とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

同効薬の使い分け 循環器編

はじめに

 循環器領域では急性期・慢性期共に病態に応じた薬剤選択が患者の転機改善に寄与する。近年高齢化により慢性腎臓病や動脈硬化疾患が並存する患者が多くここに応じた使い分けが必要である。また内服は長期間に必要となる場合が多くアドヒアランスの問題も十分考慮する必要がある。

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患者の背景を整理する。

循環器疾患では必然的に多くの並存疾患をもつ症例が多く治療期間も長期にわたるため多く細かい治療内容を把握する。特に抗血小板や抗凝固薬などは貧血合併の有無、消化管出血の有無の精査、スコアリングなどを用いた出血リスク評価も重要である。

聴取すべき内容

・冠危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、慢性腎臓病、家族歴)

・過去の心臓治療歴(心不全治療、入院歴、内服治療歴、検査・過去の心電図など)

・黒色弁の有無、動脈硬化性病変の有無、膠原病などの炎症性疾患の有無

急性期・慢性期・病態によるエビデンスの違いを意識する。

急性期:急性期心不全ではクリニカルシナリオが広く用いられているが、急性心不全の中心病態は後負荷増大であり、前負荷と後負荷を下げて1回拍出量を増大させる血管拡張薬は急性期治療の基本となる。硝酸薬、ニコランジル、カルペリチドなどが選択肢となりうる。

慢性期:慢性心不全では薬物療法のアウトカム・エビデンスが蓄積されており、その代表例としてACE阻害薬がある。1995年のメタ解析では駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction)患者においてACE阻害薬投与群で全脂肪の相対危険度が33%減少したという結果が出ている。

Medication adherenceを意識する。

循環器領域の内服薬は継続を前提とするものが多い。PCIにおける抗血小板薬など治療の維持に不可欠なものやRA系阻害薬やβ遮断薬など長期予後に関わる薬剤も多い。最近の研究ではTRED―HF試験で心機能が回復した拡張型心筋症にループ利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、RA阻害薬を順に中止したところ半数近くが中止後半年以内に拡張型心筋症を再発したことが報告されている。そのため薬剤の継続は大切であるが、継続性を高めるために医学的な背景のみならず社会的、経済的な背景も考慮する必要がある。