風邪診療 咽頭痛症状がメインの場合
はじめに
咽頭痛をきたす疾患は非常に多い。アメリカでは年間2100万人が咽頭痛で受診しそのうち1200万人は急性咽頭炎の診断となっている。咽頭痛は重篤な疾患の症状ともなる場合があり、killer sore throat(死の危険性のある咽頭痛)は見逃してはいけない。
本当に咽頭痛なのか?
嚥下時の痛みがあるのか。わからなければその場で唾を飲んでもらう。
逆に喉が痛いのに嚥下耳痛がない場合は心筋梗塞や大動脈解離などが鑑別にあがるため要注意である。
咽頭炎をきたす疾患
感染症:ウイルス性咽頭炎、インフルエンザ、伝染性単核球症(EBV,CMV,HIV,二期梅毒)、溶連菌感染性細菌性咽頭炎、非溶連菌性咽頭炎(淋菌、クラミジアニューモニア、マイコプラズマなど)、深頸部感染症、喉頭蓋炎、ヘルパンギーナ、梅毒、Lemierre症候群、Ludwigアンギナ
炎症性疾患:GERD、後鼻漏を伴うアレルギー性鼻炎、慢性的な口呼吸、異物、筋緊張性発声障害、声帯肉芽種、粘膜炎、肉芽種性疾患(リウマチ、痛風)、天疱瘡
悪性腫瘍:扁平上皮癌、悪性リンパ腫、肉腫、腺癌
嚥下時痛の病歴が取れなくても「咳をして痛い」という病歴が取れれば多くは気管支炎もしくは肺炎、喘息などといった咳が強く出やすい疾患を鑑別に上げるべきである。
やっぱり咽頭炎と判断すれば
咽頭炎の原因として上に羅列したような疾患が挙げられるが、最もあるのは感染症でそのほとんどがウイルス性であり、細菌性でも基本的には自然治癒する。
唯一治療適応のあるA群溶連菌性咽頭炎には成人では10%未満とされているがその線引きはクリアカットにはできないのが現実である。そこでCentorスコアなるものがある
・4点以上なら全てに抗菌薬治療
・1点以下ならストレップ(A群溶連菌迅速診断検査)を
せずに抗菌薬治療なし。
・2点〜3点ならストレップをして+なら抗菌薬治療
Centor scoreのジレンマ
・前頸部リンパ節は明瞭に触れることが少なく、
圧痛として認められる程度であることが多く、これを陽性ととるか
・38度を超える発熱をきたす前の早期受診も多い。
・白苔を認めるケースは半数に満たない。時間経過で出てくること
もある。
抗菌薬処方例
そのほかのA群溶連菌らしさ
・咽頭痛の割に鼻水がない
・左右の喉の片方が特に痛い
咽頭痛で受診される患者で見逃してはいけない疾患5つ
Five killer sore throats
・急性喉頭蓋炎
・扁桃周囲膿瘍
・咽後膿瘍
・Ludwigアンギナ
・Lemierre症候群
それぞれの診断のコツをまとめる
・扁桃周囲膿瘍
→扁桃周囲膿瘍は片側の激しい頭痛で患者さんは「食事も取れない」といって受診することが多い。そして一番の決め手は開口障害があるかどうか。開口障害はlateral pharyngeal space(傍咽頭間隙)への炎症の波及を意味し、今後咽頭間隙へ波及した場合、その先に縦隔方向へのスペースがあるため一気に縦隔炎へ進行し重篤な疾患となります。口蓋垂の偏位も有名ではあるがそこまで来ている症例は少なく、前口蓋弓の前方への突出が重要である。それがあれば咽喉頭造影CT施行!
・急性喉頭蓋炎
→急性喉頭蓋炎では「見た目がとてもsickで横になると苦しいため横になれず、気道がもっとも広くなるsniffing positionをとったり唾も飲めずによだれを垂らす」とされるがここまで症状が出そろわずとも受診する患者もいる。咽頭痛や嚥下時痛みの訴えがしっかりある割に見た目の咽頭所見が軽い場合は急性喉頭蓋炎を疑うことが大切。
→伝染性単核球症は外来でよく出会う疾患である。臨床像としては発熱、全身倦怠感、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹(特に後頸部など全身性リンパ節腫脹)、肝脾腫などがある。
特徴としては
・毛布のような白苔が返答に付着している
・通常のウイルス性咽頭炎と思ったが、後頸部リンパ節もちょっと触れる
・身体所見で脾腫を認める咽頭炎。
・3日以上たっても軽快しない場合。
・抗菌薬フルコース投与でも改善しないと紹介になった患者。
・ペニシリン投与で全身にびまん性紅斑をきたした場合(18〜30%)
伝染性単核球症の血清学的診断のコツ
喉の痛みの対応位フローチャート