とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

気管支拡張薬の使い分け

はじめに

・気管支拡張薬はβ2刺激薬、抗コリン薬、キサンチン誘導体の3系統

気管支喘息COPDに対して気管支を拡張する目的に使用される

・効果と副作用の観点から内服よりも吸入薬が推奨されており適切な吸入器デバイスを選択すべし

β2刺激薬

・β2刺激薬は気道平滑筋の細胞膜に存在するβ2受容体に作用することによって気管支拡張効果を発揮する。

副作用としては動機、振戦、頻脈などの症状が経口>貼付>吸入の順に出現する。他に重大な副作用として血清Kの低下があるため不整脈、虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症、糖尿病などを有する症例では注意が必要。

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気管支拡張薬の作用機序

抗コリン薬

・抗コリン薬はアセチルコリンの受容体への結合に拮抗することで気道平滑筋の収縮を抑制し気管支拡張作用を発揮する。アセチルコリン受容体はM1〜M5までありM3を介して作用する。

メチルキサンチン(キサンチン誘導体)

・テオフィリン徐放剤(テオドール、テオロング、ユニフィル)、アミノフィリン(ネオフィリン)

キサンチン誘導体は気管支拡張作用、粘液線毛輸送能の促進作用、抗炎症作用などを有している。テオフィリン製剤の有効安全域は狭く薬物相互作用などで血中濃度が変動しやすい。

LABA

ホルモテロール(オーキシス、タービュヘイラー)、インダカテロール(オンブレス)、サルメテロール(セレベント、ディスカス)、ツロブテロール貼付剤(ホクナリン)など

→β2刺激薬のうち気管支拡張効果の持続が12時間を超えるものをLABAと総称する。気管支喘息に使用する場合にはICSと併用することが必須。ICS/LABA配合薬を使用することが多い。

LAMA

アクリジニウム(エクリラ、ジェヌエア)、ウメクリジニウム(エンクラッセ、エリプタ)、チオトロピウム(スピリーバ)、グリコピロニウム(シーブリ)

→LAMAは作用時間が12〜24時間と長く中等度以上のCOPDにおいて中心となる薬剤である。基本的にはLAMAはCOPD治療においてLABAよりも増悪抑制効果が有意に強いと報告されている。LAMAは体内への吸収率が低く通常の使用量であれば口渇以外の副作用はほとんどない。しかし閉塞隅角緑内障の患者には禁忌であり、前立腺肥大症の患者においても稀に排尿障害が増悪することがあり注意が必要。高用量のICS/LABAの治療で喘息症状が残る患者に対して呼吸機能を改善して増悪予防効果がある。

SABA

サルブタモール(サルタノールインヘラー)、プロカテロール(メプチンエアー)

気管支喘息に対してICSによる治療を行なった上で喘息発作時に頓用で使用する。

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吸入薬一覧
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喘息治療ステップ
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COPD治療ステップ

吸入デバイスの使い分け

・理解力と記憶力の低下のある患者さま

吸い忘れ・服用方法の間違い・重複服用の恐れがある。

→簡便な操作・服用回数の少ないタイプが良い。(例:1日1回型のレルベアエリプタ)

・視力の低下(老眼、白内障)のある患者さま

説明書の字、カウンターが読めない可能性あり。

→大きな説明書を用意する。大きな残量カウンターがベター。

(例:タービュヘイラーは視覚的に残量に色がついているので見やすいかもしれません)

・手指の震え・力が弱いような患者さま

吸入器の固定や力を入れて押せない、容器を回せない。

→エアゾール剤は固定したり、押す力が必要。メーカーが提供している補助器具を使う。

・吸入力が弱っている患者さま

吸い残し、口腔ガンジダ等副作用や、効果が不十分になる。

→吸気流速を考えたデバイスがベター(エアゾール等)。また、トレーナーを準備する。