とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

慢性心不全のステージと治療について

心不全のマネジメント 慢性期治療は4つのステージ(A,B,C,D)で考える

ステージA(心不全リスク+、器質的心疾患ー、心不全症状ー)

・リスク因子は高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病、動脈硬化疾患、喫煙など、また心筋症の家族歴もリスク因子になる。

・高血圧ではACE阻害薬、ARBが第一選択となる(ACE阻害薬を優先し、不耐例に対してARBを使用する)

脂質異常症に対しては必要があればスタチンを使用する。

・しかし上記に加えて何よりもまず患者教育が大事である。

ステージB(器質的心疾患+、心不全症状ー)

・ステージAの治療に加えて、β遮断薬の検討

・虚血性心疾患への特異的治療(カテーテル治療など)

・ICD留置(必要例で)

ステージC(器質的心疾患+、心不全症状+、既往も含む)

・心エコーでEF50%以上ならHEpEF、40%以下ならHErEF。40〜50%ではHFmrEFと分類される。

・HFrEFに対してはACE阻害薬、ARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬の使用を推奨

・HFpEFに対しては有効な薬剤はそれほどないと言われており、リスク因子への介入と対症療法+必要に応じてβ遮断薬を推奨。

・何れにしてもうっ血所見があれば利尿薬を使用する。

薬剤名 半減期 投与量/day 特徴
フロセミ 1.5~2h 10~80mg 経口吸収率は10〜100%と差が大きい。静注薬もあり急性心不全では使用しやすい
トラセミ 3~4h 4~8mg 経口吸収率は80〜100%と安定しているが、高いかつ肝障害、黄疸の副作用がある
アゾセミ 2.5~3h 60mg フロセミドに比べて腎機能障害、入院率低下の可能性があるが静注薬なし
トルバプタン 4~8h 15mg 薬価が高い。自由水排出効果のためNa高値に注意する必要がある。
スピロノラクトン   50~100mg 心不全長期でエビデンスあり。K保持効果のためループ利尿薬と併用が多い。