とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

Bell麻痺やRamsay Hunt症候群でのステロイドの使い方

はじめに

Bell麻痺やRamsay Hunt症候群は治療が遅れたり、失敗したりすると顔面神経麻痺などを残す。そのため機能予後の観点から疑えば、経過観察という選択肢はない。しかし治療に際して比較的高用量のステロイドを使用することが多いため治療を躊躇してしまう医師も少なくないであろう。そのため今回はBell麻痺、Ramsay Hunt症候群を疑った時の対応についてまとめる。

Bell麻痺

概要

顔面神経系の膝神経節に潜伏感染したヘルペスウイルスによる再活性化によって生じる。ウイルス性神経炎による神経浮腫と骨性顔面神経管内における神経の圧迫、循環不全により顔面神経の麻痺が起きる状態である。

症状は48時間以内に最大となり予後を改善するためにできるだけ早期にステロイドを使用する必要がある。

・Bell麻痺治療の実際

日本とアメリカでステロイド投与方法が異なる

  日本神経治療学会 アメリカ神経学会
投与時期 発症3日以内、遅くても10日以内 できるだけ早期に
ステロイドの種類 プレドニゾロン プレドニゾロン
投与法 ・1mg/kg/dayもしくは60mg/dayを5〜7日間。その後7日で漸減中止。・中等度以下の高齢者であれば上記の量の半量から開始。漸減中止は同じ。 ・60mg/dayを5日間その後5日かけて漸減中止・1回25mg1日2回を10日間投与

上記表のステロイド投与に加えて抗ウイルス薬の投与が神経希望予後に改善させると言われている。可能な限り抗ウイルス薬を併用する。

処方例:プレドニゾロン5mg 1mg/kg/day朝食後*7日間その後7日かけて漸減中止。ステロイド投与開始と同時に抗ウイルス薬(アシクロビルもしくはバラシクロビル)7日間併用。

Ramsay Hunt 症候群

概要

帯状疱疹ウイルスが原因で末梢性顔面神経麻痺顔が起きる。耳介と外耳道の帯状疱疹+顔面神経麻痺、耳介と外耳道の帯状疱疹+顔面神経麻痺+聴神経症状(聴力低下、めまいなど)のどちらかを満たすものをRamsay Hunt症候群と定義する。患者の14%が皮疹に先行して顔面神経麻痺をきたすためBell麻痺との鑑別が困難な場合があるが治療はBell麻痺と同じなのでそこまで実臨床では困らない?

またこれらに追加でビタミンB12は神経再生を助ける働きもあるので投与を考慮しても良い。また顔面神経麻痺により兎眼となる症例もあり眼帯や点眼保湿も考慮する。