とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

2021-05-13から1日間の記事一覧

血液培養陽性の時、その結果は信じられるか

はじめに 現在では発熱に対して血液培養を2セット採取することは至極一般的になっている。これは感染症診療に日々尽力している医療者の成果の賜物とも言えるが、その分血液培養でのコンタミは患者だけでなく我々にも悪影響となる。今回はどんな場合はコンタ…

性感染症についてまとめ まずはこれだけ

はじめに 性感染症は性器外症状で受診する場合がある。発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎 性交渉歴の聴取が必要な時 性交渉歴を聞く時の対応 尿道炎 梅毒検査

HIV感染症へのアプローチ

はじめに HIV感染症とはそれほど頻度多く接する機会は少ないが、ある程度の知識は持っておくべきである。HIV感染症とはヒト免疫不全ウイルスの持続感染の結果、細胞性免疫が機能不全に陥る疾患であり今回はこれについてまとめる。 疫学 世界では3800万人…

肺外結核のミカタ

はじめに 結核は全世界で年間1000万が罹患する。死亡原因のトップ10に入る。なので珍しい疾患でなくあらゆる症状に対する鑑別として考えなくてはならないものである。 疫学 ・発症する人は高齢者が多い(特に結核の既往があれば注意) ・若年者であれ…

縦隔気腫へのアプローチ

◯縦隔気腫とは 縦隔気腫とは何らかの原因により気管に小さな穴が開くことにより、本来なら空気の存在しない縦隔に空気が入り込むことを言う。自然気胸と同じように痩せ型の若年男性に多い。 原因としては胸痛発生時に胸腔内圧が上昇することが多い。気管支喘…

アニオンギャップとは 知らないでは恥ずかしい

アニオンギャップの計算とその意義 ◎アニオンギャップの式の導出 アニオンとは陰イオンのこと。ギャップとは差のこと。アニオンギャップとは陽イオンと陰イオンの差という意味で用いられる。 体内において陽イオンと陰イオンのそれぞれの合計は一緒。 陽イオ…

気管支拡張症について まずはこれだけ

CTにおける”気管支拡張”所見の見方 外から肺に取り入れた酸素を血液を介して全身に運ぶために、肺動脈と気管支は並走している。本来であれば肺動脈径と気管支径の大きさは同じようなものであるが、気管支径の方が肺動脈よりも大きくなっている場合を”気管支…

鎮咳薬は本当に意味があるのか

はじめに 咳嗽を主訴に来院する患者は数多く、その受診動機は大きく2つに別れる。一つはは咳嗽が出ていることが何らか怖い病気ではないかと心配し原因検索をメインに希望する。もう一つは咳嗽が出ていることを何とか止めてほしい(社会的背景もあり)今回は…

気管支喘息を診断するには

はじめに 喘息には特徴的な症状がたくさん存在するがそのうち、どの項目を満たせば喘息と診断できるなどの診断基準はなく、症状から総合的に判断しなければならない。今回はどのような症状の時に喘息という診断に至るか、はたまた喘息の特徴的所見についてま…

咳喘息を疑った時の対応

咳喘息と喘息(=気管支喘息)の違い ◯咳喘息とは 中枢から末梢気道まで全体的に好酸球性の気管支炎を起こす病態である。病態としては気管支喘息(つまり喘息)と同じであるが、症状としては咳がメインという点で異なる。気道が過敏になっており風邪ウィルス…

FEV1%と%FEV1の違い

はじめに 高齢者の慢性的な呼吸器症状で最も多いCOPD。外来でもよく遭遇するがCOPDの診断には呼吸機能検査を行うことが多いがよく似た言葉でFEV1%と%FEV1があり混同することがあるが今回はそれについてまとめる。 FEV1%と%FEV1の違い FEV1は先に%がつくか…

COPDについてまとめ まずはこれだけ

はじめに COPDは高齢者の息切れ、喀痰を主訴とする慢性呼吸器症状の代表的疾患となり、病期分類、重症度、また治療もある程度確立しており今回はそれらについてまとめる。 診断手順 ①COPDの患者さんの主訴の多くが労作時呼吸困難感であるため、修正MRC(mMRC…

胸部CTでの重力変化とは

胸部CTを仰臥位で撮影すると健常者であっても肺底部背側にすりガラス影がみられることがある。仰臥位においては一番低い肺底部背側の静脈圧・リンパ管圧が高まり、肺末梢間質の容積が増えてしまうことにより、肺実質が圧排されてしまうからである(つまり無…

ARDSの診断基準

はじめに ARDSは肺炎などの感染症や重症外傷などによって高サイトカイン血症が生じることで血管透過性亢進によって引き起こされる肺水腫、高度の低酸素血症である。急激に進行する呼吸困難、胸部レントゲンで両側肺野全体のびまん性浸潤を呈することが多いと…

COPDをいつ疑うか

COPDをいつ疑うか COPDとは診断ガイドラインでは次のように定義されている。 「有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である。この気流制限には様々な程度の可逆性を認め、発症と経過が官女であり、労作時…

