とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

鎮咳薬は本当に意味があるのか

はじめに

咳嗽を主訴に来院する患者は数多く、その受診動機は大きく2つに別れる。一つはは咳嗽が出ていることが何らか怖い病気ではないかと心配し原因検索をメインに希望する。もう一つは咳嗽が出ていることを何とか止めてほしい(社会的背景もあり)今回はこれらの症状に対して一般的に処方される薬のメジコンコデインに関してその効果の程を紹介する。

メジコンコデインの違い

・中枢性非麻薬性鎮咳薬

・適応:感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、上気道炎にともなう咳や、気管支造影術および気管支鏡検査時の咳の治療時

・中枢性麻薬性咳嗽薬

・適応:各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静疼痛時における鎮痛激しい下痢症状の改善

モルヒネと化学構造が似ており、モルヒネ同様呼吸抑制作用があるので注意。またモルヒネ同様、便秘や嘔吐などの副作用もある。連用により薬物依存を生じることがあるので退薬症状には注意する。

「薬のデギュスタシオン(岩田健太郎金芳堂)」によると急性咳嗽(症状出現から3週間以内のものを急性咳嗽という)に関しては以下のようなエビデンスがあるようだ。

メジコン30mg1回投与とプラセボ群を比較した研究には3つのRCT(ランダム化比較試験)があり1つではプラセボと同等、2つ目はプラセボより19-36%改善、3つ目はプラセボより12-17%改善としていると紹介されている。一方で、コデインに関しては2つのRCTがあるが、どちらもプラセボと比べて咳の改善度は同等であったととのこと。

副作用の強さを考えると麻薬性であるコデインの方が強力なイメージがあったが、急性咳嗽の症状緩和に関してはメジコンの方が有意であるようだ(が、それでも気持ち程度ではあるが)。咳を訴える患者にメジコンコデインを処方するのは効果を期待してというよりも、何かしてあげている感を出すためとも言えるのかもしれない…。

咳が8週間以上持続するような慢性咳嗽に関してはもう少し良いデータが報告されているが、急性にせよ慢性にせよ咳嗽を引き起こしている原疾患の治療が何よりも重要ということに変わりはない。