とある総合診療医のノート

地方病院勤務総合診療医の日々の勉強・学びのアウトプット

2021-01-01から1年間の記事一覧

小児科採血で気をつけるべきこと

小児の採血は大人と異なり次のような問題がある。 自制がきかず予測不能の動きをする 採血部位として選択される血管が成人より細い。 循環血液量が少ないため採血量に配慮がいる。 小児の中でも年齢に幅があり、各年齢層で方法を変える必要がある。 採血が心…

BCG摂取の概要 効果・注意点・副作用について

BCG接種の効果 ・BCG接種は適切に行われれば結核の発病を接種しなかった場合の4分の1に抑える。 ・結核性髄膜炎や粟粒結核など重篤な結核の発病予防には効果は確実。 ・効果は10〜15年程度持続する BCGと他の予防接種との間隔 ・生ワクチン(MR、麻疹…

夜間小児科外来 発熱対応編

はじめに 小児科外来では夜間・昼間にかかわらず最も受診する理由が多いものの一つが発熱である。今回は発熱の際に夜間外来で行う対応について概説する。 何を聴取するか? ・いつからの発熱? ・咳嗽・鼻水などの随伴症状はあるか? ある:風邪・ウイルス感…

夜間小児科外来 嘔吐・下痢・腹痛編

はじめに これらが主訴で夜間外来を受診する子供はかなり多い。特に嘔吐は子供には頻繁に起こる。原因は胃腸炎が多いが対応について概説する。 何はともあれバイタルサインが整っていれば浣腸! 浣腸して便の状態を観察するのが一番大切である。そのためには…

夜間小児外来 咳嗽だけある場合

夜間小児外来 咳嗽だけある場合 はじめに 発熱がなく咳嗽のみある場合などは呼吸状態が悪くなければ帰宅できるが、ずっと続く咳嗽は保護者の心配が強くなるため器質的疾患がないか調べて症状緩和してあげる処方が必要となる。 まずはバイタルサインを確認。 …

脳腫瘍における脳浮腫の軽減(転移性脳腫瘍を含む)

はじめに 脳腫瘍では腫瘍周囲の浮腫があり、これの軽減のためにデキサメタゾンが使用されることが多い。投与により70%の症例で臨床症状の改善が見込まれる。投与開始より24時間以内に神経症状の改善を認めることが多い。 処方例:デキサメタゾン(デキ…

Bell麻痺やRamsay Hunt症候群でのステロイドの使い方

はじめに Bell麻痺やRamsay Hunt症候群は治療が遅れたり、失敗したりすると顔面神経麻痺などを残す。そのため機能予後の観点から疑えば、経過観察という選択肢はない。しかし治療に際して比較的高用量のステロイドを使用することが多いため治療を躊躇してし…

ステロイドカバーについてまとめてみた

はじめに 1 ステロイド使用者の周術期・急性ストレス期にステロイドカバーが必要な理由は? →内因性のステロイド分泌が抑制されているため 2 ストレス時急性腎不全ではどのような症状、検査所見があるか? →低血糖・ショック、意識障害、電解質異常(低ナ…

二次性高血圧のスクリーニング まずはこれだけ

はじめに 高血圧は多くの高齢者で見られる他、動脈硬化の要因となり多くの生活習慣病への悪影響を与える。 多くは一次性で降圧薬でコントロールするものだが、中には二次性高血圧もあり、治療法など最終的には手術療法の適応となる疾患もでてくる。 二次性高…

乳児検診(1ヶ月)

はじめに 1ヶ月健診は多くの母親が初めて小児科医師に出会う機会である。 ・小児科医としては1ヶ月の時点ではほとんど経過観察するものが多く。母親を安心させて帰すことが重要 ・体重増加の目安は20〜50g カルテテンプレート S: 1ヶ月健診。(00ヶ…

乳児検診(3〜4ヶ月)

乳児健診 3〜4ヶ月編 はじめに 早産の場合ワクチンは出生日を基準に接種を行うが、成長・発達については出産予定日を基準に判断する。そのほかに新生児仮死や慢性肺疾患、未熟児網膜症の存在などが発達は成長に影響を及ぼすことがあるので確認する。 保護…

各種ワクチンの特徴とポイント(小児科)

麻疹・風疹(MR)ワクチン 麻疹ワクチンの副反応としては、発熱がもっとも多いものです。20-30%くらいの頻度で、接種後5~14日くらいにみられる。熱性けいれんの体質の方は事前に相談する。注意が必要。発疹(10~20%)も出ることがありますが、いずれ…

術前ヘパリン置換(ヘパリン化)の知識(内科医でも最低限知っておくべき内容)

ヘパリン置換とは何か 脳梗塞既往や心房細動などの患者は血液が固まって血栓症を起こしてしまうリスクが有る。そこで血液が固まらないように抗血小板薬や抗凝固薬などいわゆる血液をサラサラにする薬を服用していることが多い。 抗血小板薬や抗凝固薬を服用…

頭部MRI検査でT2スターを撮影することの意味

頭部MRIにおけるT2*(T2スター)撮影の意義 ◯T2スターは微小出血の検出に有用 T2強調画像とは多くの脳病変で敏感に高信号となるが、T2強調画像にはT2スター強調像、水強調画像など様々な撮像方法があり、鉄の見え方や実質のコントラストが変化する。T2スタ…

MRI検査での拡散強調画像での高信号の鑑別

拡散強調像高信号(ADC低信号)の鑑別 拡散強調で高信号(ADCで低信号)となるのは水分子の拡散制限がある状態。 脳梗塞超急性期などが代表的な例であるが、病態としては大きく分けて3通りある。 1,細胞性浮腫 2,粘稠度増加 3,細胞密度増加 1,細胞…

