とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

COPDについてまとめ まずはこれだけ

はじめに

COPDは高齢者の息切れ、喀痰を主訴とする慢性呼吸器症状の代表的疾患となり、病期分類、重症度、また治療もある程度確立しており今回はそれらについてまとめる。

診断手順

COPDの患者さんの主訴の多くが労作時呼吸困難感であるため、修正MRC(mMRC)質問票やCAT質問票などを用いて息切れ、QOLの評価を行う。

②気道可逆性検査(無処置とSABA吸入後の一秒量を比べる)を含めた呼吸機能検査を行う。一秒率が70%未満ならCOPDの可能性がある。喘息を合併することもあるので注意する。病歴から総合的にCOPDと診断する。

③胸部レントゲンやCTを撮影する。特に胸部HRCTで肺気腫が同定できればCOPDの確からしさはます。

④他の閉塞性疾患を除外し総合的にCOPDと診断できればCOPDの病期分類を行う。(GOLD分類)

⑤症状に応じて6分間歩行試験、動脈血液ガス分析を行い、現在の運動耐用能や呼吸不全の程度を把握する。

⑥海外では重症度分類が存在する。

COPD重症度分類byガイドライン

以下の通り、慢性症状の有無と%FEV1(吸った空気を一秒間でどのぐらい吐き出せるのか健常人に比べて何%かという値で気道制限を表す)で重症度判定を行う(なお、重症度判定に用いられるFEV1は気管支拡張薬投与後の値)。FEV1%(FEV1/FVC)は中等度以上では適切に重症度を反映しないので重症度分類には用いない。

  • ☆FEV1%と%FEV1の違い

FEV1%は一秒率のことで、努力肺活量のうちどれだけを1秒間で吐き出せたかの割合。

%FEV1は空気を一秒間でどのぐらい吐き出せるのか健常人に比べて何%かという値。

詳しくは→FEV1%と%FEV1の違い -つねぴーblog

以下COPD分類で有名なGOLD分類(気管支拡張薬投与後の一秒率で評価)

  • 0期:COPDリスク群

→スパイロメトリーは正常、慢性症状有り(咳嗽、喀痰)

  • Ⅰ期:軽度COPD

→FEV1%(FEV1/FVC)<70%、%FEV1≧80%、慢性症状の有無は問わない

  • Ⅱ期:中等度COPD

→FEV1%(FEV1/FVC)<70%、50%≦%FEV1<80%、慢性症状の有無を問わない

  • Ⅲ期:重症COPD

→FEV1%(FEV1/FVC)<70%、30%≦%FEV1<50%、慢性症状の有無を問わない

  • Ⅳ期:最重症COPD

→FEV1%(FEV1/FVC)<70%、30%≦%FEV1predictedあるいは

50%≦FEV1predictedかつ慢性呼吸不全あるいは右心不全合併

◯病期ごとの薬物治療

慢性期の薬物治療の目的は3つ:症状の緩和、肺機能の維持、急性増悪の予防

A期:有症状の時にSAMA頓用もしくはSABA頓用

(SAMA:アトロベントエアロゾル、SABA:メプチン)

B期:LAMA薬もしくはLABA

(LAMA:スピリーバ、LABA:オンブレス、ホクナリンテープ

C期:ICSに加えてLABAもしくはLA抗コリン薬

(ICS+LABA:シムビコート)

D期:ICSに加えてLABA もしくはLA抗コリン薬 (C期と同じ)

(商品名の例)

◯SAMA(short acting muscarinic antagonist;短時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬)

→例:アトロベントエアロゾル®

◯SABA(short acting β2 agonist:短時間作用型β刺激薬):

→例:メプチンエアー®

◯LAMA(long acting muscarinic antagonist;長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬)

→例:スピリーバ®レスピマット、スピリーバ®吸入用カプセル

◯LABA(longacting β2 agonist:長時間作用型β2刺激薬):

→例:オンブレス®、セレベント50ディスカス®、ホクナリンテープ®(経皮吸収型)

◯ICS(inhaled corticosteroid:吸入ステロイド)

→例:パルミコート®(由来:pulmo(肺、呼吸器で使う)+cort(コルチゾルステロイド

◯ICS+LABA

→例:シムビコート®(由来:Symbiosis (共生) + Cortisol (副腎皮質ホルモン))、アドエア®

◯LAMA+LABA

→例:ウルティブロ®(由来:究極を意味するUltimateと気管支拡張薬のBronchodilatorからウルティブロ)

ちなみに、COPDに対してはβ2刺激薬よりもムスカリン受容体拮抗薬の方が気管支拡張効果が大きいので初期治療にはスピリーバなどのLAMAを用いられることが多い。LABAはLAMAが使用できない患者やLAMA使用でも症状改善が乏しい患者に追加併用される。吸入ができなければLABAの貼り薬であるホクナリンテープを用いたりする。

Take home message

・長期管理薬はLAMA or LABA→LAMA/LABA→LAMA/LABA+ICSの順に使う

・喫煙歴を有する患者さんにおいて気管支拡張薬投与後の呼吸機能検査で一秒率(FEV1/FVC)が70%未満で、他の閉塞性肺疾患を除外できればCOPDと診断する。

・喫煙歴は詳細に聴取する必要がある。患者さんは吸っていない→過去に吸っていたなどは日常茶飯事である。

在宅酸素療法を続けたまま喫煙すると顔面に熱傷をきたすことがある。死亡例の報告もあるため必ず禁煙してもらう。