とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

がん緩和ケアブック神経ブロック治療について

神経ブロックについてのまとめ記事

はじめに

・がん疼痛を持つ患者の70〜90%はWHO方式がん疼痛治療法に沿った薬物療法でコントロールできると言われている。しかし鎮痛薬や鎮痛補助薬による副作用によるQOL低下が問題となる場合があり、患者の予後が長期になればその問題も大きくなる。そのため神経ブロックはそのような薬物を使わない治療法としてその重要性を増している。

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神経ブロックとは:局所麻酔薬の投与や神経破壊処置により神経の侵害入力の伝達を抑制・遮断することによって鎮痛効果を発揮する。

神経ブロックの適応

・既存の薬物療法で効果不十分、副作用で継続困難、薬物療法より神経ブロックの方が効果を期待できる、オピオイドがあまりに高容量で経済的負担が大きい場合などなど

神経ブロックを行う場合の全般的な注意点

以下に示すような合併症が起こる可能性がある。静脈路を確保するための静脈内留置針、輸液製剤、点滴セット、各種循環作動薬を準備しておくべきである。酸素投与、BVMによる人工呼吸ができる体制でするべき。

1)出血傾向の有無の確認

抗血小板薬や抗凝固薬の内服の有無を確認しておく必要がある。血液が凝固しにくい状況では神経ブロックを行うことは差し控えなければならない。これを無視して行うと深部に血腫ができて神経を圧迫したり、気道を閉塞したりなど重篤な合併症を誘発する可能性がある。

2)局所麻酔薬中毒への対応

局所麻酔薬を大量に使用した場合、局所麻酔薬が動脈内、静脈内などの血管内に注入された場合には局所麻酔薬中毒を発症する可能性がある。局所麻酔薬中毒の治療薬であるジアゼパムミダゾラムなどのベンゾジアゼピン誘導体またはチオペンタールチアミラールなどのバルビツール酸をすぐ使用できるように用意する。

3)神経原性ショック

痛み刺激により迷走神経反射がおこり、急激な徐脈、血圧低下などが起こる可能性がある。

4)アナフィラキシーショック

局所麻酔薬自体によるアレルギー反応、局所麻酔薬に添加されている薬物がアレルゲンとなる可能性がある。

5)神経損傷

針を刺す行為なので、針による神経損傷を起こす可能性がある。