とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

脳腫瘍における脳浮腫の軽減(転移性脳腫瘍を含む)

はじめに

 脳腫瘍では腫瘍周囲の浮腫があり、これの軽減のためにデキサメタゾンが使用されることが多い。投与により70%の症例で臨床症状の改善が見込まれる。投与開始より24時間以内に神経症状の改善を認めることが多い。

処方例:デキサメタゾン(デキサート)初回10mg静注 その後6時間ごとに4mgずつ静注。臨床所見を見ながら1日1回の投与まで減量を検討。浮腫が軽減し経口摂取可となり次第減量する。

上記に加えて

グリセレブ 1日2回+てんかんの危険性があれば イーケプラ500mg 2回など

忘れてはいけないのはあくまでも一時的な浮腫の改善であるので次の手を打たないと必ず神経所見は悪化するということである。圧迫病変に対して臨床状況が許せば放射線治療、手術による圧迫解除なども視野に入れて治療していく必要がある。

転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫

 転移性病変による脊髄圧迫では根本的な治療として緊急放射線治療や手術療法による腫瘍圧迫解除が必要になることもある。脳と異なり、脊髄障害による神経機能予後は悪く、早い対応が必要。処置までに応急的な治療としてデキサメタゾンによる治療が必要となる。デキサメタゾンの投与量についてはガイドラインでは低用量投与が推奨されている。

処方例:デキサメタゾン初回10mg静注。その後6時間ごとに4mg静注。1日投与量は最大16mg

横断性脊髄炎

 横断性脊髄炎は1〜8/100万人/年と頻度は少ないが完全な脊髄障害が完成した場合は対麻痺や感覚障害などの重大な後遺症を残すリスクがある。早期治療が後遺症を残さないポイントとなる。

 脊髄炎を起こすもので頻度の高いものとしては抗アクアポリン4抗体関連疾患(視神経脊髄炎など)がある。横断性脊髄炎の鑑別疾患としてはNMO・NMO spectrum disorder・多発性硬化症膠原病関連疾患・血管障害・腫瘍・感染など。治療は早期が望ましいが神経内科医師に相談してから治療介入がベスト。

処方例(相談できない時の初期治療)

メチルプレドニゾロン1000mg+生理食塩水200ml 2時間で点滴 3日間継続

その後で経口PSL1mg/kg/dayを内服開始する。効果が得られなければ血漿交換療法を検討する