肺炎に対する血液培養検査の意義(陽性率の低さからみる適応)
肺炎に対する血液培養検査の意義(陽性率の低さから見る適応)
はじめに
肺炎は一般的な感染症であり、発熱、呼吸不全を伴い場合によっては重症化、死にいたる疾患でもある。しかし市中肺炎に対して血液培養検査は行われる場合が多い反面、その陽性率は実臨床を経験している先生からすれば高くないと思われるだろう。ではなぜ肺炎に対して血液培養を提出するのか?この意義を今回は論じていく。
肺炎において血液培養はどういう時に必要なのだろうか
血液培養で市中肺炎の原因菌を特定できたのはたったの7%で、エンピリックな抗菌薬が効かずに抗菌薬の変更が必要になったのはわずかに0.4%という報告がある。
市中肺炎において血液培養をするメリット…
・正確に原因微生物を特定することが出来る
・他の熱源の可能性(例えばUTI、IEなど)を拾い上げることができる
血液培養がそこまで推奨されない理由
・肺炎の血液培養の陽性率がかなり低い(7%)
・血培陽性でも抗菌薬治療が変更になる確率が低い
(参考 Ann Emerg Med,46(5):393-400,2005)
どういう時に血液培養をすればよいのだろうか?
・米国感染症学会のATSガイドラインでは「ICUに入室するような重症患者で血液培養は必須」 と提言され、ICUに入室しない症例でも必要であれ考慮するべきとされている。
・欧州のガイドラインでは「入院患者全例」への採取を推奨しているが、外来治療可能例に対しての血液培養は推奨していない。
・アメリカ市中肺炎ガイドラインでは次のような場合に血液培養を行うべきと書かれている。
(参考:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17278083)
【市中肺炎における血液培養の適応】
・アルコール多飲患者
・空洞形成のある肺炎
・肝不全患者
・脾臓摘出者
・胸水貯留の患者
・肺炎球菌尿中抗原陽性
・白血球減少(重度の肺炎では白血球減少する)
結局何を基準にすれば良いのか迷ってしまうところではあるが、重症もしくは重症化しそうな肺炎および上記の基準のいずれかに当てはまる症例においては全例血液培養施行。それ以外の軽症肺炎であれば血液培養施行しても良いが、施行しなくてもガイドライン上非難されることはないはずであるが、現実的に入院患者には全例血液培養施行が一般的だと思われる。
肺炎における血液培養陽性率は7%と高くないので空振りに終わってしまうかもしれないが、もし陽性になった場合は菌血症として治療が必要になるし、喀痰がきちんと排泄できずに喀痰培養陰性になってしまう可能性もあることからやはり外来通院可能な軽症肺炎でない限りは血液培養をとっておいた方が安全なのかもしれない。