とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

CKD患者の専門医への紹介基準

はじめに

腎機能障害は日本でも多くの人が有する健康問題である。ただし、慢性の腎機能障害の治療のメインは進行抑制と合併症予防などに尽きる。そのため適切なタイミングで専門医への紹介が必要不可欠であり今回はその点についてまとめる。

CKDの治療の柱=末期腎不全へ至ることを予防する、かつ末期腎不全へ至る時間を遅らせる

CKD診療の役割診療科別の役割

CKD診療はステージによって治療内容が異なる。

CKDステージG3まではかかりつけ医による血圧や血糖の管理、生活習慣の是正など一般的な内科診療が中心

CKDステージG4、G5では専門医による合併症予防・管理、患者本人やご家族も交えた上での腎代替療法の選択や準備が中心となる

ただし実際にはCKDステージG4以降でもかかりつけ医が診療している場面が多い。本来専門医が中心となって診療する患者をかかりつけ医が診療することはかかりつけ医の負担を増加させるだけでなく、患者にとっても適切な治療タイミングを逃すことにつながるなどの問題があり紹介基準は把握しておく必要がある。

専門医への紹介基準

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018によると以下の3つ

・タンパク尿と血尿の両方を認める

・eGFR<45ml/min/1.73m2(stageG3b~G5)

・タンパク尿区分A3(尿蛋白0.5g/day以上)

加えて以下も

・40歳未満でeGFR<60

・タンパク区分A2でeGFR<60

特に3ヶ月以内に30%以上の腎機能の悪化を認める場合には早期に専門医へ紹介(特に急速な腎機能低下の場合、急性腎障害、急速進行性糸球体腎炎などの可能性もあり治療開始が遅れることは腎予後が不良となる)

紹介状作成のポイントと例

・CKDの原疾患(糖尿病性腎症か?)と治療期間

・腎機能の推移、尿検査の結果(タンパク尿・血尿)

・患者に腎代替療法について説明したか(特にステージG4以降であれば)

上記に加えて心血管疾患の既往歴や一般的な動脈硬化のリスクに関する既往歴(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙の有無、肥満、家族歴など)が重要

  • 実例(70歳男性の例)

紹介目的:CKD精査 既往歴:65歳より高血圧、68歳より2型糖尿病、脂質異常症

処方薬:〜〜〜

現病歴:65歳時より高血圧に対して治療を開始し、68歳の時より2型糖尿病に対しても治療を行なっている方です。2年前の定期血液検査でeGFR40と腎機能低下が進行しておりました。タンパク尿(±)、血尿はなく緩徐な進行であることからCKD(原疾患:腎硬化症疑い)の進行と考えております。透析導入についてはまだお話はしておりません。今後のCKD診療の方針についてご教授いただけましたら幸いです。お忙しい中恐縮ですが、ご高診のほどよろしくお願い申しげます。

Take home message

専門医に適切なタイミングで紹介するために以下3つ

・タンパク尿と血尿の両方を認める

・eGFR<45ml/min/1.73m2(stageG3b~G5)

・タンパク尿区分A3(尿蛋白0.5g/day以上)

おまけ