とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

肺外結核のミカタ

はじめに

結核は全世界で年間1000万が罹患する。死亡原因のトップ10に入る。なので珍しい疾患でなくあらゆる症状に対する鑑別として考えなくてはならないものである。

  • 疫学

・発症する人は高齢者が多い(特に結核の既往があれば注意)

・若年者であれば外国出生の人が多い。

  • 結核のリスクファクター

・環境因子(結核の暴露)具体的に言えば結核患者との接触、人が多く換気が悪い場所での仕事(老人ホーム、病院、刑務所)、外国生まれ

・患者自身の因子(低栄養、低体重、薬物中毒アルコールタバコ、並存疾患としての珪肺、糖尿病、腎不全、透析、血液腫瘍、免疫抑制)

免疫抑制患者には排外結核は多い(典型的な結核症状を示さないことが多い)

症状:空咳、胸膜痛

画像所見:片側胸水、CTで空洞

診断:胸水穿刺、ADA、胸水の中の菌量は少ない、診断がつかない場合は胸腔鏡下生検も考慮

症状:頚部リンパ節に多く症状に乏しいことが多い、平均して3cmぐらいで瘻孔を形成したりする

診断:リンパ節生検もしくは針生検

疫学:発展途上国では青年、先進国では大人に多い 胸腰椎移行部に多い

症状:緩徐に進行、非特異的な背部痛、診断が遅れると後湾症や神経症状が出る。

合併症:傍脊椎や腸腰筋の膿瘍、神経学的症状が出る場合は手術が必要なこともある。

病理:脳底部のくも膜に炎症 梗塞、水頭症を起こしやすい

病型:Stage1 意識清明で神経学的所見なし Stage2 意識レベルが低下+軽度の脳神経麻痺 Stage3 昏睡や痙攣+重度の脳神経麻痺、片麻痺

診断:腰椎穿刺、培養には大容量10〜15mlのCSFを採取 CSFの感度は塗抹10〜30 NAAT/培養45〜70% MRI:脳底部の髄膜の炎症+水頭症

血流に播種した全身性の結核

診断:特徴的なCT、まずは喀痰検査、血液培養、肝生検

治療:肺結核と同じ

  • 肺外結核の診断的治療とは?

診断がついていないのに治療を開始して臨床的・画像的に治療に反応していることをもって結核の診断とすること 

原則として肺結核は診断が確定してから治療を開始する

肺外結核は菌量が少ない・治療が待てないことがある(髄膜炎や粟粒結核)ので、治療開始前に細菌学的な診断がつけられないことがある

  • もし結核陰性だったら

2ヶ月の時点で治療に反応していなければ結核は否定的 しかし耐性結核の可能性、初期増悪の可能性もある

反応していたら抗結核薬を予定通り継続 多くの場合は3ヶ月目からINH・RFPの2剤に変更可能 ただし同時に投与していたらステロイドに反応していた場合や、ただのウイルス感染、耐性結核の可能性もある、、、、

また過去に治療歴のある結核患者は常に耐性を考える

結核髄膜炎結核性心膜炎(ただし心膜炎に対しては有効ではないかもしれないなどのデータもあり考慮されるといった程度)

  • 投与期間

原則6ヶ月

・脊椎は9ヶ月

髄膜炎なら12ヶ月

  • Take home message

結核は常に疑う 問診で症状とリスク因子をおさえる

高リスク:高齢者、若年者は免疫不全リスク評価、結核まん延国からの訪問者

診断は難しい 肺外結核の菌量は少ない それでも病理、細菌学的な診断をつけることにこだわる

治療の判断は専門家と必ず相談