がん緩和ケアガイドブックオピオイド導入〜副作用対策
オピオイド導入→副作用への対応
悪心への対応
はじめに
・悪心はオピオイド使用患者の30%に生じる1〜2週間以内に改善するが一旦出現するとオピオイド継続が困難となるので予防対策が必要。
評価のポイント
・悪心とオピオイド開始・増量との時間経過を確認する。
・高カルシウムや消化管閉塞、薬剤(NSAIDs、SSRI、ジギタリス、抗がん剤)などのオピオイド以外の原因を考慮する。
治療のポイント
・オピオイド以外の原因がある場合は原因の治療。
・多くは疼痛のためにオピオイドは減量せず、制吐薬の経口投与となる。
処方の仕方のコツ
動くと気持ち悪くなる→抗ヒスタミン薬(トラベルミン配合錠3錠分3毎食後)
食後に悪心がする→消化管蠕動促進薬(プリンペラン5mg3錠分3毎食後)
1日中悪心がある→D受容体拮抗薬(ノバミン5mg屯用、オランザピン2.5〜5mg寝る前)
治療目標
・3〜7日で評価する。悪心がなく経口摂取できることを目標とする。
・効果が不十分な場合は神経ブロックや放射線治療など他の鎮痛手段の併用を行いオピオイドを減量する。
便秘への対応
はじめに
・便秘はオピオイド使用中のほとんどの患者に生じる。オピオイドによる便秘には耐性が生じないため、オピオイド使用中は下剤の併用など継続的な対策が必要。
評価のポイント
・消化管閉塞や腸蠕動低下の原因となる薬剤がないかなどのオピオイド以外の原因を考える。
・大事なのは、ベンの硬さ、排便回数、腸蠕動音
治療のポイント
・オピオイド以外の原因があるならその解消。
・オピオイドの減量を考慮。
・下剤を投与(浸透圧性下剤:マグミット、モニラック、大腸刺激性下剤:センノシド、ピコスルファート)
・オピオイドによる便秘ならスインプロイク0.2mg 1錠朝内服を開始。
・使用中のオピオイドからフェンタニル系のオピオイドにスイッチする。
下剤処方時の注意点
・大腸刺激性下剤で腹痛を生じるときは使用を控え、浸透圧性下剤が十分に投与されているか確認。
・癌性腹膜炎の場合癒着や狭窄により蠕動を更新させることで腹痛が悪化することが多いので浸透圧性下剤を優先する。食事内容は低残渣がオススメ。浣腸、摘便なども適宜行う。
治療目標
・3〜7日間で評価する。患者が排便状況に満足しているかが重要。
・効果が不十分な場合はオピオイド以外の鎮痛効果を有する手段を講じてオピオイドの減量を行う。
眠気への対策
はじめに
・オピオイドによる眠気は開始もしくは増量に伴って生じる。耐性が速やかに生じて数日以内に自然軽減することが多い。
評価のポイント
・眠気が快適な患者もいる一方で不快な患者もいる。不快であれば対応を検討する。
・オピオイドの投与量が適切であるかを考える。
・呼吸回数が10回未満であればオピオイドによる呼吸抑制の可能性を考え減量する。
・薬剤(制吐薬など)、脳転移、高カルシウム、高血糖、腎機能障害モルヒネ蓄積、感染症、低酸素などオピオイド以外の眠気の原因を考える。
治療のポイント
・オピオイドの減量
・オピオイド以外であればその原因の除去。
治療目標
・3〜7日間で評価する。痛いと眠気のバランスで患者が望むことを目標に考慮する。
せん妄への対策
はじめに
・オピオイドによるせん妄は投与開始時期や増量期に出現することが多い。オピオイド以外の原因を必ず鑑別
評価のポイント
・薬剤(BZ系、ステロイド、抗うつ薬、H2ブロッカーなど)、高カルシウム、高血糖、腎機能障害、脱水、感染症、高アンモニア、低酸素、脳転移などの原因を考える。
治療のポイント
・オピオイド以外の原因の除去
・抗精神病薬(レスリン、ベルソムラ、リスペリドン、セレネースなどを考慮する)
治療目標
・・3〜7日間で評価する。せん妄の消失が目標。