とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

DKA/HHSの初期対応

血糖異常高値への初期対応

救急外来に来た患者の採血で血糖が異常に高かった場合(300以上)、初期対応はどうするべきか。異常高血糖をきたす病態として重要なものとしては糖尿病性ケトアシドーシスDKA)と高浸透圧高血糖症候群(HHS)がある。

DKAとHHSの違い

糖尿病性ケトアシードシースは高度なインスリン作用不足にインスリン拮抗ホルモンの上昇が加わって起こる病態。インスリンが作用しなくなると糖の代謝ができなくなり、代わりに脂肪代謝が進んで高血糖および著しいケトン体の蓄積が生じる。

病態の主座はインスリンの絶対欠乏、脱水、ケトアシドーシスである。1型糖尿病の患者がインスリンを中断したりした場合で起こりやすい。

一方、高浸透圧高血糖症候群はインスリン抵抗性に伴うインスリン作用不足とインスリン拮抗ホルモンの作用更新によって生じる病態。2型糖尿病の高齢者に多く、感染や脱水を景気に発症する。病態の主座は脱水であり、インスリンは完全に欠乏はしていない。よって糖の利用ができて脂肪の分解は進まないためケトアシドーシスはあっても軽度である。なぜ脱水が起こるのかと言うと、高齢者で口渇中枢が機能低下しており元から脱水が起こりやすいところにインスリンの作用不足が重なると血糖値が上昇して浸透圧利尿がかかる(尿中の糖分が増えると水を引っ張ってしまい尿量が増える)。故に脱水がますます進行してDKAよりも遥かに高血糖が進行する(800mg/dl以上)。

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・血糖が600以下であればDKAを示唆する。HHSの方が高くなりやすい。

・pHが7.3以下のアシドーシスであればDKA 

  • DKAとHHSを区別するべき理由

DKAとHHSでは病態が異なる。DKAインスリンの絶対的不足、HHSは脱水。

よってDKAであれば速やかにインスリンの持続投与が必要。場合によっては最初から速攻型インスリン(ヒューマリン®)0.1単位/kgを静注してから生理食塩水+インスリン持続静注を開始する。

逆に、HHSであればインスリンはある程度保たれているので、大量輸液だけでも血糖値はそれなりに改善される。電解質など評価してからインスリンを必要に応じて開始する(インスリンを入れるとカリウムが低下するため)。

よってDKAとHHSの初療ではインスリンを最初から使うかどうかという点で対応が変わるために、”異常高血糖”でアセスメントを終わらせずに病態を鑑別することが重要である。

DKAとHHSの初期対応

  • ●大量の生理食塩水輸液

DKA/HHSの患者では高頻度に脱水を伴っており、重症例であれば7〜10Lの脱水を伴っている。

もし患者がショックバイタルであれば生理食塩水を全開で投与。収縮期血圧100mmHg以上を目標にカテコラミンも併用する。

ショックバイタルでなく、心不全も無ければ1000ml/hのペースで輸液開始。次の2時間はスピード半減、更に次の4時間は更に半減としていく。

DKAでは血糖が200mg/dl、HHSでは血糖が300mg/dlとなれば5%ブドウ糖液+0.45%NACL(1号液)を150〜250ml/時に変更して改善するまで継続する。

・Na145mEq/L以上の場合は輸液時の生理食塩水を1/2生理食塩水に変更して投与。

・低カリウム時は20mEq/hの速度でKの補正を行う(インスリンを補充するとカリウムが低下する)。 カリウムが低い場合はインスリンよりもカリウム補充を優先。K<3.3のときにはインスリン投与は行わない。

前述の通り、DKAであれば輸液と同時にインスリン開始。

HHSの場合、脱水と電解質を補正してからインスリン開始。

・速攻型インスリン(ヒューマリン)の持続静注

まず、速攻型インスリン0.1単位/kgで静注(50kgの場合なら5単位をまず急速静注)。

続いて点滴内に速攻型インスリンを0.1単位/kg/時間で加える(このとき、1時間で血糖低下が50mg/dl以下ならば倍量に変更。、1時間で血糖低下が100mg/dl以上ならば0.5〜1単位ずつ減量)。

血糖値が250〜300程度まで落ち着いたら基本輸液をブドウ糖含有低張電解質輸液に変更する。また、インスリンの持続静注も0.025-0.05単位/kg/時程度まで減量して血糖値200台で均衡が取れるようにする。