とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

風邪診療について 発熱+関節痛型

はじめに

この症候で最も大事なことは「関節痛だけ」なのか「関節炎」まできたしているかということである。

強い関節痛〜関節炎まできたしうるウイルス

  • 頻度の高いもの

・パルボウイルス ・風疹とそのワクチン ・BC肝炎ウイルス ・アルファウイルス ・デングウイルス

EBウイルス

  • 時々見かけるもの

HIV ・ムンプス ・A型肝炎ウイルス ・コクサッキーウイルス ・エコーウイルス ・アデノウイルス

・水痘・帯状疱疹ウイルス ・単純ヘルペスウイルス ・サイトメガロウイルス

パルボウイルスと風疹は実臨床では以外に多く遭遇する疾患でありバルボウイルスでは蝶翼状紅斑や四肢への網目状・レース状紅斑がはっきりせず関節症状のみが前面に出ることもよくあるため若年成人の多関節痛では鑑別にあがる疾患である。

また風疹は斑状丘疹状の発疹や耳介後部リンパ節腫脹がわかることがあるが何より流行情報やワクチン接種歴などのを聴取することが大切。

関節痛と関節炎の鑑別としては関節を自動もしくは他動的に動かしてみて疼痛があるかどうかを見ると参考になる。また患者本人が腫れているかどうかで「腫れている」と答えるときは関節炎と考えるべきである。

単関節炎では結晶性関節炎や化膿性関節炎を鑑別に

化膿性関節炎では関節穿刺液の検査を(細胞数50000以上であれば感染性を疑う)

多関節痛ではSTD(淋菌や反応性など)を考慮して性活動を聴取する。

淋菌:極めて痛みの強い移動性の多関節痛で皮疹を伴う。

高齢者の「急性発症の動けない多関節痛」では3つの鑑別が重要

・atypical gout/pseudogout(非典型的結晶性関節炎)

・streptococcal arthritis(特にG群/B群)

・paraneoplastic arthritis(特に肺癌)

・外来診療で最も多いものである。結晶性関節炎は原則単関節炎であるが、高齢者の場合は多関節炎として来院することが多い。この様な患者では短関節炎として痛風・偽痛風を繰り返している病歴がある。治療はNSAIDs(特にナイキサンがおすすめ)と脱水補正が治療のメイン。

・頻度は高くはないが、高齢者の多関節痛として細菌性のことがある。溶連菌感染の菌血症では感染性心内膜炎の除外が重要であるが非典型結晶性関節炎との明確な鑑別は難しい。結晶性の可能性が高いと考えていても、関節炎がある場合は血液培養が重要でそれに救われることもある。

・病院受診歴のない高齢者の多関節炎にありうる。病院受診歴のない高齢者肺癌が多い。