とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

BCG(Bacillus Calmette-Guerin)接種についてまとめてみた

小児科で必ず実施されるBCGについて

おおよそ多くの予防接種はシリンジに針をつけてワクチンを皮下注射するだけであるがBCGは言わずもがなハンコ注射とも呼ばれる特殊な接種方法である。今回はそれについてまとめる。

適応

結核予防のため予防接種法に基づき生後3〜6ヶ月に定期接種する。なお2005年4月からBCG接種前のツベルクリン反応検査は行われていない。

必要なもの

・乾燥BCGワクチン

・添付溶剤(生理食塩液)

・経皮用接種針(ディスポーザブルBCG接種用管針)

・スポイト

・アンプルカット

接種方法

  • 生理食塩水でワクチンを混濁する。

生理食塩水を乾燥BCGワクチンの入ったアンプルへ入れて泡だてないように混濁して2〜3分置いておく。その後泡だてないようにスポイトで吸い上げる。

  • 注射部位は上腕外側のほぼ中央。(他の部位、肩、大腿部はケロイド様瘢痕ができやすく禁忌。)
  • 注射部位をアルコール消毒。乾かないうちにワクチンを滴下するとBCGが死滅してしまうので注意
  • 接種者は非接種者の上腕を左手で下から握り水平に固定する。アルコールが乾いたのを確認後混濁したワクチンをスポイトから1滴滴下する。
  • 滴下したワクチンを管針のつばで上腕の縦方向に沿って幅5cm、長さ3cmに塗り広げる
  • 上腕部を左手で強く握り注射部位の皮膚を緊張させ、ワクチンを塗った部位に管針のつばが皮膚に十分つく強さで垂直に押し込む。
  • 管針の円跡が相互に接する様に2箇所接種する。
  • 終わったら再び管針のつばで皮膚上のワクチンを2〜3回針痕に擦り付ける。
  • 接種した針痕からの少量の出血についてはそのまま放置する。

接種前後の注意点と副反応について

Koch現象

通常接種3〜4週間してから針痕に一致した局所反応を認める。しかし稀に接種後10日以内で局所反応が出現した場合をKoch現象という。Koch現象では3〜5日ごろに局所の炎症、痂皮、膿疱を認める。この場合被接種者が結核に感染している可能性があるので結核感染の精査が必要である。

・全身性播種性BCG感染症

免疫不全などの児に接種した場合粟粒結核様の病態となり、抗結核薬の適応となる。

・リンパ節腫大

腋窩、鎖骨上窩、頸部などのリンパ節腫大を認めることがある。経過観察のみでおよそ6ヶ月までに自然消退するが、稀に皮膚に穿孔し排膿することもあるがその場合は清潔を保つのみで良い。

・骨炎・骨髄炎・骨膜炎

発症した場合は抗結核薬の投与が必要。