頭部MRIにおける慢性虚血性変化の意義(FLAIRで偶発的に見つかった慢性変化)

慢性虚血性変化とはなにか 頭部MRIでT2強調像やFLAIR画像で脳室周囲白質や深部皮質下白質に高信号病変を呈するものを大脳白質病変という(T1では軽度低信号)。原因は脳症血管病が基盤となっており慢性的な循環不全が持続することにより、脳卒中発症おける…

中枢性めまいに対する頭部MRIの意義(画像検査では脳梗塞は否定できないかもしれない)

中枢性めまいに対する頭部MRIの意義(画像検査では脳梗塞は否定できないかもしれない) めまい患者の対応でいちばん大事なのは脳血管障害による中枢性めまいなのか、それともBPPVや前庭神経炎などの末梢性めまいなのかの鑑別である。 神経診察が最も重要とい…

肺炎に対する血液培養検査の意義(陽性率の低さからみる適応)

肺炎に対する血液培養検査の意義(陽性率の低さから見る適応) はじめに 肺炎は一般的な感染症であり、発熱、呼吸不全を伴い場合によっては重症化、死にいたる疾患でもある。しかし市中肺炎に対して血液培養検査は行われる場合が多い反面、その陽性率は実臨…

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点(BLNARを考える)

SBT/ABPCよりCTRXが優れる点 はじめに SBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)は基本的にはCTRX(ロセフィン/セフトリアキソン)よりカバーする細菌は多い。嫌気性菌にも効くのがSBT/ABPC(スルバシリン/アンピシリンスルバクタム)である。しかし…

肺炎に対してCTを撮影する意義はあるか?

肺炎に対してCTを撮る意義はあるか? はじめに 肺炎診断に胸部CTは必須ではない。しかし臨床の場面によっては胸部CTを撮影しておく場面もあり、特にどのような場面で必要と考えるか。また肺炎が疑われる患者において胸部CTの適応は?ということに関して今回…

尿は検査について知識の整理

はじめに 神経内科、脳外科、精神科以外の診療科のドクターには馴染みが薄いと思われる脳波検査。しかし痙攣、高齢者のNCSE(非痙攣性てんかん重積)などの診断、検査としては必要となるだろう。今回は脳波検査に関する知識についてまとめる。脳波検査は通常…

シックデイについて これだけ

はじめに 糖尿病や副腎機能低下などを並存疾患にもつ患者は珍しくない。特に糖尿病患者は珍しくないが糖尿病治療薬は低血糖の副作用があり、シックデイ教育は非常に重要と言える。今回はシックデイについて解説する。 シックデイとは 糖尿病の治療中に発熱、…

メトホルミン製剤で乳酸アシドーシスになるメカニズム

はじめに ビグアナイド薬(一般名:メトホルミン、ブホルミン)で乳酸アシドーシスになる理由を解説する ■ビグアナイドの作用機序 ビグアナイドはAMPキナーゼ(AMPK)を活性化させる作用があり、AMPKが肝臓での糖新生の抑制を抑制している。つまり、ビグアナ…

インスリン製剤の違い 

はじめに インスリン製剤にはその効果の発現時間、持続時間からいくつか種類があり、速効型、超速効型、中間型、持効型インスリンなどと分けられる。今回はこれらの違いに関して解説する。 ・速効型、超速効型インスリン・・・インスリン追加分泌を補充 ・中…

糖尿病治療薬(内服)について

はじめに 経口血糖降下薬の種類は非常に多岐に渡る。一昔前にはSU剤が主流となっていたが、現在は複数の薬から内服薬を選択しなければならず、今回は内服薬の作用機序と使い分けについて解説する。 ■ 経口血糖降下薬の適応 糖尿病治療はまず食事療法・運動療…

糖尿病の目標血糖値

糖尿病患者の目標血糖値 http://www.jds.or.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid000025_474C323031332D30322E706466を参考に。 ・良好な血糖コントロールは長期予後を改善する。 ・細小血管症(腎症、網膜症、神…

強化インスリン療法について

はじめに ◯強化インスリン療法とは 強化インスリン療法とは頻回のインスリン注射によって血糖変動を健常者に近づける方法。健常者の生理的なインスリン分泌は基礎分泌と追加分泌からなるが、強化インスリン療法では速効型インスリンと持効型インスリンを併用…

混合型インスリン製剤の使い方

はじめに 混合型インスリン製剤とは 糖尿病患者において経口血糖降下薬を何種類か併用しても血糖コントロールが難しい場合は生理的なインスリン分泌が低下していると考えられ、インスリン療法の適応となる。本来であれば基礎分泌と追加分泌を両方補うことの…

副腎クリーゼについての知識

はじめに 副腎クリーゼとは副腎機能が低下することにより鉱質コルチコイド、糖質コルチコイドが欠乏し、ショックに至る病態である。 【症状】 嘔吐、腹痛、発熱、、倦怠感、関節痛、食欲不振、意識障害などなど…。多様かつ非特異的な症状が見られる。これら…

高Ca血症への対応 これだけ

◯高カルシウム血症の評価、疫学 ・低アルブミン血症の場合は補正を行う。Ca補正値=Ca+(4-Alb) ・補正は必須であるが誤差が出るので正確な評価のためには血ガスによってイオン化Caの測定をする。イオン化Caの基準値は1-1.4a mmol/Lであるが大体8倍をしたら…