とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

骨粗鬆症の治療薬まとめ

はじめに

日本は超高齢化社会であり、高齢化に伴い骨粗鬆症患者は増加の一途をたどっている。現在骨粗鬆症と言われる人は約1300万人と推計されている。骨粗鬆症の問題は脆弱性骨折が増加し、椎体骨折や大腿骨頸部骨折などからQOLの低下、寝たきり、ひいては死亡にまで至る予後の悪い疾患と考えて間違いない。そのため骨粗鬆症治療および脆弱性骨折の予防はかなり大切な分野と言えるだろう。

骨粗鬆症には2種類ある。

加齢や閉経に伴う原発性と何かの疾患や状態に伴う続発性だ。

続発性骨粗鬆症の原因疾患を以下にまとめる。

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骨粗鬆症治療開始の流れ

*FRAXとは?→40〜90歳の患者で10年後の大腿骨骨折のリスクと主な骨粗鬆症性骨折(脊椎、股関節、上腕、前腕)リスクを予測するツール(https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/

DXAがなくても計算できるがDHAを測定している方がより正確にリスクを見積もることができる。FRAXの値には大腿骨の値を使用する。またリスク因子であるPSLは2.5~7.5を前提としており7.5mg以上内服している場合には主な骨粗鬆性骨折では15%、大腿骨骨折では20%のリスクを測定結果に上乗せする必要がある。

骨密度(Bone mineral density : BMD)の評価はdual-energy x-rayabsorptiometry(DXA)で行う。できれば腰椎と大腿骨近位部(左右どちらでも良い)の両者を測定し複数部位で測定した場合はより低い値を結果として用いる。ただし高齢者では腰椎圧迫骨折などで結果が一見正常に見えてしまうことがある。大腿骨では大腿骨頸部の骨密度を使用しウォード三角部の骨密度は診断に使用しないことに注意する。

それぞれの薬の種類と特徴

ビタミンDとカルシウム製剤

骨粗鬆症の治療を開始する際には十分量のビタミンDとカルシウムが補充されていることが必要。米国医学研究所はカルシウムを1日1000〜1200mg、ビタミンDを1日800IU(1IU=0.025μg)摂取することを推奨している。可能な限り食事で摂取してもらい、不足分を製剤で補う。高カルシウムをきたさないために定期的に血液検査を行う。ちなみにビタミンDとカルシウム製剤のみでは骨折リスクが下がるというデータはない。

・ビスホスホネート

効果、費用、安全性の観点から骨粗鬆症治療の主流となっている。破骨細胞を阻害して骨吸収を抑制する。

アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ゾレドロン酸は全て骨密度を改善し骨折のリスクを減少することが示されている。ビスホスホネートはCKD(eGFR<30)や食道疾患(アカラシア、食道狭窄、食道静脈瘤、バレット食道など)、内服後30〜60分間はまっすぐ座っておくという指示を守れない患者には禁忌。食道疾患や座位保持できない患者には点滴製剤を考慮する。副作用としては胃腸障害、稀なものとして顎骨壊死と非定型大腿骨骨折がある。

副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド)

テリパラチドは副甲状腺ホルモン作用をもつポリペプチドである。副甲状腺更新症などで血液中のPTHが持続的に上昇すると骨の李モデリングが亢進され骨量は減少するが間欠的にPTHを上昇させるとリモデリングの促進とともに骨量が上昇する。デメリットは高額であり、注射製剤であることから最初から使用することは少ない。重症の骨粗鬆症(T-score<3.5),T-score<2.5で脆弱性骨折の既往がある、他の骨粗鬆症治療薬が使用できない、治療中にも骨折をきたすという場合に使用を考慮する。使用は2年以内に限る。

・デノスマブ

デノスマブは破骨細胞の分化や活性化に必要なサイトカインであるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κ B ligand)に対するヒト型モノクローナル抗体である。RANKLとその受容体であるRANKとの相互作用に競合することで骨吸収を抑制する。デノスマブの投与をやめると破骨細胞が再活性化し骨密度が急激に低下して椎体骨折のリスクが上昇するため6ヶ月ごとの投与を医療者は忘れてはいけない。デノスマブでの治療を止むを得ず中断する場合はビスホスホネートなどで治療を継続する。副作用としては低カルシウム血症がある。またビスホスホネートと同様に顎骨壊死や非定型大腿骨骨折の副作用があり注意が必要。

・SERM(selective estrogen receptor modular:選択的エストロゲン受容体モジュレーター)

ラロキシフェンはSERMの1つであり骨吸収を抑制し椎体骨折のリスクを減少させる。しかし非椎体骨折や大腿骨骨折のリスクを減少させる効果はなく血栓症の副作用もあることから第1選択薬とはなりえない。

高齢化社会の日本では内科に入院する患者には骨粗鬆症を合併している方も多い。入院時に骨粗鬆症についても考え骨折によるADL低下をきたさないように骨粗鬆症は治療可能であると普段から心がけておくことが重要である。

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