とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

オピオイドスイッチについて

初めてオピオイドスイッチするときはどうすれば良いのか?

オピオイドスイッチとは?

→なんらかの理由で現行使用しているオピオイドが継続困難になった場合に別の種類のオピオイドに変更すること。オピオイドは投与方法の違いや呼吸抑制などの副作用から種類を変更するだけでも一定以上の知識が必要となる。

適応 :副作用が強く、原行のオピオイドの増量・継続が困難な場合もしくは鎮痛効果が不十分な場合

フェンタニル貼付剤は血中濃度が上昇、低下するのに時間がかかるため初めての貼付は12〜24時間は疼痛の悪化を起こす場合がある。

特にモルヒネオキシコドンからフェンタニル貼付剤へ変更する場合は腸管抑制が減少するため、蠕動亢進を生じるため下剤の量の調整や蠕動痛の際にレスキューの使用が必要になる。オピオイドにより腸閉塞へ陥ってしまっている状態に貼付剤へのスイッチは蠕動痛が悪化する場合があり注意が必要。

・大量オピオイド(経口モルヒネ60mg/day以上)からのスイッチング→30〜50%ずつ置き換える。

・変更後の評価 疼痛悪化時:30%増量 眠気発現時:20%減量

オピオイド離脱症候群に対する予防対策

フェンタニルモルヒネオキシコドン:便秘、嘔気・嘔吐の可能性を考慮

モルヒネオキシコドンフェンタニル:下痢の可能性を考慮

ちなみにフェンタニルパッチは高用量になればなるほど吸収にばらつきが出るためローテーション時はⅠ〜2段階少ない量へのローテーションが適切

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症例

直腸癌終末期の48歳女性。多発骨転移がありオキシコドンⅠ回20mgⅠ日2回内服しレスキューとしてオキノーム5mgを複数回内服していた。2日前から嘔気嘔吐が出現し腸閉塞の診断で入院した。

担癌患者に何らかのイベントが生じた場合→まずは癌自体の進行・悪化、癌の緩和も含めた治療による副反応を鑑別に考える。

回答:入院後、経口摂取は困難であるが全身状態が安定したため自宅退院のため入院中にフェンタニル貼付剤へオピオイドスイッチを検討することとなった。

処方例:フェントステープⅠ回2mgⅠ日Ⅰ回

オキシコンチン40mg/日からオピオイドスイッチ

朝:オキシコンチンⅠ回20mg内服と同時にフェントステープⅠ回2mgを貼付

夕:オキシコンチン中止

レスキュー:オキノーム散Ⅰ回5mgまたはアンペック座薬Ⅰ回10mg

オキファスト注(オキシコドン持続皮下注射)30mg/日からのオピオイドスイッチ

フェントステープⅠ回2mgを貼付。6時間後にオキファスト注を1/2速度に減量。12時間後にオキファスト注を中止。

レスキュー:アンペック座薬Ⅰ回10mg