がん緩和ケアガイドブックをコンパクトにまとめる記事 基本編
がん緩和ケアガイドブックまとめ②
症状マネジメント
痛みにおいて目標は3つ
第一目標:痛みによる不眠を解消して睡眠の確保
第二目標:安静時は痛みなく過ごしてもらう
第三目標:体動時の痛みを取ってあげる
WHO方式癌治療の5原則
- 経口投与を基本とする(by mouth)
・個々の患者にとって最も簡便な方法で使用
- 時刻を決めて定期的に投与する(by the clock)
・屯用のみ処方はせず、定期投与薬を処方
- ラダーに沿った薬剤選択(by the ladder)
・原則として非オピオイドをまず投与、効果不十分な場合はオピオイドを追加する。
・オピオイドは病状に対して投与量を選択するのではなく痛みの症状に応じて調整する。
・強い痛みには中等度〜強オピオイドから開始する。
- 患者ごとに個別的な量の設定(for the individual)
・望む効果と副作用の兼ね合い。オピオイドには上限量というものがない。
- 患者にあった細かい配慮をする(with attention to detail)
・オピオイドについての誤解を解く。
・適切な予防、定期投与の他にレスキューが内服可能であることを説明する。
痛みの評価、問診項目 OPQRST
O:Onset 発症様式 P:Provocative/ Palliative 増悪・寛解因子 Q: Quantity/ Quality 痛みの性質・程度
R: Region/ Radiation/ Related symptoms 部位・放散痛・関連(随伴)症状
S: Severity/vital Signs 重症度(Quantityにちょっとかぶる)
T: Time course/Treatment 経過/それまでに行った治療(NSAIDs内服した等)
これに加えて下記を聞くのも大事
・何が一番困っているか?
・夜は眠れているか?(痛みで眠れなくなっていないか)
・痛みは1日中ずっとありますか?それとも時々ぐっと痛くなりますか?
オピオイドの導入とタイトレーションについて
ポイント
・オピオイド導入時は定期投与、レスキュー、悪心・嘔吐、便秘の予防薬を投与
・NSAIDsやアセトアミノフェンは中止せずに基本的に併用使用する。
・錐体外路症状を避けるため制吐薬は悪心がなければ中止する。
・腎機能低下症例ではモルヒネ投与は避ける。(排泄されず濃度が上がってしまう)
例えば
悪心・嘔吐の対策としてノバミン5mg嘔気時4時間あけて1日3回まで
便秘薬としてスインプロイク0.2mg朝1錠
レスキュー薬の使い方として
内服薬は基本的に1時間ごと 回数制限なし 反復条件:呼吸回数10回以上
静脈注射の場合は1時間量をvolus15分開けて回数制限なし 反復条件:呼吸回数10回以上
ちなみにレスキュー薬は1日量の基本的に10〜20%と言われているが効くなら少量、効かないなら増量しても構わない。
定期オピオイドの増量
・悪心や眠気が生じない範囲で1日を通して痛みが軽くなるまでオピオイドを増量する。上限はない。
・増量間隔は1〜3日で効果判定して
オピオイド等換算表
オピオイド導入時の患者への説明例
「痛みに麻薬を使うと依存症になるのではないか、副作用が強いのではないかと心配される方は多いです。依存症は癌の痛みで使うときはほとんど起きないことが確認されています。他の薬と同じように副作用はありますが、腎臓や肝臓への障害は非常に少なく、主な副作用は便秘、吐き気、眠気です。便秘はほとんどの方で起こるので下剤で調整します。吐き気は3人に1人ぐらいで起きますがこれは胃が荒れて起こるのではなく薬の作用で起きる症状です。飲み始めの1週間くらいが強く出ますがその後は治りますのであらかじめ予防の薬を一緒に使っておきます。まれですが薬が全く合わないと幻覚が起きたり、極端に眠くなったりすることがあります。これは麻薬だから起きるのではなく神経に働く薬全てに起こりうる副作用で起きた場合でも中止すればすぐに元に戻ります。安全に医療用麻薬を使うことが可能ですので安心してください。痛みが取れて副作用もないように薬を調節していきましょう。
・強い痛み止めという曖昧な説明ではなくオピオイドは安全で有効な薬であることを説明する。
・癌患者に使った場合の依存症発症率は0.2%以下と言われている。
・オピオイドの使用量と生命予後に有意な相関は認められていない。