLD)と表現される。

・NAFLDはNAFLとNASHに分類される。

NAFL:非アルコール性脂肪肝:肝臓に脂肪沈着を認めるが炎症はないか軽度。

NASH:非アルコール性脂肪肝炎:肝臓の脂肪沈着に加えて炎症細胞浸潤・線維化を伴う。

NASHは脂肪肝の1つのタイプであるが、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、メタボリックシンドロームなどが原因で脂肪肝が生じてそれに酸化ストレスやエンドトキシンが加わるとNASHに至るとされている。インスリン抵抗性が病態の形成に関与している。

有病率は成人の3−5%程度と多い。

NASHは肝硬変や肝細胞癌へ進行する割合が低くないためNASHでは積極的な治療・フォローが必要。

◯いかにしてNASHを疑うか

様々なリスク評価因子がある

1,NAFIC スコア:フェリチン、空腹時インスリン、4型コラーゲンで評価する。

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2,BARDスコア

BMI≧28:1点

AST/ALT比率≧0.8:2点

2型糖尿病あり:1点

上記3つの項目で2点以上ならNASH疑い、1点以下ならNASHの確率は低い。

その他、FIB-4 indexやNAFLD fibrosis scoreなど特異度が更に高いスコアリングシステムもある。また、NAFLD fibrosis scoreはNAFLD除外目的としても有用。

特にNASHの強いリスク因子として4型コラーゲン7S≧5ng/ml、AST/ALT≧0.8があり、これら1つでも満たせばNASHを考慮して肝生検が考慮される。NASHで線維化が進行して肝硬変になればなるほどAST/ALT比率は上昇して肝硬変では1.4程度となる。

◯治療

・原因の除去

・肥満に対する治療(食生活の是正:カロリー制限、脂肪制限、糖質制限

・タンパク質:

・運動:7%以上の体重低下を目標、週3回の運動

・DMのないNASH患者ではビタミンE(ユベラ®800mg/day)とビオグリタゾン(アクトス®)30mg/dayが有意に感組織所見を改善させるというエビデンスがある(byNEJM)

◯予後

脂肪肝は可逆的で病因を除去できれば予後良好なことが多い。

・NASHに関しては肥満や生活習慣病の是正がなされない場合は約半数は進行性の経過をたどり、20〜30%は肝硬変へ進行し肝細胞癌リスクとなる。

脂肪肝の原因となりうる糖尿病などのコントロールが他の合併症を抑える意味で重要。