- 良い適応となる状態
機能性胃腸症、特に食後愁訴症候群が漢方治療の良い適応となる代表的な疾患である。
処方前に押さえておくべきこと
・臨床上、機能性消化管障害においてはオーバーラップを認めることが多いとされる。
・食後愁訴症候群と心窩部痛症候群、あるいはこれらと過敏性腸症候群とのオーバーラップが多く見られる。
・漢方治療ではこうしたオーバーラップ症例に対しても1つの処方で対処可能な場合があるのが特徴でもある。
第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?
体力なし・腹力弱い
→やせが強い:四君子湯
→げり・尿量が多い・唾液がたまる:人参湯
→心窩部痛・胸焼け:安中散
→ゲップが多い:茯苓飲
→弱い季肋部の抵抗・苦満感・腹部大動脈拍動亢進:柴胡桂枝乾姜湯
体力中等度ないしそれ以上
→食べ過ぎによって起こったもの:平胃散
→心窩部の抵抗・苦満感強い・苦味に耐えられる・下痢:半夏瀉心湯
→上記に似るが心窩部痛あり:黄連湯
→季肋部の抵抗・苦満感あり・口の苦味・粘り:小柴胡湯
→季肋部の抵抗・苦満感あり・腹直筋緊張:四逆散
→季肋部の抵抗・苦満感が強い・便秘:大柴胡湯
- 胃もたれとは?なぜ起こる?
・胃もたれは食べた後いつまでも胃に食物が残っている感覚。
・普通の食事でもすぐにお腹が張って食べられなくなるという症状(早期膨満感)を同時に訴えることも少なくない。早期膨満感は胃の受容性弛緩の障害、食後のもたれ感は胃排出能の低下という胃の運動機能障害として理解されている。
・これら2症状は機能性胃腸症のうち食後愁訴症候群の診断基準に載るもので時に胃がんなどもあり、器質的疾患、悪性腫瘍の除外が重要である。