とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

縦隔気腫へのアプローチ

◯縦隔気腫とは

縦隔気腫とは何らかの原因により気管に小さな穴が開くことにより、本来なら空気の存在しない縦隔に空気が入り込むことを言う。自然気胸と同じように痩せ型の若年男性に多い。

原因としては胸痛発生時に胸腔内圧が上昇することが多い。気管支喘息で咳を繰り返している時、大声を出す、管楽器の演奏中など。原因が明らかにならない場合も少なくない。他にも頸部の外傷でも縦隔気腫は起こりうる。予後は非常に良好で多くが自然軽快する。

◯症状・身体所見

頸部〜前胸部痛が最も多い症状(頻度は少ないが背部痛や肩痛の場合もある)

呼吸困難や咽頭痛、声の変化を訴えることもある(咽頭痛は嚥下痛を伴うことがあり、咽頭炎と誤診されるケースもあるとのこと)。

触診で前頸部や鎖骨上窩に皮下気腫が触れないか(特に甲状軟骨と胸骨の間)

聴診でHamman's crunchが聴かれないか。

(*Hamman's crunchとは下部前胸部に心拍に同期した雪を握るような音を聴取することをいう。感度は低いが特異度は高く、聞こえたら縦隔気腫を強く示唆する)

◯検査

縦隔気腫を疑ったら胸部レントゲンを施行する。

また頸部の皮下気腫と咽頭後壁の縦隔気腫は頸椎側面レントゲンがわかりやすい。

縦隔から頸部に線状の気腫像が観られるのが典型的

【縦隔気腫の一例】

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画像参照:[解説] EMA症例33:10月症例 64歳男性 – 酔っぱらって吐いた?全くこれだから酔っぱらいは・・・ | EM Alliance

【縦隔気腫の一例 その2】

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画像参照:http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11538448043.html

【縦隔気腫の一例 その3】

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画像参照:http://tnagao.sblo.jp/category/991494-1.html

【縦隔気腫の一例 その4】

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画像参照:https://radiographica.com/pneumothorax/

◯治療・説明

縦隔気腫は多くの場合1,2週間で自然治癒する。力むような動作をしないようにアドバイスし、症状に応じて鎮痛薬を処方。症状あれば外来フォロー、軽ければフォローの必要もない。