漢方処方ベスト20選 処方ランキング20を一気に列挙
漢方薬の種類は非常に多岐にわたり種類だけでも100種類を超える。
また1種類の漢方でも複数の症候に効果があり、その適応は厳密には決定されておらず効きそうな人に処方するという曖昧な適応となっているのが現状ではないだろうか。
今回はその非常に多種類の漢方薬の中から比較的良く使用されるものを20種類ピックアップした。漢方薬処方に慣れてない人にもまずはこの20種類から処方を初めてみてはいかがだろうか。
- 葛根湯(かっこんとう)
・風邪薬として有名だが全ての風邪に適応があるわけではない。
・自然発汗がなく、首筋のコリを認めるものに良い適応
・胃腸が極端に弱いもの、心血管系疾患、排尿障害、不眠などの訴えがあるものには不適。
・風邪以外にも肩こりにも頻用される。
・鼻水の排出量が少なく、鼻閉が強い場合に用いる。
具体的な適応
・ 風の初期(ひきはじめ1〜2日)に頭痛、発熱、首のこりがあるような場合
(広く知られる漢方薬ではあるがそれほど広く処方されてはいない。)
- 八味(地黄)丸(はちみじおうがん)
・主に中高年のもので、下半身の症状、腰痛、下肢の疼痛・しびれ・下肢の虚弱・泌尿生殖器症状(頻尿、排尿困難、陰萎など)、手掌・足底のほてりがあるものにはまず考慮すべき処方である。
・胃腸症状のあるものには注意する。服用後、胃腸症状の発現も少なくない。
具体的な適応
・体を温めることで、中高年によくみられる足腰などの慢性的な痛みやしびれの改善に用いられる。
- 小柴胡湯(しょうさいことう)
・熱性疾患ではやや遷延し、口が苦い・粘る、食思不振、弛張熱あるいは微熱、季肋部に抵抗・圧痛を認める場合に用いる。
・横隔膜をはさむ臓器、呼吸器や消化器疾患のほか、腎臓疾患にもよく用いられる。
- 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
・小柴胡湯と比べるとやや虚証に用いられる。
・特に上腹部痛あるいは下腹部痛を訴え、胸脇苦満と腹直筋緊張が認められる場合に良い
・各種機能性消化管障害、ストレス性の疾患に用いられる。
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
・気鬱に対する基本処方である
・抑うつ気分、不安感(特に予期不安)を目標に用いる。
・咽頭喉頭以上間に用いる代表的な処方であるが、咽頭喉頭ばかりでなく胸部あるいは上腹部のつまり間にも応用する。
- 五苓散(ごれいさん)
・水毒治療の代表処方である。
・口渇、多飲があるものの尿量が少ないことが目標となる。
・悪心・嘔吐(水逆といって水を飲むと大量の胃液を吐くことを繰り返す)、下痢、頭痛、めまいなどに用いる。
・特に低気圧が近づくと症状の悪化・出現が見られる場合に本処方を用いる。
具体的な適応
・子供〜大人にかけての急性腸炎、頭痛
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
・上気道感染の中でも、水様性分泌物(鼻水、喀痰など)を呈する場合に用いる。
・麻黄を含む処方で、喘鳴、呼吸困難を伴う例にも応用される。
・頻尿など冷えの症状が認められることが参考になる。
具体的な処方
・鼻水優位な風邪
- 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
・いわゆる水太り(筋肉の緊張が弱く、ぶよぶよとしたタイプの肥満)体質の者や多汗傾向にあり、浮腫、関節の腫脹・疼痛がみらレル場合に用いる。
・特に変形性膝関節症には第一に考える処方である。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・虚証で瘀血・水毒の者に用いる。
・華奢な体型で顔色が悪く、浮腫っぽく、冷えを訴える者に用いる。
・各種産婦人科疾患に用いる。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
・気の上衝と瘀血を兼ねた虚証の者に用いる。イライラ、抑うつ気分、のぼせの他に月経異常を認める場合に多用される。
・特に月経前症候群に対し用いる機会が多い。
・胸脇苦満と瘀血の腹証を参考にする。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりゅうがん)
・実証タイプの者に用いる。すなわち顔色が良く、複力があり、瘀血の腹証を目標とする。
・各種産婦人科疾患のほか、慢性に経過する病態、頑固な病態への応用を考えると良い。
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
・肩こり→頭痛→嘔吐というパターンで生じる頭痛には第一に考える処方である。
・一般に冷え性で、顔色が悪く、胃腸が弱いものが多い。
・頭痛がなくても、頑固な肩こりにも応用される。
具体的な適応
- 人参湯(にんじんとう)
・虚証で冷え症の上部および下部消化器症状(食欲不振、胃もたれ、下痢)を訴える者に用いる。
・冷えの存在を示唆する症状として、下痢のほか、尿量の増加、唾液貯留などがある。
- 猪苓湯(ちょれいとう)
・頻尿・残尿感・排尿痛を目標とする。
・その他に喉の渇き、浮腫に対し用いる。
・急性膀胱炎に頻用される他、熱を去る作用があるので、アトピー性皮膚炎などで顔色が赤い者に用いて良い場合がある。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
・参耆剤の中心処方である。
・疲労・倦怠感が強く、寝汗を訴える例、内臓下垂を認める場合にまず考慮される。
・軽度の胸脇苦満の存在も参考になる。
・虚証の慢性炎症性疾患に応用される
- 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
・補中益気湯と似ているが、血虚を伴う例に用いる。すなわち気血両虚の者に用いる。
・疲労・倦怠感・寝汗のほか、皮膚・粘膜の乾燥、血球成分の減少、冷えが強い例に用いる。
- 六君子湯(りっくんしとう)
・機能性胃腸症、中でも食後愁訴症候群の第一選択処方である。
・気虚治療の基本処方である四君子湯と水毒治療の基本処方である二陳湯とを合わせた処方である。
・上腹部の愁訴のほかに疲労・倦怠感などの気虚症状と悪心・嘔吐、めまいなど水毒の症状を兼ねた者に用いる。
- 麻子仁丸(ましにんがん)
・高齢者の便秘にまず用いる。
・大黄が配合されてはいるが、おだやかな作用を発揮することが多い。
・甘草を含まない処方であることも使いやすい理由の一つ。
具体的な処方
・高齢者の便秘
- 小建中湯(しょうけんちゅうとう)
・虚証で、疲労・倦怠感のほかに特に下部消化管症状(便秘異常、腹痛、腹部膨満)を認める者に用いる。
・特に膠飴を含む処方で、小児に使いやすい処方である。
・痩せ型で腹直筋緊張を認める場合が多い。
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
・虚証で特に下部消化管症状(便秘異常、腹痛、腹部膨満)、中でもガスペインによる腹痛に用いられる。
・イレウス、亜イレウスを繰り返す例、開腹術後の例に多用される。
・最近の研究では、消化管のみならず肝機能初見の改善作用も報告されている。