とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

心不全に対するフロセミドの腎機能への影響

はじめに

急性非代償性心不全患者における利尿剤使用の戦略。ループ利尿薬は持続投与でもショットでもどちらでも良い(治療に関しても副作用に関しても変わらない)。高用量だと腎機能は短期的にみえると悪くなりやすい。しかし2ヶ月後には戻ってる。

引用文献

  • 【背景】非代償性心不全患者において利尿剤は必要不可欠であるが、その使用方法における前向き研究はあまりされていない。
  • 【方法】前向き、ダブルブラインド、ランダム化比較試験。n=308人。

対象は:心不全の既往のある患者で、既に1ヶ月以上の利尿剤処方をされている人(フロセミド換算で80-240mgの間)

フロセミド静注を12時間毎に行うVS持続静注

フロセミド低用量VS高用量(低用量の2.5倍量)

(*低用量=もともと患者が処方されていた経口フロセミドと同容量)

エンドポイント:心不全徴候、72時間におけるvisual analogue scaleにおけるAUC、72時間の経過における血清クレアチニン値の変化

  • 【結果】

・フロセミドのショット投与と持続静注では患者の症状変化に差はなく、また血清クレアチニン値も有意差はなかった。低用量と高用量フロセミドの比較では、高用量だからといって患者のうっ血所見の優位な改善につながるわけではなかった。またクレアチニン値の変化も低用量と高用量フロセミドで差がなかった。高用量フロセミド戦略ではいくつかの二次評価項目で良い事があったが、一過性の腎機能増悪(worsening renal function:WRF)も認めた。*WRFは血清クレアチニンがベースより0.3mg/dl上昇すること

  • 【結論】急性心不全患者においてはフロセミドがショットであれ持続投与であれ、低用量投与であれ高用量投与であれ症状や腎機能変化に関しては有意差がなかった。
  • その他

・高用量フロセミドでは低用量フロセミド群に比べて入院72時間後のWRFの発現率が多かった。(23%VS14%、P=0.04)

・初回入院日と入院60日後ではクレアチニンとシスタチンCレベルは有意差がなかった。

→高用量フロセミドは短期的にはフロセミドは腎機能を悪くしえるが長期的にはそうではない。もちろん、高用量フロセミドでの腎機能悪化を繰り返すことが長期的には有害の可能性もあるが今回の研究からはそれはなんとも言えない。