とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

肺炎に対してCTを撮影する意義はあるか?

肺炎に対してCTを撮る意義はあるか?

はじめに

肺炎診断に胸部CTは必須ではない。しかし臨床の場面によっては胸部CTを撮影しておく場面もあり、特にどのような場面で必要と考えるか。また肺炎が疑われる患者において胸部CTの適応は?ということに関して今回はまとめる。

肺炎の診断は

◯臨床症状(咳、痰、呼吸苦など)

◯血液検査(WBCCRPなど炎症反応の上昇)

◯画像検査(X線やCTでの肺炎像)

◯抗原検査(肺炎特異的な尿中抗原、喀痰抗原)

これらの要素より総合的に判断して診断を行う。そのため画像検査としてはCTは必須でなく、レントゲンで肺炎像が認められれば肺炎の診断となる。

CTの方が感度がレントゲンよりも高いが、CTで評価することによって肺炎患者の死亡率が低下するというエビデンスはない。コストと被爆の観点から肺炎診断の第一選択はレントゲンである。

肺炎を疑う状況でCTを撮影するタイミング

1,単純レントゲンで肺炎像が見られない場合

2,すりガラス影、結節影、空洞性病変、びまん性陰影などがあり、一般的な市中肺炎ではない場合

3,血痰がある

4,肺炎以外にも心不全など他の病態も考えられる場合

5,レントゲンで胸水貯留や空洞病変が見られる場合

6,肺炎を疑うが肺がんなど他の基礎疾患の存在も疑われる場合

結核を疑うタイミング

肺炎疑いの際のレントゲン撮影

ここまで肺炎に対してCTを撮影すべきタイミングを論じてきたが、もちろん胸部レントゲンだけで一般的な市中肺炎は診断できる。ただし胸部レントゲンでは感度を高めるために正面像、側面像の2方向が必要である。側面像は心陰影の裏や横隔膜の裏なども理論上見ることができ診断感度を上げることができるとされる。

ただしレントゲンだけでは診断が困難な場合もあることに加えて、上記に上げたようなCTを撮影するべきタイミングではやはり可能な限りCTも撮影した方がいいだろう。

特に高齢者などで立位や座位不可の患者でもCT撮影のハードルは下がるため高齢者ではCT firstでもよいだろう。しかしこの場合でも可能であればレントゲンを撮影すべきである。フォローの画像評価を行う場合に毎回CTを撮影することはコストの面でも現実的ではなく、レントゲンのほうが望ましいと考えられるため。

ここまでをまとめると次のようになる。

若年者や立位・もしくはストレッチャーで座位になれるような患者であれば側面像撮影が可能であるが(厳密に言えば、両手が被らないように両側上肢を挙上できる患者のみ)、高齢者でストレッチャーから動けないような患者の場合は側臥位は不可能に近いので臥位の正面レントゲンのみで隠れた肺炎像を見逃す可能性が高くなる。こういうときも胸部CTの適応と考えられる。(しかし、CT撮影の判断はいつでもできるので、上記のCTを取るべき状況1の「肺炎を疑ったが、単純レントゲンで肺炎像が見られない場合」にのっとりその後CTをオーダーするという形でも良いと思う。

*CTの方がもちろん肺炎像はわかりやすいが肺炎の診断という点においてはそれ以上の情報はない。例えば原因微生物をCTから判断することなどは出来ないのである。以前は大葉性肺炎か気管支肺炎で原因菌を推定できると考えられていたが現在では否定されている。原因菌の推定には喀痰抗原や喀痰培養を用いる他ない。