とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

結核を疑った時にする検査 

はじめに

結核は過去の感染症ではなく現在日本であらゆる症状の鑑別診断の上がる疾患と考えた方が良い。特に呼吸器症状とレントゲンや胸部CT異常で典型的な画像を認めれば隔離の上で検査するという対応を迫られる。今回は結核を疑った時に行う検査をまとめる。

◯胸部レントゲン、CT

まずは正面レントゲン画像を撮影。必要に応じてCT撮影。

典型的には上肺野を中心とした空洞性病変であるが、高齢者では誤嚥性肺炎などと区別がつかないことも多く、画像で結核の診断は難しいと考える。

◯3連痰(痰培養検査、塗抹染色)

早朝採取も含めて3日間連続で行うことが望ましい。

喀痰検査の回数を3回まで増加させると、塗抹および培養検査での陽性率は経時的に増加する。

  • ・塗抹検査:感染性の評価のために極めて重要。1時間程度で結果が判明する。

ただし、塗抹検査では死菌も陽性となり、非結核性抗酸菌症でも陽性となるため注意が必要。感度は53%と培養検査よりも低い。(だから塗抹検査陽性でも慌てない。PCRなど適宜行う必要がある)

  • ・培養検査結核の確定診断には分離培養法で生菌の確認が必要。感度は81%と高い。

培養陽性となれば同定検査および薬剤感受性検査が必要になるが培養を依頼してないとこれらもできないので培養は必須。

PCRLAMP法(喀痰検体で検査)

核酸を増幅させることにより結核菌を短時間で検出できる。PCRLAMP法は感度は培養検査とほぼ同等と考えられているが、検査結果の判明までが迅速であり塗抹陽性となった場合に、結核菌か非結核性抗酸菌化(M.avium,M.intracellulare)が判別可能なことが利点である。

核酸増幅法検査においても死菌でも陽性となるため、必ず塗抹検査、培養検査と同時に行い結果を総合的に判定する必要がある。

◯クオンティフェロン試験(血液検査)

結核菌特異タンパク刺激性遊離インターフェロンγ(QFT-3G)。検体は静脈採血したものに3種類の結核菌特異抗原で刺激する。

結核菌が特異的に持っているタンパク質がリンパ球のT細胞を刺激することで血中に産生されるIFNγをELISAによって測定する。IFNγ放出試験=IGRAと呼ばれる。

・活動性結核の診断は基本的には塗抹喀痰検査、培養検査、PCRなど遺伝子検査、胸部レントゲン検査であり、QTFだけで確定診断できない。あくまで補助診断。

・注意点としてHIV患者やステロイド投与中など免疫抑制状態にある患者ではQFT応答が抑制されて、偽陰性のリスクが。

・陽性=結核感染を疑う。しかし、QTFでは最近の感染、既感染の区別は出来ない。活動性結核と潜在性結核の区別も出来ない。

・判定保留=結核感染は否定的であるが、結核感染の集団に属していたなどリスクが高い場合は原則陽性として扱う。

・陰性=結核は否定的。

◯T-SPOTとは

QFT法以外のIGRAとしてT-SPOTがある。このほうがクオンティフェロンより新しい。

T-SPOTはQFTより感度が高く、HIVなどの感染症で細胞性免疫能が低下している患者でも利用できる。国内の臨床試験の結果では感度97.5%、特異度99.1%である。

ツベルクリン反応検査

かつてのIGRAとしてツベルクリン反応があったが、これにはBCG接種を受けている患者では偽陽性になるという重大問題があり、ツベルクリン反応は原則廃止となった。

まとめ

・3連痰(塗抹):1時間で結果が出る。が、感度が低いし死菌でも陽性になる

・3連痰(培養):感度80%強と高い。

PCR:遺伝子レベルで解析するので結核か非結核性抗酸菌か判別できる。死菌も陽性になるので培養検査と併せて提出。

・クオンティフェロン試験:採血で検査できる。ステロイド内服中やHIVなどの患者では偽陰性のリスクが有る。

ツベルクリン:昔の検査。今はしない。