とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

アルコール離脱せん妄についてまとめ

はじめに

アルコール依存者の入院はどこの医療機関でも経験するであるcommon diseaseであると言える。今回はアルコール依存患者で入院の際に特に問題となるアルコール離脱せん妄に関してまとめたいと思う。

アルコール離脱せん妄とは?分類など

アルコールを多量かつ長期に摂取していた人が、それを中断または減量した際に生じる離脱症状

その出現の時間的経過から早期離脱症候群(小離脱)と後期離脱症候群(大離脱)がある。

  • 1.1 早期離脱症候群(小離脱)

早期離脱症候群は飲酒中断後6時間を経過したころから出現し始め、24時間後頃にピークを持つ

自律神経過活動(発汗、高血圧、頻脈、粗大な振戦)、不快感情(イライラ、不安、焦燥)、消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)、一過性の幻覚(幻視、幻聴)、けいれん発作(強直間代)

などを認める。軽い見当識障害を認めることもある。通常、3~7日で治まる。

  • 1.2 後期離脱症候群(大離脱)

後期離脱症候群は、アルコール離脱せん妄と同義とされ、最終飲酒から48時間後から起き始め72~96時間後にピークを迎える。大抵1週間以内に症状は消退するが、まれに4~5週間遷延してしまうこともある。

前駆症状として不眠、振戦、恐怖などを認め、けいれん発作が先行することもある。見当識障害、幻覚(小動物幻視(虫などもある)、体感幻覚(虫が体を這う感じ))、妄想、自律神経過活動も通常存在し、意識レベルは日内変動し動揺性に経過する。時に職業せん妄(自身の職業に関連した動作)も認める。

  • 1.3 どのくらいの飲酒量で起こるのか

飲酒量でみると日本酒3合(ビール1.5L / 焼酎300mL / ワイン6杯に相当)以上を5年間毎日摂取している場合、より発症の可能性は高まる。以下の情報を確認。

最終飲酒時間、飲酒パターン(機会飲酒、晩酌、連続飲酒など)、飲酒量、アルコール離脱症状の既往歴

  • 2.1 栄養障害に対する治療

アルコール多量飲酒者は低栄養、脱水、肝障害を伴う場合が多い。採血、頭部画像などで評価し異常があった場合は補正する必要がある。特にウェルニッケ脳症の予防目的に積極的にビタミンBを予防投与する。

内服困難例:チアミン塩化物塩酸塩(アリナミン)50mg〜100mg静注

内服可能例:アリナミン糖衣錠25mg毎食後

  • 2.2  離脱せん妄に対する治療 別記事参照

・まとめ

アルコール依存患者患者の入院では、肝障害、低栄養に対するビタミン補充、離脱せん妄治療とその問題は多岐にわたる。主病名がアルコール依存でなくとも、別疾患でその対応も迫られる場合もあり、内科医であれば対応したい疾患である。