とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

風邪診療 鼻水が主症状の場合

はじめに

・鼻水を主症状とする場合、鼻症状メインの風邪かもしくはアレルギー鼻炎、細菌性副鼻腔炎の鑑別が必要となってくる。しかしこれらの疾患は初診で診断をつけて治療を開始しなくても、自然軽快したりそれほど重症にならないなどの点からそれほど重要視されるものではない。しかしどのような場合に抗菌薬を処方するかなど判断は難しい。実際感冒症状の後の副鼻腔炎はライノウイルスやパラインフルエンザなどのウイルス性がほとんどで細菌性は0.5%~2.0%と言われている。さらに細菌性であってもその多くは抗菌薬は不要とされているためその線引きを明確にしておこう。

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・膿性鼻水は細菌性か?

粘膜上皮細胞が傷害を受ける→炎症細胞が浸潤し膿性鼻汁・膿性痰(傷害を与えるものは細菌性の可能性もあるが、ウイルスや化学物質の可能性もある)

さらに風邪が良くなる過程で水様鼻水がだんだんと黄色で粘稠度が増してくるがこれは風邪自体が改善してきている過程であり、膿性鼻汁=細菌感染ではない。

アレルギー性鼻炎とウイルス性鼻炎の特徴

アレルギー性鼻炎の特徴 ウイルス性鼻炎の特徴
朝方や夜に症状が強い 1日通じて
季節性の変化がある 季節とは関係ない
視診で鼻粘膜が蒼白に見える 発熱・咳・咽頭痛などの随伴症状
鼻汁好酸球増加  

細菌性副鼻腔炎とウイルス性副鼻腔炎の鑑別

細菌性副鼻腔炎の特徴

・症状が二峰性

・片方側の頬部痛

・うつむいた時に前頭部もしくは頬部の重い感じ

・上歯痛(+LR2.5 -LR0.9)

・病歴上鼻汁色調の変化(+LR1.5 -LR0.5)

・身体所見で膿性鼻汁の確認(+LR2.1 ―LR0.7)

・血管収縮薬・抗アレルギー薬に反応が悪い(+LR2.1 -LR0.7)

・transillumination test陽性(+LR1.6 -LR0.5)

この中で特に注目すべきは二峰性の病歴であることである。明確なデータはないが、さらに咳・鼻水・咽頭痛の3症状に加えて発熱が二峰性に出れば細菌性の可能性が高くなる。

病歴では「最初は咳・鼻水・37度の発熱を認めて3日ぐらいでどれも改善したけど、その後数日して鼻水が悪化し発熱も38度でた」など

では、細菌性副鼻腔炎の可能性が高い!→抗菌薬処方か?

前例処方というわけではなく多くは自然軽快する。だから基準は

初診の時点で以下2つmの条件を満たす

・強い片側の頬部の痛み・主張、発熱がある

・鼻炎症状が7日以上持続、かつ頬部の痛み・圧痛と膿性鼻汁、二峰性の病歴がある

うっ血除去薬や鎮痛薬を7日以上処方して経過を診ている場合

・上顎、顔面の痛みがある

・発熱が持続する。

ちなみに治療適応の判断にX線検査やCTは?

X線は感度が低く、CTは感度はいいけど偽陽性が多い。→わざわざ撮影しなくてもってゆう感じ。

専門科にコンサルトする場面

→眼窩周囲浮腫、眼球位置異常、視野異常(複視、視力低下)、眼筋麻痺、激しい痛みなどであるが、症状が強くて見きれなくなったらということ!

ちなみにCompromised host(DM、FN患者など)はムコール、アスペルギルスなど侵襲性の真菌感染へと進展する場合があるので注意が必要である。

治療適応がある細菌性副鼻腔炎の処方例

・アモキシシリン250mg6CP分3 5〜7日

・オーグメンチン3CP+アモキシシリン3CP いずれも分3 5〜7日

+カルボシステイン500mg1回1錠 1日3回

これらに加えて症状に対する感冒

ペニシリン系、セフェム系にアレルギーがある場合

・クリンダマイシン150mg 1日4回 5〜7日

クラリスロマイシン200mg 1日2回 5〜7日

・アジスロマイシン500mg 1日1回3日間 もしくは1回2gのみ