とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

心不全のメモ1 主に分類について

心不全の診断基準

フラミンガムうっ血性心不全診断基準

大項目を2つ、あるいは大項目1つ及び小項目を2つ有するもの

大項目

・発作性夜間呼吸困難あるいは起坐呼吸

・頸静脈怒張

・ラ音聴取

・心拡大

・急性肺水腫

・3音(ギャロップリズム)

・静脈圧>16cmH2O

・循環時間>25秒

・肝頸静脈逆流

小項目

・両側下腿の浮腫

・夜間咳嗽

・労作性呼吸困難

・肝腫大

・胸水貯留

・肺活量の減少(最大量の3分の1以下)

・頻脈(1分間に120回以上)

 

心不全には2つある

1:末梢の組織、細胞の需要に見合うだけの血液を送り出すために、左室が拡張末期圧を上昇させなければならない状態

2:末梢の組織の需要に対して、心臓が血液を送り出せていない場合

 

心不全のクリニカルシナリオ

(1)クリニカルシナリオ1(CS1)
 血圧上昇群(収縮期血圧>140mmHg)です。このシナリオでは通常症状は急激に進行します。広範な肺うっ血による呼吸困難を呈しますが、全身の浮腫は軽度のことが多いです。血圧の上昇に伴う充満圧の急速な上昇が特徴であり、左室収縮は保たれていることが多いです。。

(2)クリニカルシナリオ2(CS2)
 血圧正常群(収縮期血圧100~140mmHg)です。このシナリオでは通常症状は徐々に進行し、体重増加を伴います。肺うっ血よりも全身浮腫が優位であり、慢性心不全の状態を呈します。腎機能障害、貧血、低アルブミン血症など種々の臓器障害を合併しています。

(3)クリニカルシナリオ3(CS3)
 血圧低値群(収縮期血圧<100mmHg)です。このシナリオでは低灌流の徴候が優位であり、肺うっ血、全身浮腫とも少ないです。多くの患者は進行した終末期心不全の状態を呈します。

(4)クリニカルシナリオ4(CS4)
 急性冠症候群に伴う急性心不全群です。急性冠症候群のエビデンスはすでに豊富であるため、他の原因による心不全から除外し、急性冠症候群に対する治療が求められます。

(5)クリニカルシナリオ5(CS5)
 右室不全による急性心不全群です。肺高血圧または右室梗塞により発症し、三尖弁逆流を呈します。通常肺うっ血は認めず、左心系は低灌流を呈します。この病態による心不全は他の病態による心不全と管理が異なるため別のシナリオに分類されています。

MebazaaらはCSを用いた急性心不全の患者管理のアルゴリズムのように提唱しています。ここではCSを用いた急性心不全超急性期の初期対応について概説します。

参考文献
1)Mebazaa A, et al: Practical recommendations for prehospital and early in-hospital management of patients presenting with acute heart failure syndromes. Crit Care Med, 36: S129-S139, 2008
2)日本循環器学会:急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)

 

Nohria-Stevenson分類について

Nohria-Stevenson分類は、心不全の病態を身体所見からより簡便に評価するための指標です。うっ血所見の有無(wet/dry)および低灌流所見の有無(warm/cold)に基づき、心不全の病態をProfile A、Profile B、Profile C、Profile Lの4つのプロファイルに分類しており、予後予測や治療方針を決める際にも用いられています(図)。

心不全の病態把握の分類というと、Forrester分類が頭に浮かぶ人も多いと思いますが、Forrester分類は観血的測定を前提としており、幅広い患者さんに適応することは難しいところがあります。その点、Nohria-Stevenson分類は、フィジカルイグザミネーションで得られる身体所見情報だけで評価できるため、臨床で頻用されています。

 

NYHA分類とは

New York Heart Associationの略。 1928年から心不全の重症度を評価するために用いられているツールで、 2022年AHA/ACC/HFSAガイドラインにも採用されている。

NYHA Ⅰ度

心疾患はあるが身体活動に制限はない

日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、
呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。

NYHA Ⅱ度

軽度~中等度の身体活動の制限がある

安静時には無症状。 日常的な身体活動疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

NYHA Ⅲ度

高度な身体活動の制限がある

安静時には無症状。 日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難、 狭心痛を生じる。

NYHA Ⅳ度

心疾患のため、 いかなる身体活動も制限される

心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。

 

Forrester分類とは

Forrester分類は、急性心筋梗塞後の患者さんにおける急性心不全の状態を評価するために、1976年に提唱されたスケールです

Forrester分類ではスワンガンツカテーテルによって得られた肺動脈楔入圧(PCWP)心係数(CI)を用いて血行動態の評価を行います。

*本来 心臓がゴムの性質、フランクスターリングの法則によって、伸びれば伸びるほど心拍出量(心係数)が上昇するが、機能が低下している心臓だと伸びすぎると、心拍出が低下してしまう。そのため、利尿をかけて心不全が安定化した後、心拍出が改善するケースがよくある。

 

心不全患者のメルクマール

呼吸困難感などの症状、浮腫、体重、呼吸音、頸静脈、SpO2、呼吸回数、レントゲン、エコー、BNP