とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

アルコール依存者の入院対応

はじめに

アルコール多飲者が入院すると多くの問題に直面する。それは栄養不良に伴う理フィーディング症候群、ウェルニッケ脳症、アルコール離脱せん妄などがある。アルコールというプロブレムが多くの健康問題を生み出してしまうため、それぞれの対応を今回まとめる。

  • リフィーディング症候群

リフィーディング症候群は慢性的に栄養不足に対して急激な栄養投与を行うことで体液と電解質の急激な細胞内シフトに伴い、横紋筋融解症、呼吸不全、心不全不整脈、痙攣、昏睡といった致死的な合併症をきたす。

BMI14未満もしくは2週間以上の飢餓→5kcal/kg/dayから開始して1〜2週間で目標量へ増量

・上記ほどではないがリフィーディング症候群の可能性が高いと判断する場合10kcal/kg/dayから開始して4〜7日かけて目標量へ増量

ビタミン・電解質補充

ビタミンB1:経口200〜300mg/day もしくは点滴で100mg/day栄養開始直前から開始して10日間継続

電解質補充(P、K、Mg)

P:内服ならホスリボン 点滴ならリン酸Na

維持必要量 経口0.3~0.6mmol/kg/day

軽症(1.9~2.5):経口32mmol/day

中等症(1.2~1.9):静注0.08mmol/kgを6時間かけて 採血しながら必要に応じて再投与

重症(1.2~):静注0.16~0.24mmok/kgを6時間かけて 10mmol/hrまでの速度で点滴静注

K:内服ならグルコン酸カリウム 静注ならKCL

K補充方法は別記事に詳しく書きます。

Mg:内服 酸化マグネシウム 静注 硫酸マグネシウム

維持投与量:経口0.8mEq/kg/day

軽度1.2~1.7mg/dl:同上

重度1.2mg/dl:20〜60mEqを静注で6〜12時間かけて

 

  • ウェルニッケ脳症

ウェルニッケ脳症はビタミンB1不足が原因となる様々な神経症状を呈する疾患である。ATP賛成に必須なビタミンB1が枯渇することで小脳・納竿・視床など広範囲に障害をきたす。症状としては脳症、外眼筋障害、歩行失調が有名。

・ビタミン(アリナミン)の補充

500mgアリナミン点滴静注8時間ごと(第1、2病日)

250mgアリナミン点滴静注24時間ごと(第3〜7病日)

100mg経口投与(第8病日以降)

  • アルコール離脱せん妄

予防投薬として(離脱症状が出現した場合はこの限りではなく、ジアゼパムの静注が大事)

第1病日はロラゼパム2mg6時間ごと経口投与

第2病日以降離脱せん妄の出現がなければ2、3病日は1mgを6時間ごとに経口投与

第4病日以降は症状に合わせて減量していく

例)1日目 ワイパックス0.5mg1回4錠 1日4回

 2日目、3日目 ワイパックス0.5mg1回2錠 1日4回

 4日目〜5日目 ワイパックス0.5mg1回1錠 1日4回

 6〜7日目 ワイパックス0.5mg1回1錠 1日1回寝る前 その後中止