とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

ステロイドの副作用・予防

はじめに

ステロイドは非常に多種多様な副作用があり、副作用は必発といっても過言ではない。そこでステロイド投与中の患者には副作用を予防する治療が必要となってくる。そこで副作用の出現時期などを理解することは必要不可欠である。

副作用の出現時期

開始当日から 不眠、うつ、食欲亢進、
数日後から 血圧上昇、Na↑、K↓、浮腫、精神症状
2〜3週間後から 副腎抑制、コレステロール上昇、耐糖能異常、創傷治癒の遅延、ステロイド潰瘍
1ヶ月後から 易感染性、中心性肥満、多毛、ざ瘡、無月経
1ヶ月以上後から 紫斑、皮膚線条、皮膚萎縮、ステロイド筋症
長期的に 無菌性骨壊死、骨粗鬆症、圧迫骨折、白内障緑内障

1 不眠・精神症状

症状はステロイドの量に依存性である。不眠はステロイド開始直後から精神症状は数日〜10日後より出現する。特に高用量ステロイドでは多弁・多動などの気分高揚や躁症状が先行してからうつ症状へ移行する例が多い。ステロイド治療開始後「眠れていますか」「気分は落ち込んでいないですか」など積極的に質問することが必要。ステロイド精神病の治療は可能な限りステロイドの減量または中止である。原疾患の治療で中止や減量が難しい場合は精神科コンサルトで向精神病薬を使用する必要があるかもしれない。

2 続発性副腎不全

健常人ではプレドニゾロン換算で1日3〜5mgのステロイドホルモンが分泌されている。肺炎などの身体ストレス下では通常内因性ステロイドが放出されるがプレドニゾロン投与期間が3週間以上の患者ではHPA系が抑制されているためストレスに対応できない。高齢者では1日3〜5mgの長期内服でも相対的副腎不全をきたす可能性があり補充を検討する。

3 ステロイド骨粗鬆症

長期合併症として有名ではあるが最も骨量減少スピードが速いのはステロイド開始〜3ヶ月間である。具体的にはプレドニン5mg/日を3ヶ月以上の期間使用予定の閉経女性および50歳以上の男性は骨粗鬆症予防の適応となる。

危険因子を数値化してスコアが3点以上あれば治療対象となる。

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4 無菌性骨壊死

特発性大腿骨頭壊死とも呼ばれているがプレドニン15mg以上で特に治療初期に大量ステロイド投与された場合にはリスクが数倍になる。膝骨壊死や上腕骨頭壊死を併発している場合もある。ステロイド使用に加えて、アルコール依存や全身性エリテマトーデスが無菌性骨壊死のリスクである。急性の股関節痛や肩痛などを訴える。一度骨頭が潰れてしまうと元には戻らないため荷重をかけないように日常生活上の指導をしておくことが一番大切。治療はビスホスホネートが有用で、進行した例には人工骨頭置換術、人工関節置換術などを行う。

5 糖尿病・肥満

ステロイドによる糖尿病や肥満の原因はインスリン抵抗性が主であるたね空腹時血糖が正常なこともある。視床下部の食欲中枢を刺激して過食になりうるため食事料への注意も大事。定期的に血糖値をモニターしながら経口血糖効果薬を併用する。Cushing症候群と同じような用量および使用期間依存性にステロイド開始1、2ヶ月後から出現してきます。満月様顔貌と中心性肥満を特徴とする。

6 ニューモシスチス肺炎(PCP

ニューモシスチス肺炎はプレドニン20mgを1ヶ月以上使用する場合にリスクが高くなる。予防に一定の基準はない。予防の際にはST合剤(バクタ)1錠を内服する。皮疹などの副作用が強く継続が困難な場合にはアトバコン、ペンタミジン、ダプソンなどを使用する。

7 感染症

ステロイド用量依存性にリスクが高くなり特にプレドニゾロン10mg以上または積算投与量700mg以上ではリスクが上がると考えられている。

8 消化管潰瘍

ステロイドとNSAIDsの併用ではリスクが高い。ステロイド単剤ではそれほどリスクは高くないものの高齢者であったり、絶食などストレスがあれば投与開始でいいと考える。