とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点(BLNARを考える)

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点

はじめに

SBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)は基本的にはCTRX(ロセフィン/セフトリアキソン)よりカバーする細菌は多い。嫌気性菌にも効くのがSBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)である。しかしCTRXの方がある菌には効く場合がある。それはBLNARである。今回はBLNARについてまとめる。

BLNARとはインフルエンザ菌の一種

◯βラクタムに耐性の持ったインフルエンザ菌の出現

インフルエンザ菌とはグラム陰性の球桿菌の一種で肺炎、中耳炎、副鼻腔炎など様々な感染症を引き起こす。第一選択薬はβラクタム系のアンピシリンであるが、βラクタム系に耐性を持ったインフルエンザ菌が出現してきた(βラクタマーゼを産生しβラクタム環を破壊する)。

βラクタマーゼ産生能力を獲得したアンピシリン抵抗性のインフルエンザ菌についてはアンピシリンにスルバクタムというβラクタマーゼ阻害剤を一緒に投与して対応できていた。

◯βラクタマーゼ以外の方法でアンピシリン耐性を持つBLNAR

βラクタマーゼに頼らずともアンピシリン耐性を獲得するインフルエンザ菌が出現している。βラクタムの結合部位である細胞壁合成酵素(PBP)そのものを変化させたインフルエンザ菌である。つまりβラクタマーゼ陰性アンピシリン耐性菌(→BLNAR=β-lactamase negative ampicillin resistance)

BLNARが疑われる場合はペニシリン系ではなくロセフィンなど第三世代セファロスポリンを用いるのが安全(βラクタマーゼ産生菌であってもBLNARであっても有効)。