とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

頻尿・排尿困難に対する漢方薬処方

  • 良い適応となる状態

加齢に伴う下部尿路疾患、特に過活動膀胱や前立腺肥大症の初期病期と慢性膀胱炎が良い適応

処方前に押さえておくべきこと

・下部尿路症状には頻尿や排尿困難の他に尿意切迫感・尿失禁・残尿感・排尿痛などがあり重複が多く見られる。

・原因は加齢の他に心因性冷え性・更年期症候群・睡眠障害・多飲習慣・西洋薬の副作用など多岐にわたる。

・進行例では外科的処置や西洋薬治療を優先すべき疾患であることから漢方薬の限界や不適応病態も念頭に置く。

第一選択薬: 中高年の泌尿生殖器症状には八味地黄丸

第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?

八味地黄丸が有効な症例でさらに

→手足の冷え・しびれが強い場合:牛車腎気丸

→のぼせ感・ほてり感を訴える場合:六味丸

→胃腸虚弱で胃腸障害が出る場合:清心蓮子飲

→体力衰弱・寒がり・四肢冷感・胃腸虚弱が強い場合:真武湯

第二選択薬は清熱利水剤

→証は幅広く使用可能・発症1ヶ月以内:猪苓湯

→中間証〜やや虚証・発症1ヶ月以降・慢性化:猪苓湯合四物湯

→実証・急性〜慢性・痛みが比較的激しい:竜胆瀉肝湯

→中間証〜やや虚証・慢性・痛みが比較的軽い:五淋散

→虚証・慢性・冷え性で神経質・胃腸虚弱:清心蓮子飲

寒さで症状が増悪する場合

→虚証・冷え性で体質虚弱・手足足先の冷え:当帰四逆加呉茱萸生姜湯

→虚証・腰部〜歌詞の冷えと痛み:苓姜朮甘湯

→虚証・易疲労感・多数の変化する自律神経失調症状:加味逍遙散

→虚証・易疲労感・冷え性・貧血:当帰芍薬

→中間証〜やや実証・骨盤腔内静脈うっ滞症候群:桂枝茯苓丸

加齢に伴う脾虚気虚には補脾剤

→慢性疾患・体力低下+全身倦怠感+食欲不振:補中益気湯

補中益気湯の証に+貧血+冷え:十全大補湯

十全大補湯の証に+健忘+呼吸器症状:人参養栄湯