とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

がん緩和ケアガイドブックをコンパクトにまとめる記事 基本編

癌緩和ケアガイドブック 監修:日本医師会 をコンパクトにまとめてみた

まずは用語と解説

緩和ケアとは?

→重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア

WHOによる緩和ケアの定義

→生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって苦しみを予防し、和らげることでクオリティー・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善するアプローチである。

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緩和ケアで用いられる用語集

  • アカシジア:静座不能症と訳されていて、座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回る。アカシジアの原因薬は抗精神病薬が多い。抗うつ薬や胃腸薬などよっても引き起こされることがある。多くの場合には、服用を始めて数日後に出現するが、数カ月間以上同じ薬を飲み続けた後に出現する場合もある。
  • オピオイドオピオイド受容体と親和性を示す化合物の総称。
  • オピオイドスイッチング:オピオイドの副作用などによる治療に限界が生じたり、十分な除痛ができなくなった時投与中のオピオイドから他のオピオイドに変更すること。
  • がん悪液質:悪性腫瘍の進行に伴って栄養摂取の低下だけでは説明できない体脂肪や筋肉量の低下が起こる状態。栄養を十分に供給しても体重増加につながらない状態となる。
  • 緩和ケアチーム:身体症状の緩和を専門とする医師、精神症状の緩和を専門とする医師、緩和ケアの経験を有する看護師、緩和ケアの経験を有する薬剤師などにより苦痛やつらさの緩和を行うチーム。
  • 緩和ケア病棟:主に癌患者を対象とし、痛みや苦痛をとり、患者・家族の意向を尊重して治療やケアを行うことを目的とした病棟。緩和ケア病棟で症状を緩和して自宅に退院することも可能で必ずしも終末期患者のみが対象となる病棟ではない。
  • 希死念慮:自ら死を望む状態。
  • 抗精神病薬:元々統合失調症をはじめとした精神病様状態(幻覚・妄想・興奮など)に対して開発された薬剤。メジャートランキライザー、神経遮断薬などとも呼ばれている。主たる作用は抗幻覚・妄想作用や鎮静作用であるが制吐作用も有することから緩和ケアにおいて頻度の高い身体症状(悪心など)や精神症状(せん妄など)の緩和にも使用される。主な抗精神病薬にはハロペリドールクロルプロマジン、リスペリドン、オランザピンなどが含まれる。
  • 在宅療養支援診療所:2006年に診療報酬に位置付けられた。病院や他の診療所、訪問看護ステーション、介護サービスなどと連携して癌患者の緩和ケアを含む自宅療養支援を提供する診療所。24時間連絡を受ける医師または看護職員が配置されている。
  • 在宅療養支援病院:保険医療機関と連携して24時間往診が可能な体制を確保し訪問看護ステーションとの連携により24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保するとともに緊急時に在宅で療養を行なっている患者直ちに入院できるなど必要に応じた医療・看護を提供できる病院のこと。
  • 錐体外路症状錐体外路とは中枢神経系のうち錐体路系、小脳系以外の領域で運動に関係している領域をいう。実際にはパーキンソニズムで見られる手指振戦、無動、筋強剛など。緩和ケアの領域ではドパミン受容体を遮断する薬剤(ハロペリドールプロクロルペラジンなど)によって生じる薬剤誘発性のものが多い。
  • 鎮痛補助薬:主要な鎮痛薬に追加されてさらに鎮痛を改善させる薬剤。それ自身も鎮痛薬として使用される。(例:帯状疱疹後神経痛の治療にリリカ)3段階疼痛ラダーのいずれでも使用は可能。よく用いられるものとしては抗痙攣薬、抗うつ薬など。
  • 持続痛:persistent pain
  • 突出通:Breakthrough pain 普段の痛みを上回って生じる痛み。定期オピオイド服用癌患者の70%に生じると言われている。体動時痛(Incident pain)、誘引なく生じる痛み(Spontaneous pain)、定期的な鎮痛薬のきれる時の痛み(End-of-Dose Failure)などがある。
  • オピオイド治療薬:NSAIDs(Non steroidal anti-inflammatory drugs )とアセトアミノフェン
  • レスキュー:疼痛時に臨時に追加する追加投与薬
  • NRS:Numerical Rating Scale 0~10(10:これ以上痛いのが想像できない痛み 0:全く痛みなし)
  • PCA:Patient Controlled Analgesia 患者自己管理鎮痛法 患者が自ら鎮痛薬を調整できるシステム
  • タイトレーション:薬剤の調整、容量の最適化

予後予測因子

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