風邪診療について 局所臓器症状不明瞭・高熱のみ型 後編
熱源不明の患者でチェックすべき部位とポイント
結膜 | 結膜炎(咽頭結膜熱など)、黄疸(胆道感染)、点状出血(感染性心内膜炎)、充血(レプトスピラなど) |
両上顎の圧痛の有無 | 副鼻腔炎では圧痛ではなく左右左程度のことも多い |
口腔・咽頭・頬粘膜・軟口蓋・扁桃 | 発赤、滲出液、発疹、後鼻漏、腫大などをチェック歯肉痛:歯、歯肉の視診と歯牙の打診(歯髄炎)耳痛:耳鏡(中耳炎)、頭痛:頭皮(蜂窩織炎、帯状疱疹)耳鏡、neck flexion test jolt accentuation of headache |
頸部リンパ節 | 後頸部リンパ節の腫脹→全身性疾患 |
甲状腺 | 圧痛(亜急性甲状腺炎など) |
呼吸音 | 両側下肺背側で聴診に集中!肺炎の好発部位かすかなwheezeには強制呼気で評価を |
心雑音 | 発熱のみのケースでは感染性心内膜炎の可能性 |
腹部の視診・聴診・打診・触診 | 腹部症状があるとき。季肋部の叩打痛は左右差を聞く。(肝臓、胆道系) |
腰部の打診 | 発熱のみの場合には必須。CVA叩打痛は左右差を。脊柱叩打痛(骨髄炎、硬膜外膿腫など) |
発疹の有無 | 見えないところの蜂窩織炎では患者が気づかない時が多い。 |
関節 | 腫脹と動かした時の痛みがないかチェック(化膿性関節炎、偽痛風など) |
触診、ジギタール | 前立腺炎、肛門周囲膿瘍など |
急性腎盂腎炎の疑う上でのポイント
・CVA叩打痛は左右での違いを聞く
・背部痛→背中が重だるいとか、違和感はないか?
・先行する膀胱炎症状がない=腎盂腎炎ではない とは言えない(逆にないことが多い)
・明らかに腰背部の痛みを訴える場合には尿路結石による複雑性尿路感染の有無や腎膿瘍の有無をエコーもしくはCTなどから早期にチェックするべき
・膿尿がはっきりしない腎盂腎炎もある(尿管の完全閉塞・腎膿瘍の場合など)
・CTでの腎臓周囲の脂肪織濃度の上昇は感度72%、特異度71%、陽性尤度比2.5。偽陽性が多いことに注意
発熱+腰背部痛=腎盂腎炎疑いに加えて
- 骨髄炎 ② 腸腰筋膿瘍 ③ 硬膜外膿瘍 も鑑別に上がってくる。
- 急性前立腺炎を疑うときのコツ
・病歴で排尿障害がはっきりしなくても良い
・直腸診の際はついでに肛門周囲の発赤・圧痛(肛門周囲膿瘍)の有無をチェック
- 肝膿瘍、化膿性胆管炎を疑う時のコツ
・季肋部叩打痛は左右差を聞くように
・Charcotの3徴は揃わないことが多い(全て陽性は50%程度)
- 感染性心内膜炎を疑う時のコツ
・Peripheral sign(抹消塞栓症状)はないことが多い(どれも感度が10%、特異度は90%)
・心雑音も聞こえにくいことが多い(感度は50%程度)
・発熱以外の症状はどれも感度が悪い
・感染症が原因ではない心不全患者の体温は35.8度と覚える(末梢循環不全や冷や汗のため低く出るのが普通)
・心不全患者の微熱(37度)は感染を伴っていると考えておいた方が良い(多くは肺炎)
- カテーテル関連血流感染(CRBSI)
・CRBSIは外来でも外来化学療法などでも起こる可能性はある
・カテーテルやポートが入っている患者さんでは刺入部の所見がなくてもCRBSIは除外できない。
ウイルス感染症で高熱(3日以上)をきたすものを知る
・通常のウイルス感染で成人が3日以上38度以上の発熱が出るのは普通ではない。
・成人の場合ウイルス感染症であったとしても3日以上続く場合は「診断がつくウイルス感染であることが多い」
成人で高熱をきたすウイルス
・インフルエンザ
・ヘルペスウイルス
・麻疹ウイルス
・パルボウイルス
やや全身状態が悪い高熱のみの患者さんの対応
・ややぐったり
・来院時すでに高熱が数日以上持続
・高齢者など基礎疾患がある
→このような場合は明らかな気道症状や尿路症状がなくても最も頻度が高い肺炎、尿路感染は調べておくべき。(胸部レントゲン+尿検査)