とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

風邪診療 咳症状メインの感冒症状に対するアプローチ

咳症状で受診しうる最も多い疾患は気管支炎であり、90%以上が非細菌性で5〜10%がマイコプラズマクラミジア、百日咳菌などと言われている。

解剖学的下気道:気管支以下

臨床学的下気道:肺以下

気管支炎で最も多いのはウイルス性の気管支炎で抗菌薬を必要としないself-limitedな感染症であり、いわゆる風邪(ウイルス性上気道感染)の一つである。よって気管支炎は解剖学的には下気道であるが、臨床的には上気道感染の一つといえる。ここで臨床の現場で困ることは抗菌薬が必要な肺炎なのか、必要のない気管支炎なのかということである。

米国内科学会(American College of Physicians:ACP)は以下の指針を出している・

「肺の基礎疾患がなければ肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラカタラーリスが急性気管支炎を起こすというエビデンスはない」

→「肺に基礎疾患がない人に気管支炎という病名で肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラカタラーリスを狙った抗菌薬を処方することは原則ありえない」

→高齢者やCOPDなどの肺に基礎疾患がある患者ではこの限りではなく気管支炎でもインフルエンザ桿菌、モラクセラカタラーリスなどが悪さをすることはあり、それを狙った抗菌薬処方はありうる。

じゃあ気管支炎と肺炎の違い、鑑別は?

伝統的に胸部X線で陰影がある→肺炎。陰影がない→気管支炎

ただしこれでは肺炎を見逃してしまう。

肺炎なのに胸部X線で肺炎像を認めない場合

・好中球減少(FN状態)

・脱水

COPDなどで肺実質が少ない

(・見逃しもしくは気管支炎だったが肺の基礎疾患のために肺炎に進行した場合)

上記の例のようにX線画像は100%ではない。そのためどこで抗菌薬を処方するかがポイント!

その回答の1つが「喀痰のグラム染色で貪食像がある」である。

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しかし忙しい外来診療で疑った場合に全てグラム染色をするのは困難、、、よってその線引きは

・悪寒戦慄を伴い38度以上の発熱と咳嗽を認める

・二峰性の病歴(明らかに先行する上気道症状の後に悪寒を伴う38度以上の発熱

・発熱が軽度であっても高齢者や肺基礎疾患を有する人の気道症状に加えて寝汗などがある場合。

慢性咳嗽診断のコツ

 慢性咳嗽(3週間以上続く咳嗽)の3大原因としては咳喘息、後鼻漏(上気道咳嗽症候群)、GERD。もっと細かく列挙すると

・気管支炎後咳症候群(気管支炎は気道粘膜の炎症・浮腫が4週間程度続くと言われている)

・後鼻漏(upper airway cough syndrome) ・結核 ・咳喘息 ・GERD ・百日咳 ・ACE阻害薬 ・肺癌

圧倒的に先行する風邪症状がある場合が多く、気管支炎後咳症候群(気管支炎は気道粘膜の炎症・浮腫が4週間程度続くと言われている)、後鼻漏(upper airway cough syndrome)であることが多い。しかし日本ではまだまだ結核が多いことも3週間以上続く咳であれば抗酸菌、胸部X線検査を施行することを考える。