胸焼けに対する漢方薬処方
- 良い適応となる状態
胃食道逆流症GERDのうち特に非びらん性胃食道逆流症が良い適応である。
処方前に押さえておくべきこと
・胃食道逆流症GERDは内視鏡所見陽性で症状がみられる逆流性食道炎と所見がないのに症状が見られる非びらん性胃食道逆流症NERDに分類される。
・逆流性食道炎には従来のプロトンポンプ阻害薬(PPI)や新しいカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P―CAB)が著効するが、NERDには半数以下しか効かない。
第一選択薬:
・腹痛を伴う時:安中散
第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?
体力なし・腹力弱い
→悪心があり飲食できない時・とりあえず試す時:小半夏加茯苓湯
→上腹部の冷えや痛み・唾や尿が多いとき・食欲不振:人参湯
体力中等度
→みぞおちの抵抗・疼痛・生臭いゲップ・下痢:半夏瀉心湯・生姜瀉心湯
→上腹部膨満感・ゲップが多い:茯苓飲
→季肋部の抵抗・苦満感あり・不安感・咽頭後頭部のつまり感:柴朴湯
→季肋部の抵抗・苦満感あり・悪心:小柴胡湯
→胸部の痛み・冷えで悪化:当帰湯
体力充実
→のぼせや赤ら顔・暑がり:黄連解毒湯
→便秘が顕著な場合・腹部膨満が強い場合:大王甘草湯・大承気湯
- 胸焼けとは?なぜ起こる?
・胸焼けの多くは胃酸などが食堂に逆流して食道粘膜を刺激したり障害することによって生じる。
・原因は食道ヘルニア、下部食道括約筋の弛緩、食道運動や胃運動の異常、腹圧亢進や姿勢によって胃酸などの胃内容物が逆流することが挙げられる。
・多くは胃酸逆流が原因であるが、胃幽門部手術後の胆汁酸やトリプシンなどの非酸逆流、消化管内気体の逆流によるものもある。
・最近では同じ症状で好酸球性食道炎が増えており鑑別が必要なことがある。
・狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や大動脈疾患でも胸焼けを訴えることがあり注意が必要。
・胃酸の逆流が気管支喘息を引き起こすことがある。