とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

高K血症への対応 これだけ

はじめに

カリウム血症をみたらどうするか?電解質異常の中でも特に不整脈の原因となったりするK異常はしっかりとした補正が必要。高K血症では迅速な対応が必要であるのに対して低KでもCVの挿入を検討したりその初動は患者さんの生命予後を左右するだろう。今回は高Kに出くわした時の対応についてまとめる。

1,まずはバイタルチェック。

カリウム血症では徐脈を引き起こす(この原因は洞調律の消失による房室接合部調律。)必要になるかどうかは別としてペーシングの準備をすぐに指示する。

2,次に心電図チェック

P波消失、テント状T波、QRS増高、サインカーブが現れていないかどうか。

特に大事なのがP波の消失。P波が消える=洞調律の消失→徐脈→急変となりうる。

国試の時はこんなゴロで覚えました…。

  • ゴロ:借り上げテントで長く暮らす北京

借り上げ:高カリウム

テント:テント状T

長くQRS:QRSの増大

ぺきん:Pきえる

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画像参照元http://takamidai-clinic.com/?p=19209

3,血液ガスでアシドーシスないかチェック

4,重症度に応じて対応。

軽症の高カリウム血症の場合(血清K5-6mEq/dl)

原疾患の治療、K含有食品の中止。

それでも上がる場合はフロセミド、ケイキサレート®、カリメート®などで対応

・中等症〜重症の高カリウム血症の場合(心電図変化がある場合やK>7mEq/dl以上の場合)

  • ⭕カルチコール5ml or 10ml製剤

8.5%カルチコール®(グルコン酸カルシウム)10ml1Aを5分かけて静注。グルコン酸カルシウムには細胞膜安定化作用があり不整脈予防効果がある。(K値を下げる働きはない。)

効果は1−3分ほどで現れ、30〜60分持続する。

投与5分後に心電図所見の改善がなければ再投与する。

カルチコール®5ml1A採用の病院もあるが、その場合1Aだけでは効果乏しい可能性もあるので1A入れて安心しない。トータル20ml程度入れることもある。

心電図をモニタリングしつつ、心電図変化が再度出現したら再投与。

(ただし、ジギタリス中毒による高K血症にグルコン酸カルシウムは禁忌!ジギタリス中毒が増悪する。

インスリンカリウムを細胞内に引っ張る作用がある。が、血糖が下がりすぎても困るのでグルコースも一緒に投与。

10%ブドウ糖500ml+ヒューマリン®10単位を30〜60分で静脈注射。

時間100mlペース〜200mlペース。緊急事態ではちんたら投与しててはいけない。

ブドウ糖インスリン=5:1の計算。中心静脈栄養のブドウ糖インスリン比率に近い)30分程で効果現れる。

50%ブドウ糖50ml+ヒューマリン10単位 5分かけて静注(低血糖のリスクがあるため20分ごとに血糖を確認。低血糖が予想される場合は続けて10%ブドウ糖液500mlを50〜75ml/hrで投与しておいても良い)

Kの尿中排泄を期待して使用。2A、3Aでも使用。脱水にならないように生理食塩水500ml〜1000ml負荷など併せて行う。

  • ⭕メイロン®

代謝性アシドーシスがあるときは検討。20〜50mEqを静注する。(8.4%メイロン20mEq/20mlなら1〜2.5A)。ただし、Ca製剤(カルチコール)と沈殿するのでルートを別にする!

7%メイロンであればBE×体重×0.3/0.83 mlを投与する

ケイキサレート®(もしくはカリメート®)30gを水50mlに溶かして経口投与。1−2時間程度で効果現れる。

速効で最も確実。腎機能悪い場合は要検討。

***初期対応後のフォロー***

カルチコールは不整脈予防にはなるが血中カリウムを下げる効果はない。

GI療法は一時的に細胞内にKを入れるがまたリバウンドがある。

・GI療法の1時間後にK値の推移と低血糖の有無ないかチェック。

・GI療法の4−6時間後には徐々に細胞内のKが血管に出てきて再度高カリウムになるので一度カリウム低下を確認していても必ず数時間後には再検する。