とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

血便の鑑別に関して まずはこれだけ

はじめに

血便は救急外来を受診する代表的な症状である。今回はその鑑別をまとめたいと思う。

  • 大腸癌

中高年に多く、無痛性の下血がみられたらまず疑う。下痢や便秘などの便通異常を伴うことも多い。左側結腸ではイレウス症状がでやすい。

高血圧や動脈硬化を背景として腸管膜動脈の狭窄をきたして虚血性の壊死をおこす炎症病変である。便秘が誘因となることもある。粘膜下出血をきたすのは粘膜下層や粘膜固有層の細い血管の閉塞、再灌流によるものである。他にも突然の腹痛を起こす。注腸造影で拇指圧痕像が重要。

  • 大腸憩室症

腸管内圧が上昇することで、粘膜+粘膜筋板のみが腸管壁の抵抗減弱部位より脱出して発生する仮性憩室。低繊維食をとる人に多く、日本よりアメリカの方が患者は多い。日本では7割が右側結腸に生じ、加齢とともに左側結腸にもみられるようになる。大量出血をすることがあるが、通常腹痛を伴わない。また、憩室は複数存在し、内視鏡で観察してもどれが出血源かわからないことが多い。直腸X線で壁より突出した類縁形のバリウム突出像で確定診断となる。

  • 内痔核

歯状線の口側に起こり、上直腸動脈流入部に一致する上直腸静脈叢の静脈瘤である。3、7、11時方向に告発。排便時に出血を伴うが、知覚神経が少ない部位なので痛みは伴わない。(外痔核では激しい痛みを伴うが出血は少ない。)

  • 偽膜性腸炎(薬剤性)

薬剤投与により細菌叢が変化することにより生じる腸炎。菌交代現象でC.difficileが大量増殖して毒素を産生。抗菌薬投与後2ー20日で水溶性下痢、腹部鈍痛、下部膨満感を生じる。粘血性になることもある。

  • 出血性腸炎(薬剤性)

合成ペニシリンなどの抗菌薬投与後数日で水様性(多くは血性)の下痢、腹痛をきたす疾患。いわゆる「トマトジュース状の血性下痢」。

直腸から始まり連続性に口側に向かう炎症性腸疾患。粘血便に加えて下痢が典型的な症状。一方、クローン病では一般的に粘血便陰性である。(便潜血は陽性)