とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

肩こりに対する漢方薬処方

  • 良い適応となる状態

一般的な肩こりから頸肩腕症候群まで漢方は幅広く適応できる。

処方前に押さえておくべきこと

・長時間のスマートフォン操作やパソコン作業での悪い姿勢、椅子と机のアンバランスなどが背景にある場合も多いので改善をすすめる。悪い姿勢が習慣になっている人には鍼灸やマッサージ、整体なども有効なこともある。

・運動不足かどうか、入浴はシャワーだけなのかどうか、仕事中に休息やストレッチを取り入れているか、ショルダーバッグを肩にかける時の癖、マウスとテンキーで右手を多く負荷のかかるパソコン作業などの習慣も改善の余地あり。

・心的緊張で頸肩背が凝り固まっている例では心療内科的なアプローチが有効な場合もある。

第一選択薬:

・首の後ろから背中にかけてのこり:葛根湯

・頭重やめまい、結膜充血を伴う:釣藤散

・末梢循環障害・月経異常・のぼせ:桂枝茯苓丸

第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?

側頸部から肩にかけてのこり

→季肋部の抵抗・苦満感・体力あり・筋肉質・便秘:大柴胡湯

→季肋部の抵抗・苦満感・精神的症状・動悸・不眠:柴胡加竜骨牡蛎湯

→季肋部の抵抗・苦満感・精神的症状・腹直筋緊張:四逆散

→季肋部の抵抗・苦満感・体力中等度:小柴胡湯

循環障害・瘀血

→ほてり・多愁訴・感情不安定・便秘:加味逍遙散

→のぼせ・めまい・高血圧・顔色不良:七物降下湯

→手の痺れや痛み・四肢の冷え・頭痛:当帰四逆加呉茱萸生姜湯

→冷え・むくみ・月経障害・倦怠感:当帰芍薬

→肩関節痛・上腕痛:二朮湯

→多怒・不眠・腹直筋緊張:抑肝散加陳皮半夏

→咳嗽・胃腸虚弱:参蘇飲

→体力弱い・自汗・痛み・痺れ:桂枝加朮附湯