いつ結核を疑うか 

はじめに 結核診断の第一歩は結核を疑うことである(決して稀な疾患ではない) ◯アメリカのガイドラインによると次の状況で結核を疑う ・2−3週間以上続く咳+(発熱、寝汗、血痰、体重減少のうちの1つ以上) ・結核リスクの高い患者で原因不明の呼吸器症状…

結核を疑った時にする検査 

はじめに 結核は過去の感染症ではなく現在日本であらゆる症状の鑑別診断の上がる疾患と考えた方が良い。特に呼吸器症状とレントゲンや胸部CT異常で典型的な画像を認めれば隔離の上で検査するという対応を迫られる。今回は結核を疑った時に行う検査をまとめる…

気管支喘息発作への初期対応まとめ これで救急対応はばっちり②

はじめに 喘息発作への初期対応 喘息の重症度には発作時と安定期の2種類ある。救急外来などで対応することになる発作時について説明する。 ↑引用:http://ryumachi.umin.jp/clinical_case/BA.html ◯ステップ1:軽度発作、苦しいが横になれる、日常動作ほぼ…

気管支喘息患者の入院適応

◯喘息患者の入院適応 ・↓表の重症度分類で、高度および重篤の場合は入院の絶対適応。 ・中等度発作の場合であれば、吸入薬や全身ステロイド治療などで2−4時間の治療で反応不十分あるいは1−2時間の治療で反応なしの場合は入院適応。 ・救急受診までに症状…

喘息発作に対するステロイド治療

Q、ステロイドは内服より点滴のほうが良いのか? →喘息発作に対する全身ステロイドは点滴でも内服でも効果は変わらない。重症発作以上では内服が難しいこともあるので点滴のほうが無難だが、中等度であれば内服でも構わない。 ・喘息発作に対する全身性ステ…

気管支喘息発作に対するテオフィリンの立ち位置

◯テオフィリンとは テオフィリンはcAMPを増加させてプロテインキナーゼを活性化させることにより気管支平滑筋を拡張させる効果があり、気管支喘息やCOPDなどに有効とされている。気管支喘息に最初から投与することはないが、β刺激薬(メプチンなど)やステロ…

喘息診断に用いられる呼気NO試験とは

◯呼気NO試験とは? 呼気一酸化窒素濃度(FeNO)試験は近年普及している検査。 喘息患者の呼気にはNOが健常人に比べて多く含まれることがわかってきた。 気道に慢性的な炎症が起こると気道粘膜でNO産生酵素が増えるため吐いた息に多く含まれるようになる。呼気…

心エコーの壁菲薄化・輝度上昇について

⭕心筋梗塞後の特徴的な心エコー所見 ・局所的壁運動の異常 ・収縮期の壁厚増加の減少または消失(通常は拡張期よりも収縮期の方が壁厚が増加する所見が得られる)。 ・心筋の局所的な菲薄化 ⭕菲薄化について 心筋の局所的な菲薄化は虚血性心疾患を示唆する。虚…

電気ショックについて留意すべき点

はじめに 電気ショックが必要な場面は日常臨床でそれほど多くはないが、いざという時には施行しなければ命に関わる場面もあり内科医師、当直医として電気ショックに関する知識をまとめる。 ✅電気ショック成功へのファクター ・エネルギー量は電圧と電流の組…

心不全に対するフロセミドの腎機能への影響

はじめに 急性非代償性心不全患者における利尿剤使用の戦略。ループ利尿薬は持続投与でもショットでもどちらでも良い(治療に関しても副作用に関しても変わらない)。高用量だと腎機能は短期的にみえると悪くなりやすい。しかし2ヶ月後には戻ってる。 https…

慢性心不全に対するACE阻害とβブロッカーの優先度

はじめに ACE阻害薬に後でβブロッカーを追加で処方されることが多いが、βブロッカーをファーストラインの治療薬として選択するのが有益かどうかはわかっていなかった。 EF35%以下のHFrEF患者で比較した(CIBIS) III試験ではACE阻害薬とβブロッカーのどちらを…

スピロノラクトンとエプレレノンの違い

はじめに アルドステロン拮抗薬としてスピロノラクトンとエプレレノンがある。 商品名はスピロノラクトン:アルダクトン®25mgとエプレレノン:セララ®50mg アルドステロン拮抗薬はカリウム保持性の利尿薬であるためフロセミド処方患者の低カリウム血症予防目…

心原性失神の精査について

はじめに 失神患者はよく循環器内科に「心原性失神の否定をお願いします」と紹介されるが実際循環器内科でどのような検査を行うのかまとめてみた。 完全な否定はできなくても可能な範囲内で疑わしいかどうか調べる。(完全な否定は不可能) ◯まずは病歴の確…

失神患者に対して行う心エコーの意味

はじめに 失神患者はよく循環器内科にコンサルトする場面がある。循環器的には心エコー、ホルター心電図などで失神を起こしうる病変の有無を精査する 失神患者の心エコーでどこを観察するか 心原性失神の評価目的に心エコーをする時に注目するところ ・局所…

CKD患者の専門医への紹介基準

はじめに 腎機能障害は日本でも多くの人が有する健康問題である。ただし、慢性の腎機能障害の治療のメインは進行抑制と合併症予防などに尽きる。そのため適切なタイミングで専門医への紹介が必要不可欠であり今回はその点についてまとめる。 CKDの治療の柱=…