とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

気管支喘息を診断するには

はじめに

喘息には特徴的な症状がたくさん存在するがそのうち、どの項目を満たせば喘息と診断できるなどの診断基準はなく、症状から総合的に判断しなければならない。今回はどのような症状の時に喘息という診断に至るか、はたまた喘息の特徴的所見についてまとめる。

気管支喘息には所謂診断基準は存在せず、問診、既往歴、呼吸機能検査、抗原検査から総合的に判断しなければならない。故に喘息の診断は難しい。

診断基準はないが、診断の目安はガイドラインに記載されている。(GINA criteria)

  • 1,発作性の呼吸困難、喘鳴、胸部違和感、夜間や早朝の咳を繰り返す
  • 2,可逆性の気流制限

(呼吸機能検査で変動が見られる、気管支拡張薬による気道可逆性試験が陽性など)

  • 3、気道過敏性の亢進

(メサコリンやヒスタミンなどによる気道過敏性試験で1秒率がベースよりも20%以上低下)

  • 5、気道炎症の存在
  • 6、他の疾患の否定

◯6項目のうち何項目を満たしたら喘息と診断できるというものではない。

6番目の「他疾患の否定」という項目があるので類似した症状を呈する疾患の除外は必須である(例:COPD心不全、気管支拡張症、気管支炎に伴う喘鳴、感染後咳嗽、気管支閉塞病変、過換気症候群など)

◯また、症状を繰り返すということも喘息の特徴として重要なので、救急外来ではじめて喘鳴が出始めたなんていう患者が来た場合は安易に喘息疑いとするのは罪深い。

喘息を示唆する病歴と身体所見(感度と特異度)

どんな症状が喘息を疑う指標になるのか。その重要度合いメモ

【症状、検査】

喘鳴+呼吸困難:感度65.2%、特異度95.2%、陽性尤度比13.3

夜間呼吸困難:感度46.2%、特異度96%、陽性尤度比12

感冒の既往なく喘鳴:感度59.8%,特異度93.6%,陽性尤度比9.3

喘息の既往:感度70%、特異度94%、陽性尤度比3.3~∞

慢性気管支炎:感度12.5%,特異度98.2%,陽性尤度比6.9

喘鳴:感度74.7%、特異度87.3%、陽性尤度比5.9

慢性咳嗽:感度21.5%、特異度95.2%、陽性尤度比4.5

血中好酸球≧6.3%:感度21%、特異度100%、陽性尤度比∞

喀痰好酸球>3%:感度86%、特異度89%、陽性尤度比7.4

喀痰好酸球>1%;感度72%、特異度80%、陽性尤度比3.6

まとめると喘鳴があれば喘息を疑うが、特に呼吸困難を伴っていたり感冒の既往がなければその疑いは更に強まる。当然ながら既往の有無も大事。検査では採血や喀痰での好酸球上昇があればかなり可能性は高まる。